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とろける

「わたしをあげる」は女言葉の典型だが、こういう言葉を外国人女性は使うのか？外国暮らしは6か月しかなく、あくまでビジネスとしてオフィスとホテルの行き帰りだけで、恋愛をする年代でもなかった。あくまで想像でいうと、欧米人女性がこんないい子ぶったおこちゃま言葉を使うとはとても思えない。自身に率直な発言が欧米女性の特徴でもある。

これは日本人女性(？)が日本人男性に処女を差し出すときの言葉として重みがあるのだろうが、別段処女でなくとも男にやらせるときに、こういう言い方をする女がいる。いい子ぶりっ子と決め付けるわけではないが、日本人女性特有のある種の何かの呪縛が言わせる言葉に思える。古今を問わず、洋の東西を問わず、女が受動的な生き物であるのは性器の形状が示す。

フェミニストが文句を言おうと女の基本性向は受動的である。環境や意識によってどのように変化しようとも、生物学的にその様に作られている。ところで日本人女性は外国人にモテるといわれる。なぜそうなのかは知識に頼るしかないし、そういうサイトもあり、そこにいろいろ書かれている。日本人の自分に頷けるものは特にないし、「ふ～ん」という感じ。

http://www.madameriri.com/2013/04/24/

アメリカにいたときに同僚のデイビッドが日本人女性が大大大好きだという。彼はその理由を「so tight」と言った。意味は解説しない。ところで外国人女性が「わたしをあげる」と言うのか、言わないのかの信憑性だが、映画のセリフで聞くことはない。果たしてそういう純愛(？)映画があるのだろうか？あるいは洋楽にそういう歌詞はあるのだろうか？

ちょっと露骨になるが、「やって」、「して」という受身言葉ではなく「する」、「やろう」という主体性を外人女性に感じる。日本人女性は開闢以来「やまとなでしこ」という言葉に蹂躙されてきたが、ネット時代に突入するあたりから、ノアの方舟のような情報の大洪水に浸され、「やろう？」、「しよう？」言葉が今日的やまとなでしこの言葉として重用されている。

日本女性の奥床シズムは限られた少数派に受け継がれているけれど、メディアというのは社会を一変させる強烈なパワーがある。演歌歌手の西川峰子が「あなたにあげる」でデビューしたのが1974年7月で、彼女は福岡県出身だから九州男児ならぬ九州女性の芯の強さがあり、水前寺清子、八代亜紀、石川さゆり、高田みずえ、松田聖子らに共通する。

石川さゆりが熊本県というのは最近知った。色白美人であるからして、ずっと東北・北海道あたりと思っていたが、おそらく「津軽海峡～」の影響もあるのだろう。水前寺、八代、石川の三人は熊本女性はいかにも「肥後もっこす」的性向を感じさせる。肥後といえば、子どもの頃に女の子が手まりをつきながら歌っていた「あんたがたどこさ」という童歌がある。

古い童歌には「謎」が多く、この歌は歌詞にあるとおり肥後(熊本県)の歌に思えるが、熊本の方言はなく関東地方の童歌とする資料・研究が多方面からなされている。熊本のことがいろいろ触れられてはいるが、熊本は単なる舞台であるとの指摘が大勢だ。舞台は埼玉県川越市という説もあるくらいだ。「あんたがたどこさ」の正式な題名は「肥後手まり唄」である。

　あんたがた　どこさ　肥後さ
　肥後どこさ　熊本さ　

　熊本どこさ　船場さ
　船場川には　エビさがおってさ
　それを漁師が　網さで採ってさ
　煮てさ　焼いてさ　食ってさ

　それを木の葉で　ちょっとかぶせ　

　あんたがた　どこさ　肥後さ
　肥後どこさ　熊本さ　

　熊本どこさ　船場さ
　船場山には　狸がおってさ
　それを猟師が　鉄砲で撃ってさ
　煮てさ　焼いてさ　食ってさ　

　それを木の葉で　ちょっとかぶせ

カチカチ山という童話に「狸汁」があり、この歌にも狸汁がある。船場川は兵庫県姫路市の二級河川ではなく、現在の熊本城長塀に沿って流れる「坪井川」のことで、熊本市船場町という地名や、坪井川にかかる船場橋の名もある。肥後手まりは鮮やかな色彩と幾何学模様が美しく、江戸時代、江戸づめの奥女中たちが作ったものが、国元に伝えられたといわれている。

歌詞を見てわかるが、一番のエビより二番の狸の方が浸透したのはなぜ？現在「船場橋」の欄干には狸とエビのモニュメントがある。福岡県出身の西川峰子は現在は仁支川峰子と改名しているが、1973年、15歳のときに『第3回全日本歌謡コンテスト』で優勝したのをきっかけに芸能界に入り、1974年のデビュー曲「あなたにあげる」が大ヒットとなる。

16歳の少女が「あなたにあげる」と、そのひたむきな姿に世のおじさんを含む同年代の高校生も、そそのかされ気分になったのだろう。歌の歌詞とはいえ、そんなことを必死に懇願する少女は珍しい時代であり、その声、その言葉を聴きたくてレコードを買うのだろうな。演歌のよさは、さらりと歌うところではなく、熱く強い思いで言葉を伝えるところにある。

　幼なごころに　いとしい人の
　胸に抱かれる　夢みて泣いた
　嫌よ！　嫌　嫌
　子供じゃないわ
　可愛いだけの　恋なんて
　あなたにあげる　私をあげる
　あゝ　あなたの　私になりたいの

　長い黒髪　とかれて散って
　膝で甘える　その日を待つの
　嘘よ！　嘘　嘘
　指さえ触れぬ
　きれいなだけの　恋なんて
　あなたにあげる　私をあげる
　あゝ　あなたの　私になりたいの

　好きになっては　いけないならば
　なんで逢わせた　こうまでさせた
　駄目よ！　駄目　駄目
　子供じゃないわ
　つぼみで終わる　恋なんて
　あなたにあげる　私をあげる
　あゝ　あなたの私になりたいの

こんな歌詞を16歳の少女に歌わせて問題でないかい？「嫌よ！」、「嘘よ！」、「駄目よ！」などの男殺しの三大言葉までいれちゃって、これもたくましき商魂だろ。と、今は思うが、当事はなんとも思わなかった。演歌にうつつを抜かす齢でもなかったし、演歌の歌詞がどうとかこうとか興味もない。1974年といえば、洋楽ヒット曲目白押しの時代であったしな。

まぁ、今は今の見方で書いている。嘘の世界、妄想の世界ならどんな歌詞でもよく、少女がおっさんを触発する歌詞ならレコードも売れる。40年前頃からオヤジの少女を見る目が変わっていったのかも。西川は同年、続編「初めてのひと」をリリース。これがまた艶っぽい。「あなたひとりに捧げたい」、「あなたひとりのものだから」、などきわどい歌詞満載だ。彼女は演歌歌手であり、演歌の持つ日本人の郷愁感というのか、非現実の世界をこぶしを使ったインパクトのある表現で、現実感を醸しだす力からして、演歌は艶歌ともいえる。

