Umekiさんがこんな記事を。
ランサーズ、The Startupに対して言論統制 | The Startup
定性的なヒアリングでは不十分?
部外者であるぼくがこの件にどうこう突っ込むつもりは毛頭ありませんが、ランサーズ社から届いたメッセージとされるなかにある以下の表現が気になりました。
「梅木様の記事を見ますと、梅木様のご友人等の周辺で弊社サービスを利用されたかたの意見のようですが、こちらは十分な調査に基づくものでしょうか。」
定性的なヒアリングじゃ調べたことにならん。ってことですかねー。その反論は想定済みです。
— Yuhei Umeki (@umekida) August 20, 2013
Umekiさんがツイートしていますが、これは「定性的なヒアリングは論拠としては不十分なのではないか?」という問題提起とも取れます。
「十分な調査」とは何か
この種の問題はぼくも日々直面しておりまして、扱いに困ることがあります。
何人かの人を取材していくなかで、ひとつの傾向が見えてきたとき、それはどのように発信すべきなのか。大規模な調査をすれば傾向は明らかになるのでしょうけれど、それを行うためにはお金も時間も掛かります。
また、大規模な調査というものも、それ自体がどこかに不完全性を持つものです。質問が浅かったり、質問が誘導的だったり、調査対象に偏りがあったり…。
となると、「十分な調査」というのは、かなり主観的なものではないでしょうか。それこそ新聞で『新聞が投票の参考になりましたか?』とアンケートを取ったという、笑い話のような調査もありますし。新聞社はこれを「十分な調査」と考えているのでしょうけれど、ぼくはかなり恣意的だと感じます。
大規模であれ、定性的なヒアリングであれ、どういう要件を満たせば「十分な調査」と言えるのか、ぼくにはそれがわかりません。ご存知の方はぜひ教えてください。どういう文脈で研究されているんだろ。
ぼくら個人ブロガーができることとしては、「あくまでこれは定性的なヒアリングである」ということを断った上で、情報を発信することくらいでしょう。
問題の記事でUmekiさんは下記のように明言していますので、特段の問題はないと個人的には考えます。強いていえば、「何人か」の部分を明確にすることくらいでしょうか。ただ、それも明示したところで「十分な調査」問題は解決しませんが…。
私の周囲でクラウドソーシングを発注側として利用している人が何人かおり、そのサンプルを元にポジショニングを作成しました。
(中略)実際に両方に案件を募集した人に聞いてみると、応募者の質がクラウドワークスの方が圧倒的に良いという意見が多かったです。
企業として望ましい対応の仕方とは
この場合、著者に対する企業広報の望ましい対応としては、「調査の不十分性」という主観的な基準をもとに訴えかけるのではなく、企業側が何らかのデータ(この件の場合は、たとえばランサーズの「顧客満足度」「単価の分布」など)を提示し、「われわれが調査した事実はこうなのですが」と訴えかけるというアプローチになるのでしょう。
企業側が調査コストを支払うことになるというのは、理不尽な話かもしれません。しかし、データを抜きに「これは十分な調査なのでしょうか(いや、そうではない)」と問いかけるかぎり、水掛け論になってしまいます。
「これは不十分ではないですか?」「いえ、十分だと私は思います」「いや、不十分でしょう」「いや、十分でしょ、どう考えても」…以下略。事実、Umekiさんは「十分」だと考えているようですし。
定量的な方がファクトとして強いのは当然で、定性面だけ物事を主張するなという意見はたまにいただきます。僕は定性面の感覚値を元にした意見にも価値があると思って、書いているんです。
— Yuhei Umeki (@umekida) August 20, 2013
企業側からのデータの提示が難しければ、所詮は1個人の声として、大人しく静観しておくしかないのでしょう。わかってくれる人はわかってくれる、と諦めつつ…。もしくはいっそ法的な係争に持ち込むとか。
ちなみにぼくはクラウドワークスとランサーズ、両方使ったユーザーですが、双方、高い満足度で利用することができました。このサイトのロゴはランサーズで依頼しました。サーバー移転はクラウドワークスで依頼。いい仕事をしていただきました。
クラウドソーシングサイトは乱立気味ですし、そろそろ公平な視点の調査が出てきてほしいですね。まぁ、その調査も何をもって「公平」「十分」とするかがわからないのですが…。堂々巡りになっちゃいますね。