福島第1原発:事故29カ月 「ヒマワリ除染」信じて
毎日新聞 2013年08月18日 14時12分(最終更新 08月18日 23時41分)
11年3月の原発事故で、自分の中の「安全神話」が崩壊した。高齢の父がいる実家や親戚の家は原発20キロ圏外だが、「ただちに健康への影響はない」と繰り返す政府の言葉は、被災者にとっては気休めだと思った。
居ても立ってもいられず、すぐに南相馬に入った。休日を利用し、月に1、2度、住民を集め、専門家の一人として放射線による健康影響などについて説明した。
ヒマワリなどの植物に土壌中の放射性物質を吸収させ、蓄積または分解することで無害化する技術は「ファイトレメディエーション」と呼ばれる。1986年のチェルノブイリ原発事故を機に注目され、現地ではいくつか効果があったとの研究論文が発表されている。
しかし、国が一昨年の実験後に出した結論は「効果なし」。ただ、実験の詳しい手法が分からず、ふに落ちなかった。実は研究者の間でも、確立された実験方法がないのだ。それなら自分で証明しようと、昨夏、自費で南相馬の水田を借り、種をまいた。大きくなったヒマワリの幹や根、花などを測ったところ、幹から最大1キロ当たり2万ベクレルの放射性セシウムを検出。目を見張った。
土壌を入れ替えるより、2、3年かけ植物に吸収させた方が手間もコストもかからない。何より簡単で農家自身、作業に参加できる。花も楽しめる。途切れた農業をつなぐ象徴になってくれるはずだと思った。