洋楽にも意味シンな楽曲は多いが、訳と言うニュアンスの違い、スラングの意味の浸透性から母国語とは比較にならない。エロい洋楽の歌詞も話題になったりするし、サザンや忌野にもそれなりの楽曲はあるが、自分がハッとさせられたのは山口百恵の1974年のヒット曲『ひと夏の経験』だろう。♪あなたに女の子のいちばん大切なものをあげるわーって、これだ！

『青い果実』から始まる彼女の性典路線はついにここまで来たかみたいな…。「女の子のいちばん大切なものって、アレだろ？アレにきまってる」と誰もが思うのに、よくよく聴くと、♪小さな胸の奥にしまった大切なものをあげるわって、なんかはぐらかしている。胸の奥にしまったものって何だ？胸の先っぽじゃないのか？本人はどういう気持ちで歌ってるんだ？

『ザ・ベストテン』の久米宏ならしつこく聞きそうだし、誰だって聞いてみたいが、本人は「まごころ」だと…。「まんごころ？」違う！どんなに意地悪く聞かれても「まごころ」で突き通したという。時代だな。中三トリオを含む当時のアイドルに、今のようなおっぴろげーのじんじろげ女はいない。それを節度といい、だからあの時代のアイドルはミステリアスよ。

百恵は「青い性」路線で人気を博したが、遡ること4年前の1970年、♪やめて～　本気じゃないなら、といういかがわしい歌詞をため息交じりに歌ってヒットさせたのが辺見マリ。タイトルもズバリ『経験』。セクシー歌手といえば、辺見、夏木の両マリと『こまっちゃうな』以降の山本リンダ。その前の1968年には、青江三奈の『伊勢佐木町ブルース』もあった…

田舎人としては、「伊勢佐木町ってとこはどんなとこなんかい？」と思うしかない。別にいかがわしい街ではなく、横浜の繁華街にある普通の商店街の伊勢佐木町。平成13年7月1日、同商店街の協同組合は前年の7月2日に亡くなった青江三奈に感謝の意を込めて歌碑を建立した。イントロのハスキーなため息吐息に、多くの若者とおっさんがのけぞったことか。

あのため息がどうして生まれたか、誰のアイデアかの経緯を本人から聞いたことがあるが忘れた。検索しても見つからない。伊勢佐木町にあるモニュメントには作曲者の自筆楽譜のパネルが埋め込まれている。付点と三連符小節の次の四分音符、四分休符、二分休符の上に「タメ息」と記されている。それからしておそらく作曲者のアイデアかもしれない。

発売当初は子ども向きでないと問題視され、『第19回NHK紅白歌合戦』に2年ぶり2回目の紅白出場の際は、さすがにあの声はNHKの意向でカズーという膜鳴楽器の音と差し替えられ、当時の白組司会の坂本九は、「ダチョウのため息」と形容した。なお、1982年の『第33回NHK紅白歌合戦』で同曲を歌唱をした際には、「吐息」O.Kで、差し替えナシだった。

あのイントロは照れくさくカバーしずらいのだろう。捨て身の気持ちでやらねば、照れがはいるといやらしくなる。自分のあの時の声を披露してるみたいで、だからカバーが少ないのだろう。イントロはともかく本編は結構いいし、美空ひばりが歌ってもいい味出そうだし、ついでにひばりため息を、と思うが彼女も意外とテレ屋さん。ため息もプロ根性の範疇？そうかもしれない。

八代亜紀が青江とのデュオでおちゃらけ気味にやっている。おちゃらけ気味だと羞恥心が消える。マジでやられると耳のやり場に困るし、聴いてる方が恥ずかしくなる。山本リンダのあの踊りだって、観る方が恥ずかしいところがあった。中森明菜のこの曲のカバーがYouTubeで聴け、「はぁ、はぁ」もカバーしちょります。いかにも明菜らしい、「はぁ、はぁ」。

坂本冬美、藤あや子らも見たい。杉本彩？歌は超下手だが、「はぁ、はぁ」だけなら。最近は男も女のカバーをやり、Merryというロックバンドの『伊勢佐木町ブルース』はなかなかいい。美川憲一はどうだ？お笑いになる怖れアリ。美輪明宏？⇒ババぁ過ぎ。YouTubeでみる素人さんの「はぁ、はぁ」は傑作じゃ。歌は聴いてられんが…

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「イメージの詩」のイメージとは？

　　これこそはと　信じれるものが　
　　この世にあるだろうか
　　信じるものが　あったとしても
　　信じない素振り
　　悲しい涙を流している人は
　　きれいなものでしょうね
　　涙をこらえて　笑っている人は
　　きれいなものでしょうね

　　男はどうして　女を求めて
　　さまよっているんだろう
　　女はどうして　男を求めて
　　着飾っているんだろう
　　いいかげんなやつらと　口をあわせて
　　俺は歩いていたい
　　いいかげんなやつらも　口をあわせて
　　俺と歩くだろう

　　たたかい続ける人の心を
　　誰もがわかっているなら
　　たたかい続ける人の心は
　　あんなには　燃えないだろう
　　傷つけあうのが　こわかった昔は
　　遠い過去のこと
　　人には人を傷つける
　　力があったんだろう

　　吹きぬける風のような　俺の住む世界へイメージ 7

　　一度はおいでよ
　　荒れ果てた大地にチッポケな花をひとつ
　　咲かせておこう
　　俺もきっと　君のいる太陽のあるところへ
　　行ってみるよ
　　そして　きっと言うだろう　来てみて良かった
　　君がいるから

　　長い長い坂を登って　うしろを見てごらん
　　誰もいないだろう
　　長い長い坂をおりて　うしろを見てごらん
　　皆が上で　手を振るさ
　　きどったしぐさが　したかったあんた
　　鏡を見てごらん
　　きどったあんたが映ってるじゃないか
　　あんたは立派な人さ

　　激しい激しい恋をしている俺は
　　いったい誰のもの
　　自分じゃ言いたいのさ　君だけの俺だと
　　君だけのものなんだよと
　　裏切りの恋の中で俺は一人もがいている
　　はじめから　だますつもりでいたのかい
　　僕の恋人よ

　　古い船には新しい水夫が
　　乗り込んで行くだろう
　　古い船をいま　動かせるのは
　　古い水夫じゃないだろう
　　なぜなら古い船も　新しい船のように
　　新しい海へ出る
　　古い水夫は知っているのサ
　　新しい海のこわさを

　　いったい　俺たちの魂のふるさとってのは
　　どこにあるんだろうか
　　自然に帰れっていうことは
　　どういうことなんだろうか
　　誰かが言ってたぜ　俺は人間として
　　自然に生きてるんだと
　　自然に生きるって　わかるなんて
　　なんて不自然なんだろう

　　孤独をいつの間にか
　　淋しがりやと　かんちがいして
　　キザなセリフをならべたてる
　　そんな自分を見た
　　悲しい男と　悲しい女の
　　いつものひとりごと
　　それでも　いつかは　いつものように
　　慰めあっている

この詩を見てまず思うのは、「長い」。といってもhanshirouブログも長い。長ければいいってもんじゃないだろう？詩の冒頭「この世に信じられるものがあるか？」とあるが、この世に長くてよいものってのは探せば沢山ある。といっても、どこまでが長いのか本人と周囲とのギャップもあるだろうが、平均寿命（男79.59歳、女86.44歳）のように、「平均」という基準がある。

