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【社会】

集団的自衛権「憲法解釈では容認困難」 最高裁判事就任 山本前法制局長官

山本庸幸氏

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 内閣法制局長官を退き最高裁判事に二十日就任した山本庸幸(つねゆき)氏(63)が、東京都内の最高裁で記者会見し「集団的自衛権の行使は、従来の憲法解釈では容認は難しい。実現するには憲法改正が適切だろうが、それは国民と国会の判断だ」と述べた。判決の中で個別の意見を述べることができる最高裁判事はよほどのことがない限り立法や行政に介入すべきではないという伝統的な考え方があり、判決以外で政治的課題の憲法解釈に言及するのは極めて異例だ。 

 山本氏は会見で「憲法九条には武力行使はいけないと書いてあるが、例外的にわが国が攻撃された時は反撃が許されると解釈し、過去半世紀はその議論でずっときた」と指摘。集団的自衛権の行使には「(憲法解釈の変更という)非常に細い道をたどるよりは、憲法規範そのものを変えなければできない」との考えを示した。

 一方で「最近、国際情勢が緊迫化し、日本をめぐる安全保障環境も変わっており、それを踏まえて内閣がある程度決断され、新長官が理論的な助言を行うことは十分にあり得る」とも述べた。

 内閣法制局は政府の憲法解釈を担い、これまで集団的自衛権の行使は憲法上許されないと解釈してきた。政府は今月、国会答弁で従来の憲法解釈を維持する姿勢を示してきた山本氏を退任させ、新長官に小松一郎前駐仏大使を充てた。行使容認に意欲を示す安倍晋三首相が、解釈変更の布石として小松氏を長官に起用したとみられている。

 山本氏は愛知県出身、京大法学部卒。一九七三年に通産省(現経済産業省)に入省し、二〇一一年十二月から内閣法制局長官を務めた。今年七月十九日に最高裁判事を定年退官した元外務次官の竹内行夫(ゆきお)氏の後任となる。

 <集団的自衛権> 同盟国など密接な関係にある国が攻撃された際、自国が直接攻撃を受けていなくても実力で阻止する権利。国連憲章51条は自国への侵害を排除する「個別的自衛権」とともに、主権国の「固有の権利」と規定。日本政府は「国際法上、集団的自衛権を有している」としつつ、戦争放棄や戦力不保持を明記する憲法9条に照らし「わが国を防衛するための必要最小限度の範囲を超えるもの」と解釈し、行使を禁じてきた。安倍首相は今年2月、憲法解釈を見直すため有識者懇談会を発足させた。

 

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