平均身長より低ければチビ（男170.7cm、女158cm）、平均体重より多ければデブ（男63.1kg、女52.9kg）、平均年収より下なら貧乏（406万円＝サラリーマン）、平均小遣いより低いと恐妻家（月40,600円＝サラリーマン）、平均より短ければ短小（長さ13.9cm）、平均持続時間より早ければ早漏（7分）、平均基準値以下はバカ（偏差値50）。などいろいろあるんもんじゃ。

また、平均とかの基準も境も判らないものもある。例えば長編小説って、何をもって長編なのか？長編小説には短編小説のごとき構造上の定式がないから、何をどう書いてもよく、その範疇は甚だ広く、したがってそれらにに該当する作品はきわめて多い。基準も決まりもないからどんな風にも膨らますことも可能だし、長さも形式も自由である。

あとはブスとかイケメンの基準もない。ミスコンの優勝者って、「え～こんなのが？」ってのは結構あるし、☆☆☆３つ星レストランの評価基準はミシュランにはあるのだろうが、所詮は他人の良い悪いの基準と自分の基準が合わないのは当然のこと。hanshirouブログは長文といわれ、自分でも長いと思う。「お前、無理やり長く書いてるだろ？」ともいわれる。

長く書こうという気より、短く収めようという気がない。理由は、短いと書いた気にならないからだ。せっかく書く以上は書いた気になりたいわけだし、だから今流行りのTwitterなど拙者の辞書にない。時代遅れといわれても、つぶやき（tweet）をわざわざ文字にしなくても、一人でつぶやいているよ。いや、一人でつぶやく事はしたことないな。

そういえば独り言はやらない。「オレはよくする」、「あたしも独り言よくいうよ」って聞くと信じられない気がした。そういう奴は変だし、そういう奴からみれば自分が変なのだろう。「変人」、「暇人」という基準も人によって異なるのだろう。変人総理といわれた小泉純一郎なんか、仏頂面した顔相の総理よりずっと楽しめた。楽しめるだけでもいいと思う。

エンターテイメントな総理に支持率が上がる。日本はそういう社会なのよ。一人で政治するわけじゃない、政策実行出来るわけじゃない。日本の顔として、世界の顔として、田中角栄や小泉のようなユニークな総理がいたっていい。若い頃は政界の暴れん坊と評価していた石原慎太郎だったが、老害の域に達した最近はとんとつまらない。彼が変節というより、自分が変節したのか？

80歳にもなって若者の足を引っ張るようではダメだ。若者はとにかく黙ってやらせて見るしかない。そうやって学んで行くしかない。経験という名の書物がなにより説得力があるし、若いから無駄があっても取り返せるわけだし、失敗を前提としてでも若者の思うようにやらせ、責任も取らせるべきだ。責任取る気もなく何かをやるのは無謀だから、諫めなければダメだが。

吉田拓郎の「イメージの詩」は彼が20歳の時に作った。この詩を見た同世代のいわゆる全共闘世代が、詩の意味に深い思い入れをしたように、広島の大学で政治運動もせず音楽三昧に浸っていた拓郎にすれば、聴衆からイデオロギー的共感を得、フォークの神様ボブ・ディランや岡林信康ばりに持ち上げられれば、さすがに気恥ずかしいやらの気持ちだったようだ。

拓郎はこの詩に哲学的な意味を持ち込んでいない。が、哲学的な意味を感じ取ろうとした同世代人は多かった。かつて平田弘史も同じようなことをいっていた。部落解放同盟から抗議を受けて焚書されたことについても、本人は部落差別の実態知らず、知識もなく、ただ士農工商穢多非人という言葉にのっとって「血だるま剣法」を描いただけだから、抗議の意味すら理解していなかった。

ただひたすら食うために、題材を見つけて描いていただけの漫画に、思想もヘチマもないのに、後人はいろいろ意味づけをしたいのよ。プロコル・ハルムの「青い影」も、ビージーズの「ホリデイ」も難解な詩であり、他にも難解な詩の楽曲は多い。それは所詮ミュージシャンの気まぐれと、それだけに過ぎず、「哲学的」は読み手の自己満足である。

　　これこそはと　信じれるものが
　　この世にあるだろうか
　　信じるものが　あったとしても
　　信じない素振り

この歌詞の意味について拓郎は後年、堂本剛と光一と以下ような会話をしている。

光一：　この「イメージの詩」っていうのは、何をイメージして作ったんですか？

拓郎：　二十歳の時のある日、ある女の子に「好きだ」っていうことを言おうとして、言おうとした直前にその女の子から「私のことを好きになっちゃダメよ」って言われて、こんなことが世の中にあるのか？と思って、僕が言おうとしてる直前なのに、その前に「私のこと好きになっちゃダメよ」って言いうことを言われるっていうね。すごいショックだったんですよ。その時に、世の中に信じられるものはないって思ったんですよ、二十歳で生意気に。で、信じられるものがないと思って、ずっと言ってるとグダグダいっぱい出てきて、それをバァーッて…

光一：　詩とか読んでると、俺ね、最後のフレーズですごく歌の締めって感じですごく好きなんです。

拓郎：　あ、そうですか。ありがとうございます。

剛：　大好き

拓郎：　やっぱりいい曲ですよね。やっぱりね、才能がね…

光一：　これ、実は拓郎さんのデビュー曲？

拓郎：　ええ、はい。

Bro.TOM：　これ、テレビで歌ったことないですよね？

拓郎：　テレビでは歌わせてもらえません。長すぎて…

Bro.TOM：　長すぎてね。

光一：　すごく貴重なことですね。

Bro.TOM：　これ、本当に貴重なことですよ。後ろで見てて、なんかね、ドキッとするぐらいな感じがあったですよ。

光一：　いいですね。じゃあ、みんなでやりたいと思います。よろしくお願いします。

哲学的・荘厳な歌詞に包まれた「イメージの詩」に頓珍漢な所感や思いを述べる光一らに釣られてってことはないのだろうが、拓郎の書いた歌詞の動機があまりに世俗感に溢れて、ちょっとガッカリしたファンもいたのではないかと。これが女の子に求愛してフラレたとは、よもや全共闘世代をしても思うまい。拓郎も陽水も肩肘張っていた若者時代とはまるで違う。

松方弘樹や高橋英樹らが実態と虚像に違和感を抱いていたように、多くの芸能人はファンの作った虚像に困惑するも、後年になって実像を惜しげもなく晒すことの快感を得ていたようだ。他人の見る虚像と実態の乖離こそが人の面白さかも知れない。「え～、あなたってこんな人だと思わなかった」といわれることは誰にもあるし、自分もよくいわれた。

虚像を捨てた女が、「イメージこわれちゃった？」と悲しそうに問う姿は、切なく女らしい言い草だ。自分をよく見せたい、よく思われたい、そんな虚像に生きてこそ女の真髄だろうか。女に潜むミステリアスな側面を男は感じ取るが、本心を隠しておきたい女に罪はない。朝一番、化粧で素顔を覆い隠すがごとく、女は制約を生きている。

「イメージの詩」の歌詞について能書き垂れんと思っていたが、止めることにした。詩はそれぞれがそれぞれの知識の範囲で感じるもの。太宰治が心中自殺した時、「自殺によって彼の文学が解明されるという性質のものでもない。元々彼の文学は傑出したものであり、現実の自殺という問題は、あってもなくとも、かまいやしない」と、釘を刺したのが安吾だった。

これにてここでの2012年は終わりです。読んで頂いた方もそうでない方も、よい年末、よい新年であらせられますよう…

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ユーミンの青い影

下の語録は日本人のある有名アーチストの口からでたもの。さて、誰だー？

「私の音楽は、商業高校行ってるような子には聴いてほしくない」

「私ね、チャリティーって大嫌いっ！」（阪神大震災直後のラジオにて）

「便所花クラスの花は、迷惑なんだよ！」（ファンが自宅の前に花束を置いたこと）

「私、子供嫌いですから！」（子供連れファンに「握手してあげてください！」に…）

「私が売れなくなることなんて銀行が潰れるくらいに有り得ない」

「私は天才ですよ。安い値段で私のCDを買えることを有り難く思え」

「私の音楽はブルジョア向けの音楽。貧乏人は相手にしてない」

「今日の服は27万なの、こんなのがよ」

「短大なんかとは関係を持ちたくない」（短大生に学園祭出演依頼されて…）

「学歴もなく土建業なんかをしてる人にライブにこられたら質が落ちる」

「既に金持ちだったんで！」（占い師に鼻の相が金持ちになれないと言われた際）

「おい、まだお茶持ってこねぇの？早くしろ！喉渇いてんだよっ！まったくここ、役にたたねぇスタッフばかりだな！」（ANN生放送で。オフレコのつもりが音入ってた）

「もう金なんていらねーや！」（「春よ、来い」を何故５００円で発売？と問われて）

と、一部分だけをピックアップすると、とんでもない性悪女に思えるが、最後の曲名からユーミンであるのがわかる。お上品ぶった差し障りのない言い方を避けて、素直に感性のままの表現をするとこういう語り口調になるし、お行儀をいろいろいわれる日本人の宿命だろう。こんなの外人アーチストにしたら屁みたいなもんさ。

日本人は才能と人間性を一緒にしてしまう。スポーツの名選手はジョーダンのようにオーソドックスで、タトゥもダメ、鼻ピーダメ、7色染のヘアスタイルも違和感を抱く。不倫もダメ、女クセの悪いのも才能に傷をつけるようなものとの考え。好みだからいいが、相手にも好みはあるわけだし。ビル・ワイマンというベーシストがいる。彼は1963年から1991年までザ・ローリング・ストーンにいた。ストーンズへの加入理由は彼がアンプを持っていたこと、27年在籍したストーンズを辞めた理由は、長年のバンドへのウンザリ感という。物静かで「サイレント・ストーン」よ呼ばれ、27年間もの長きのバンド生活でステージで三歩しか歩いていないという。

そんな地味で目立たない彼はミック顔負けの性豪で、寝た女は2000人ともいわれる。ストーンズのバリューがあれば物静かでも相手に困らないし、要は「やる気」の問題だ。2000人なんて3日に1人として17年程度でクリアできる数字だから、別段驚くことでもない。バカな告白をすると自分も手帳に数を記入していた時期があり、新人のみ×人/月というのもあった。

やる気とマメと口で充分。ワイマンのようにバリューがあれば口も不要かもしれない。ストーンズは結成50周年を迎え意気軒昂であるが、その記念ライブにはワイマンと元メンバーのギタリストミック・テイラーも出演している。いろいろな確執はあったろうが、それぞれが大人の対応を感じさせる。メンバー5人合わせて350歳の好々爺である。

さてさて、そのユーミンも、「自分の人気下降は銀行が潰れるくらいあり得ない」といったが、比喩としては良くなかった。バブル崩壊後に潰れた銀行は多いし、ユーミンも加熱人気が去った今は落ち目の代表アーチストである。ユーミン、みゆき、サザンといわれた時代もあったが、桑田佳祐は食道がん完治後に新たな展開を見せて音楽三昧に邁進している。

今回ユーミンは突飛な企画をして世間を驚かせた。なんといってもユーミン人気を支えている世代は10代、20代でもなく、30代、40代でもなく、実は50代、60代の爺婆である。そこに照準を当てなければ彼女のCDが売れないのを誰より知っているのが彼女である。そこで、というか取り上げたのがプロコル・ハルム。彼らとのジョイント企画をブチあげた。

プロコル・ハルムというバンドを知らなくても「青い影」は知られている。では「青い影」以外の彼らの曲を何か？といわれると「リンダ、困っちゃう」という人も多いのではないか？それくらいに「青い影」は認知度の高い名曲である。1967年にリリースされた「青い影」を聴いたビートルズのジョン・レノンは、「今の音楽業界でこの曲以外は聴く価値がない」と褒め称えた。

それまでのロックの概念を一新させたのは、バンドにギターの音がないことだろう。「青い影」はまさに教会音楽であった。あのオルガンのフレーズは誰でも覚えているし、当時ブームだったヤマハのエレクトーンを触る機会があった時に、真っ先にこの曲を弾いた。手探りで弾きながら何とも言えぬ荘厳の響きに酔ってしまい、エレクトーンが欲しくて仕方がなかった。

グヤトーンのエレキとアンプを伯父が買ってくれたが、エレキ禁止令でバンドが解散すると今度はフォークギターを買った。ヤマハのFG-160というのは本当によく鳴った。マーチンのD-45に引けをとらぬくらいに…というのは比喩。D-45など当時は日本に3台しか輸入されていない。と、そんな時にプロコル・ハルムのオルガンに魅せられたが、電子オルガン買えるはずもない。

ユーミンはプロコル・ハルムの影響で今のスタイルを確立したという。彼女の初期の曲にはプロコル・ハルムの影響を受けた曲もあるし、ミュージシャンならいろいろなアーチストから影響を受けるだろうが、それにしても一体いくらギャラを積んだのか、ユーミンの気まま、わがままであろうけれど、とにかくプロコル・ハルムとのジョイントは実現した。

日本の有名アーチストとといっても、プロコル・ハルムもポールもクラプトンもユーミンの曲も存在も知らなかったろう。ポールやクラプトンなら銭っこいくら積むとジョイントO.Kとなるのか想像もつかないが、銭っ子だけでユーミンとジョイントすることもない気がする。サンタナもかつて高中とジョイントをやったが、アドリブすべてを譜面にする高中と感性の相違は大きかった。

世界に羽ばたくには理論ではなく感性であると、サンタナの「READY TO FLY」の音を聴いて感じたものよ。キチンと弾く高中、キチンと弾かないがギターが唸るサンタナである。先週WOWOWで、ユーミンがプロコル・ハルムをロンドンのアビーロードスタジオに訪ね、セッションの様子が放映された。1967年に結成されたプロコル・ハルムは1977年に解散した。

ボーカル＆ピアノのゲイリー・ブルッカーは解散後ソロ活動を続けていたが、1990年にドラマーのB.J.ウィルソンが肺炎で死去したことをきっかけに、哀悼の意味をこめて1991年にバンドを再結成した。旧メンバーも加わり演奏活動を続け現在に至っている。お爺ちゃんゲイリーの声にはさほどの衰えもなく、2012年に聴いた「青い影」に自分は身震いしてしまった。

ジョイントだから「青い影」にユーミンのボーカルがプラスされる。下手な英語にヘンテコな声を聴き、「ユーミン頼むからあんたは歌わんでくれ…」と思った。ユーミンは感動するだろう、あこがれのバンドとの共演なわけだから。大枚叩いて夢の実現なら大いに楽しんだらいいよ。だが、それを聴く我々はたまったものじゃない。ユーミンの声、下手な歌はユーミンの曲に相応しい。

ユーミンの曲は下手なユーミンが歌ってなぜかピタリとハマる。歌の上手い山本潤子が歌う「中央フリーウェイ」や、「卒業写真」は、何故かド下手ユーミンに完敗（だと自分は思っている）。「ひこうき雲」も何人かのアーチストの歌声を聴いたが、ユーミンを超えるものはないし、なぜかユーミンで聴くと安心感を抱くのだ。カバーでオリジナルを超えないユーミン楽曲の不思議。

人はどう思うのも自由なように、自分がどう思っても自由だから、ちょっくら声を荒げていえば、「ユーミンは『青い影』など歌わんでよろし。まあ、プライベートで歌うならアデルでも何でも自由に歌いなはれだが、人に聴かす『青い影』じゃないだろ」とそのように思ってしまう。ジョイントライブに行くファンは、ユーミンが楽しんで歌う「青い影」に共感するのかもしれん。

それがファンというものか。お前はユーミンのファンではないのか？いや、ユーミンは稀有な才能の持ち主、いい曲たくさんあるし、ユーミンは嫌いじゃない。ただ、ちょっと誤解がある。ユーミンが好きではなく、ユーミン（の曲）が好き。同様「青い影」も好きだが、それはプロコル・ハルムの曲で、ユーミンの曲ではない。わしはプロコル・ハルムだけで聴きたい。

ユーミンの自由は認めるがここに一人「青い影」を「ユーミン、お前は歌わんでよい」という奴がいる。しかし、ユーミンもミュージシャンの端くれなら、自分が参加しない方がいいと当然思ってるだろうが、そこはお祭り気分ということなのだろう。一番嫌がってるのはプロコの連中だろうが、彼らはビジネスだから、そこは割り切って入る。

ユーミンはあれだけ下手な歌を恥もせぬ稀有な性格だから、こういうこともその延長でやれるんだろう。そう思えばユーミンらしい所業だな。ついでに彼女の同業者への悪口三昧がネットにあり、読んで笑わずには入れなかった。敵を作るというより、いう前も、いった後もサッパリ感でしこりを残さぬ彼女の天性的資質かも。

・宿敵中島みゆきへ

「私は20代前半のころ、自分が結婚してるってことで、結婚してないあなた（みゆき）に優越感があったの」

「20歳になったらタバコもお酒もケッコン！も自由ですから！頑張って下さ～い（笑）」

「みゆきの怨念だ！！」（昔のツアーで東京では即日完売だったのに、北海道だけはチケ売れ残ってしまった現象に対して吐き捨てた一言）

「あんなババアのどこが可愛いんだ！！」（ユーミンライブに来た中島みゆきのファンへ言い放った罵詈雑言の1つ）

「くやしかったら結婚してみろ～！！」

「セックスの処理はどうしてるの？（嘲笑）」

↑に対しての中島のイヤミ返し

「あのお方、苗字まで変えてるのに旦那に相手にされてない。いと哀れ（笑）」

「自分のキーに合わない曲を平気で書ける人の気が知れないわね（笑）」

「皆さんはこの人（ユーミン）を鉄の女だと思ってるかもしれないけど、実はとっても弱い女なのよ～。本当はとっても弱い人なのよ、この人。鉄の女や強い人にはあんな曲は書けないんだからぁ。だからあんまし叩かないであげてねぇ。凹んで泣いちゃうわよ、この人（笑）」

「どっかの誰かさんみたいにあからさまに"金掛けてます！"ってお下品な成金趣味のコンサートじゃなく、私の場合は見えないところに金掛けてますから！」

・松田聖子へ

「あんな変なアイドル女なんかに曲書かなきゃよかった！」

「印税返すから曲返せ！」

・ドリカム吉田美和へ
「ダイヤには敵うわけないのよ。ジルコンのくせに！」

「ド田舎フレーバーの勘違い歌姫。似合いもしねぇのに、浸ってんじゃねぇよ！っていう」

・小田和正
「私からみれば、とっくに出がらしになってしまって絞っても何も出ないような音楽だって分かる」

「干からびてしまった状態なのに、必死になって曲を作ってる」

・美空ひばりへ
「あの程度だったら私にも出来る。フフフん♪」（東京ドームの不死鳥コンサートを見に行った後の感想の一言）

・渡辺美里へ
「５頭身の不細工な勘違い女」

「エネルギーを外に発散させるだけでは魅力を感じない」

↑これに対して渡辺美里は自著で反論
「その人（ユーミンのこと）は私の存在が、煙たかったのかもしれないし、鬱陶しかったかもしれないし、恐かったのかもしれないわ」

・宇多田ヒカルへ
「才能？ありきたり。それでも「売れるということ」はステキね。ルックスは残念だわね（笑）」

・五輪真弓へ
「一回転させて戻ってきたような顔（笑）」

・森高千里へ
「あんな中学生の日記みたいな詩で印税入って来るなんていいですね」

やっぱ、ユーミンは曲だけじゃない、ボキャの才能ある。女の嫌味合戦は面白い。有吉何かかわいいもんよ。

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「あの人」の頃　宮川泰　享年75歳

「ザ・ピーナッツが亡くなったよ」

「えっ、そうなん？二人とも？」

「なわけないだろ…。生まれた時は一緒でも、死ぬときゃ別々だよ」

昨日交わした知人との会話だ。いうまでもないがザ・ピーナッツは双子であり、いつでも、どこでも、なんでも、かんでも二人でワンセット。彼女らが一人で写っている写真などみたことない。亡くなったのは姉の伊藤エミである。がんが見つかってわずか1ヵ月で死去。何をするも二人一緒だが、結婚だけは別々で、エミは1975年6月4日に沢田研二と結婚、男児を出産するが1987年1月離婚した。

妹のユミの方は独身を通している。ザ・ピーナッツは愛知県出身で、高校二年で中退後に名古屋市内のクラブで「伊藤シスターズ」の名で歌っていたところを渡辺プロダクション社長渡辺晋にスカウトされ、上京する。二人は晋宅に下宿したが、晋が彼女らの歌唱レッスンなどプロとしての音楽的素養を託したのが宮川泰であり、宮川は名実共にザ・ピーナッツの育ての親でもある。

ザ・ピーナッツの音楽的才能は宮川によって徹底的に鍛えられたもので、かわい子ちゃんアイドルとして売り出すピーナッツ以降の双子のアイドル歌手とは土台もコンセプトも違っていた。といってもリリーズくらいしか思い出せないが、調べてみると双子の歌手は結構名を連ねているが、ピーナッツの後にピーナッツを超える者は出ていない。ピーナッツの同時期にこまどり姉妹はいた。

3歳上のこまどり姉妹は演歌専門であり、ピーナッツのように歌って踊れてコントも芝居もやるエンターテイメント性はない。ピーナッツをスカウトした渡辺晋はミュージシャンであったし彼女たちの音楽的才能を買ったわけで、当時のピーナッツの容姿が昨今のアイドル性があるとはとても言えないくらいにオカチメンコであった。整形もあったか否かは定かではないが、美貌が増したのは事実である。

ピーナッツの天性ともいえる音感と抜群の歌唱力、共鳴するハーモニーは双子ならではの美しい響き。ジャズもスタンダードもこなすジャンルの幅、芸域の広さは宮川泰が実際彼女たちの才能に魅入り、本気で取り組んだ賜物だろう。宮川は彼女らに相応しい名曲を沢山書いている。「ふりむかないで」、「恋のバカンス」、「ウナセラディ東京」は代表曲である。

「ふりむかないで」は1962年にヒットし、街中にこの曲が溢れていた。ガキだったこともあって、自分には女性が靴下を直している状況にして、「ふりむかないで」という歌詞の意味が不可解でならなかった。靴下といえば、我々が履く普通のソックスしか思い浮かばず、ソックスがずれたのを直すのにどうして見られてはいけないないのか？、ふりむかないでなのか？そういう疑問である。

黒いナイロンストッキングで太もも辺りのずり落ちを直すという発想がなかった。作詞は越路吹雪のマネージャーであった岩谷時子で、なるほど黒いストッキングを直す仕草は越路の日常にあったと推察する。女心を書いたというより、タカラジェンヌの越路の強烈なインパクトが岩谷の世界観だろう。岩谷は越路が15歳の時に意気投合し、彼女の心の支えであったという。

越路が宝塚を辞めて歌手になりたいと相談した時、岩谷は雑誌『歌劇』の編集長という要職にあったが、すぐさま退社して越路と共に状況、越路の付き人兼マネージャーとして30年間、越路が死去するまで彼女とは一蓮托生の身であった。岩谷は越路の8歳年長であるが、現在も96歳にて存命である。先の宮川泰作曲ピーナッツの3曲すべて、岩谷の作詞である。

岩谷、宮川に関していえるのは名曲率100％の作詞家、作曲家ではないだろうか？特にピーナッツに関しては断言できる。「しゃぼん玉ホリデー」のテーマ曲（作詞は前田武彦）、コンビ作品では「手編みの靴下」（後に詩を変えて園まり「逢いたくて逢いたくて」）、「二人の高原」、「山小屋の太郎さん」、「ジューン・ブライド」、「六月の花嫁」、「好きな好きな人」、「愛は永遠に」などがある。

1931年に北海道で生まれた宮川は、父親の異動に伴い幼いころより大分県日田市など、全国を転校してきた。大阪府立富田林高等学校を卒業し、京都市美術専門学校を経た後、大阪学芸大学（現大阪教育大学）音楽科に入学するも中退。戦後のジャズブームの最中、駐留軍がたむろするクラブなどのジャズバンドでピアニスト兼アレンジャーとして活躍した。それが彼の音楽人生のスタートとなる。

当時は楽譜もままならぬ時代、ジョージ・シアリングやバードランドなどのSP盤を必死で聴きながらの耳コピで曲を覚える。エレキブームの頃の少年がベンチャーズを耳コピで覚えたのとまったく同じ風情の時代である。「渡辺晋とシックス・ジョーズ」でピアノをやっていた関係で、その後も宮川は晋の片腕的存在となる。そんな晋にある日託された双子の姉妹がピーナッツだった。

宮川はピーナッツと出会ったときからその音楽的な才能に感心仕切りであったという。ハーモニーはもちろん、即興でオブリガート（副旋律）などをやれるピーナッツに宮川は驚いたという。ピーナッツのレコードデビューは1959年『可愛い花（Petite Fleur）』であった。外国のカバー曲で元歌はフランスで、宮川が編曲を担当した。続く2枚目もカバー曲『キサス・キサス・キサス』である。

ピーナッツの3枚目シングルは『情熱の花』。これはハッキリ覚えているが、すごいインパクトのある曲だが、これもヨーロッパの歌手カテリーナ・ヴァレンテが「Tout L'Amour (PASSION FLOWER)」の題でヒットさせたもので、後にこれがベートーベンの『エリーゼのために」が原曲であったと知った。続く4枚目シングルもクラシックからメロディーを大幅にアレンジされた『乙女の祈り』である。

5枚目もケーシー・リンデンのヒットをカバーした『悲しき16歳』は、当時ピーナッツが19才であったにも関わらず、いかにも16歳であるかのような雰囲気で作成され、前奏や間奏部分の、「ヤヤヤンヤ、ヤヤヤヤ…」と歌う特徴的な歌い方がが人気を博した。のっけから3度音程のハーモニーは楽曲的にはやりすぎ感は否めないが、楽曲構成よりもピーナツの特徴を前面に出したのだろう。

当時は外国のカバーポップ全盛期で、本場の洋楽に太刀打ちできるような日本のオリジナルなポップスが、それもヒットが見込めるような楽曲に自信がなかったのだろう。1959年第一回レコード大賞曲は水原弘の『黒い花びら』であったし、こういう哀愁を帯びた日本歌謡が業界の根底にあり、オリジナル曲でないカバーポップは、西洋カブレの店屋物という感じで見下げられていた。

『黒い花びら』は永六輔作詞、中村八大作曲になるが、アメリカン・カバーポップスに影響されたのか、中村八大も和製ポップスに趣を変えて行く。余談だが、渡辺晋は自分のバンドに才能ある中村八大を入れたが、アーテスト志向の中村とエンターテナー志向の渡辺とでは意見が反りあわず、中村は晋のバンドを脱退する。その中村が時代のニーズに応えて和製ポップス路線に転換していった。

『上を向いて歩こう』（1961年）、『こんにちは赤ちゃん』（1963年）、『明日があるさ』（1963年）、『幸せなら手をたたこう』（1964年）など、ジャズのエッセンスから続々と明るい名曲を生んで行く。1970年からはNHK「ステージ101」の音楽監督を務めている。中村はNHK「夢で逢いましょう」などNHKの顔だが、一方の渡辺晋・宮川泰は「シャボン玉ホリデー」、「ザ・ヒットパレード」など民放に幅を利かせた。

宮川を音楽監督に迎え、「ザ・ヒットパレード」をスタートさせたのが当時フジテレビのディレクター椙山浩一（すぎやまこういち）。彼は東京大学教育学部卒だが、後年グループサウンズ、「ドラゴンクエストシリーズ」の作曲などで畑違いの才能を開花させるが、それら彼の音楽的素養は宮川泰から学んだとし、「私の音楽の師は宮川大先生」といって憚らない。「ザ・ヒットパレード」のタイトル曲も彼の作詞・作曲・編曲になり、これには宮川も、「ヒッパレー（引っ張れー）、ヒッパレー（引っ張れー）って、スゴイ曲を作ったと感心しちゃったね」とすぎやまを讃える。すぎやまはピーナッツの名曲『恋のフーガ』も作曲し、この曲は宮川が編曲したが、「宮川先生のティンパニーを使うアイデアには驚いたし、感心させられた」とすぎやまはいう。

すぎやまは他にもピーナッツの『ローマの雨』、ザ・タイガースの『花の首飾り』、『モナリザの微笑』の他にも、『亜麻色の髪の乙女』、『遠い渚』、『学生街の喫茶店』など押しも押されぬメロディメーカーとなった。すぎやまが大学卒業後に文化放送に入社した動機は、「音楽の勉強ができる」からであった。「好きこそものの上手なれ」とは、すぎやまのためにあるの言葉だ。

ピーナッツも、弘田三枝子や中尾ミエ、伊藤ゆかり、園まりのナベプロ三人娘に飯田久彦、田代みどり、森山加代子らの若い歌手が、アメリカやヨーロッパのカバー曲でデビューするのが当たり前だった。当時日本は今のような情報が発達した時代ではなく、洋楽に関しては鎖国状態だった。今本場でどんな歌が流行っているか、いち早く日本語の歌詞をつけて歌ったもの勝ちだった。

フジテレビの「ザ・ヒットパレード」の大成功を尻目に、日本テレビがナベプロとタイアップしてスタートさせたのが「シャボン玉ホリデー」で、挿入歌のアレンジはすべて宮川が担当した。当時の宮川の忙しさは半端ではなかったろう。「ザ・ヒットパレード」も、「シャボン玉ホリデー」もすべては外国のカバー曲でなりたっていたが、時代は日本の演歌ではない楽曲の必然性を求めていた。

そしてついにピーナッツにオリジナル曲が宛がわれた。正確を期していうと初のオリジナルソングではないが、初のオリジナルヒットといえる。それが岩谷時子作詞、宮川泰作曲の『ふりむかないで』である。楽曲の完成度も素晴らしいが、何よりピーナッツの歌唱が素晴らしい。こんにちでは素人同然の歌手が数日にして100万枚を売る時代で、そこには別の価値観が存在する。

素質がなくとも、努力もなくとも簡単に電波に乗って大衆の支持を得る時代といえる。まあ、我々の眼には良いものとガラクタの違いは判るから何も困ることはないが、本物が廃れて行く時代が残すもの、残す文化は何だろうという懸念はある。おそらく将来的に残すに値するものはAKB関連にはない。現代人の求めるものが一過性だけであるなら、文化自体は消滅する。

文化は良いものだけと限らないし、ロックやヒッピー、パンクなど出だし悪くても評価されるもの。集団ガラクタユニットが良いものと後世で評価される可能性はあるのか？死後の行方は自分にわからぬが、善悪の評価は後の世の人間が決めることだ。劣悪な文化は国の恥だが、良いものは国家の誇りとなる。ビートルズも、アレサ・フランクリンもそうであるように。宮川泰やザピーナッツが国家の誇りとまではいわぬが、国家に帰属する庶民の誇りといっていい。ピーナッツがいた、美空ひばりがいた、尾崎紀世彦がいた、荒井由美、中島みゆき、吉田拓郎がいる。同様に阿久悠、なかにし礼、岩谷時子、中村八大、筒美京平、すぎやまこういち、そして宮川泰。彼等は文化である。

宮川泰（みやがわひろし、1931年3月18日 - 2006年3月21日：享年75歳）

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「あの人」の頃　美空ひばり　享年52歳

昨日6月24日はひばりの命日。亡くなって23年になるが、彼女の存在は死してまったくといっていいほど褪せてない。これほど褪せない物故者がいるのか、さすがに日本一の歌手といわれる所以だ。男で日本一は桃太郎ということだが、美空ひばりが歌手として日本一であるのに異を唱える人間はいまい。まあ、確かに世代にもよるし、美空ひばりって何？という若者は多い。知らないだけでなく、「美空ひばりなんかのどこがいい？あんなのクソだろ！」という若者がいたって全然いいと思っている。以前同じようなことがあった。

ある20代の男と話してて、何気にAKBの話になって、ハッキリは覚えてないが批判した時に、相手がかなり興奮した。いうまでもなく彼はAKBファンだったようだ。自分の好きな芸能人を批判されて怒るというのも若さだろうが、その時に北島三郎を引き合いに出し、許容量の狭い若者に問題提起をした。こんな風な会話だったと思う。

「君は北島三郎って知ってるか？」

「知ってますよ。演歌歌手でしょ？コロッケがモノマネしてました」

「そうそう、オレは北島三郎が好きだが、君は好きでも何でもないだろ？」

「別に好きではないです」

「嫌いでいい、大嫌いでもいいよ。おれは好きだけど、君が好きである必要はない。同じように君が好きなAKBをオレが嫌いでもいいんじゃないか？」

「でもあんな言い方しなくてもいいでしょう」

「君にいったんじゃない。君に聞こえただけよ。嫌いな物をクソって君だっていうだろ？北島三郎はクソで好きじゃないって、オレに向かっていったって別にいい」

「そんなこといいません」

「いわなくてもいいが、いってもいいといったのよ。」

「喧嘩になるじゃないっすか、そんなこといったら…」

「君みたいにか？AKBくさされたら頭にくるってな」

「誰だってそうでしょう？自分が好きなものクサされたら腹立ちません？」

好きでもない北島三郎を例に出す。「自分が好きなものクサされたら腹立つ」という前提が彼にはあり、「自分が好きなものを人がどれほど嫌いでも自分には関係ない」という自分の考えとは相容れない。まるで共産主義と民主主義のように思考の根本がちがっている。彼は感性系思考、自分は理性的思考ということだ。感情で怒るが理性では納得するという事は世の中に多い。

むきになるのが若さだ。自分もかつてそうだった。むきになる心理は一言でいうなら自己中心性で、これは幼児期における認知的発達の特徴である。自分と異なる様々な視点があることも知らず（受け入れられず）、自分中心の見方でしか認知も理解もできない。こういう人を感情的な人ともいうし、ようするに理性思考ができない人をいう。「まあまあ、そう怒らずに、頭冷やして」といっても「そんな事できないよ」という。

「瞬間湯沸かし器」とあだ名されたりする。どっちにしても幼児性だな。理性が発達してないという意味で。誰々のファンであることはそれは自分のため、自分の楽しみであるのに、それを他人に貶されて腹が立つ理由はよく判らない。自分の視点と他人の視点は別だとどうして思えないのか、そこがわからない。その「いいね」は本当の「いいね」なの？ってのが近年はいろいろいわれる時代のようだ。

Facebookやブログのネット友だちの関係性の中で、こういう現象が起こっているらしい。自分はFacebook、mixi、Twitterの知識がまるでないが、それらに興味もないからな～んにも知らない。実際、コミュニケーションを楽しんでいるはずが、実は義理でコミュニケーションをしていることが、いつのまにか疲れと孤独を深めているという人が少なくないという。

まあ、自分的にいうと上辺だけのつまらない人間関係など望みもしないし、心でつながっているかいないかは判らないけど、それ以上に見え透いた義理立てした人間関係の方が好きじゃない。どうも人には表立ったものの方が信憑性があるように思えるのだろう。尾崎紀世彦のところでも言ったが、自分は尾崎と美空ひばりが最高のシンガーと思っている。しかし両者のレコードは一枚もない。

それでファンか？それでファンなんだな、これが。「ファンなら彼(彼女)らのCDくらい買えよ！」そんな天の声は聞こえない。人にあれこれいわれることもない、自分がファンなのだから。正しいファンの在り方、定義があるかないかわともかく、尾崎、美空をリスペクトするのもファンだろう。尾崎は始めて出てきたときからのファンだったが、美空ひばりは子どもの頃は好きでなかった。

同世代より少し下の小林幸子や天童よしみは、子どもの時分から美空を敬愛していたというが、それは歌手を目指す彼女らのことであって、普通の我々世代は子どものときに演歌歌手など好きでなかったろう。演歌・浪花節は辛気臭かったし、同時期にはアメリカン・ポップスのけたたましく明るい楽曲があった。コニー・フランシスのカバーを日本語で歌う、弘田三枝子やザ・ピーナツ、中尾ミエ、鈴木やすし。

ウエスタンを皮ギリにロカビリーブームを作ったエルビス、アストロ・ノーツやベンチャーズのインストサウンドが台頭、ビートルズブームが起こる。そんな音楽に影響された自分たちにとって、三波春夫や美空ひばりなどはクソだった。演歌は聴いただけで鳥肌もので、それでも当時は八代亜紀や村田秀雄が好きという奴はいたから、音楽というのは何とも裾野が広いといえる。

尾崎紀世彦は演歌ではないが、ひばりは演歌？というと難しい。それはともかくひばりを好きになれなかったのは彼女の歌の上手さが判っていなかったのだろう。グループサウンズ全盛時代にはミニを履いて『真っ赤な太陽』などを披露したが、曲は馴染めてもひばりが好きというわけではなかった。いつ頃からだろう、ひばりをリスペクトし始めたのは。それはある一曲がきっかけだった。

『川の流れのように』という曲を誰かが同窓会で披露したときは、誰の曲かも知らなかったし、それほどいい曲とも思わなかった。この曲は1989年1月11日の発売され、同年6月24日にひばりが死去したことで、この曲は遺作となった。曲は没後にヒットし、150万枚を超えている。だからというわけじゃないが、ひばりが好きというより、『川の流れのように』に感性を支配された。

それくらいにこの曲は名曲だと思う。自分がいいと思うから名曲というのではなく、おそらく多くの人がこの曲に名曲のエッセンスを感じていると思う。作詞は秋元康だ。ロリコンオタク秋元は好きではないが、この詞を書いた秋元には敬服する。当時、秋元はニューヨークに在住しており、ニューヨークの「カフェ・ランターナ」というカフェで、見岳のメロディーのテープとウォークマンを前に書かれたという。

「川の流れのように」というタイトルから書き始めたが、なぜかは自分でもわからないという。しかし、後のインタビューで訊かれた際には「多分それはずっとイーストリバーを見ていたからなんでしょう」と答えている。秋元はこの曲によってさらに評価を高めた。詞があとのいわゆる曲先で作られたが、秋元は曲のイメージを事前に作曲者の見岳章に伝えている。

見岳は1979年に土屋昌巳らとともに一風堂を結成、キーボードを担当した。1982年に発売した『すみれ September Love』がカネボウ化粧品のキャンペーンソングとなり、オリコンヒットチャート2位のヒットとなる。稲垣潤一、Wink、おニャン子クラブの他にとんねるずにも『雨の西麻布』など数曲を提供しているが、なんといっても『川の流れのように』が際立っている。

なぜに秋元が…、という部分はある。彼は当時おニャン子クラブでヒットを飛ばしていた色物作詞家だった。秋元に作詞を決断したのはひばりのプロデューサー境弘邦だった。境はこのように語っている。「非常に今でも印象に残ってるんですけど、40何年間歌ってきて、自分のお客さんの中で１番遠い所にいるお客さん、歌手美空ひばりとしての空洞の部分、っていうのが30代のお客さんだという話が出たんですよ。

自分のレコードの売り上げを見ても、ファンクラブの人を見ても、どこを見ても周りを見渡して、30代の人っていうのが１番私に遠いところにいるお客さんだ、っていう風にひばりさんが言ってましてね。30代の人、お客さんに向かってアルバムを作ってみない？っていう、ひばりさんからの提案だったんです。」作られた歌に関して、秋元自身は以下のように述べている。

「変化球で、面白いじゃん！っていう風に言われてきた作詞家なんですね。つまり、あのー、言葉の作詞家ではなくて、企画力のある作詞家だったんです。よくこの企画を受けたなといわれますが、作詞家という肩書きを頂いた以上、一番歌の上手い方の詞を書きたいなというのが、一番のきっかけですかね。当時の心境は、それじゃあ、一度直球勝負で王道をやってみよう！と。」

秋元＝企画力というのは納得する。その秋元が見岳に伝えた曲のイメージは、「まぁ人生っていうんだから、要するに心の中で映像とか思い出とか、なんかそういうのが見えるようになればいいんじゃないかな？っていうことだったんで、まぁ1番シンプルに･･･（ピアノを弾きながら）これはカーペンターズなんですけど･･･。そんなのを何となくダラダラ弾いて（川の流れのように、は）こう1個ずつ切れてるんですよ。

だから、これ2小節つながってますよね。流れていくんですけど、何かお洒落過ぎる。何かもっと静かに始まって最後にブワーッといくのじゃないと、多分ＯＫ出ないだろうなとか色々感じてて（笑）。とりあえず、トツトツと始まるからもう１小節で切れる。で、何かサビの前、ザッザッザッザッザ、（再度ピアノ弾く）ってデカイなーと思って、これはいいなーと思って。」と見岳はいう。

提供されたひばりは、この曲を大層気にいったらしい。彼女はこの歌をステージでこのように表現している。「今、一番愛しているもの、大事なものは？と聞かれるんですが、それはもちろん歌ですね。それでは、私が今一番愛しているこの歌をお送りします。」ひばりは暴力団との絡みや、弟の不慮の死など一時期不遇の時期を過ごした。ＮＨＫもかたくなにひばりの出演を拒否した。

1987年4月、ひばり大腿骨頭壊死と肝硬変により再起不能との宣告を受けたが、1年後の4月11日、東京ドームで復活コンサートを開いた。歌手の命とも言うべき心肺機能の難をおして開いたステージは大成功に終わる。少女から歌い始め、国民に愛と希望を与えながら歌い継ぎ、自らの死期を予感したかのように、最後に最も好きな歌と巡りあった彼女は幸せだったのではないか。

不世出の大歌手美空ひばりは、自分の命と引き換えに名曲「川の流れのように」をこの世に残して逝った。あらゆる歌手の「川の流れのように」を聴いた。YouTubeに沢山おいてある。それぞれに味を出し、特徴を出している。テレサ・テンは淡白に、ちあきなおみは技巧を凝らし、金蓮子はいつもながらの迫力、歌は上手いが川の流れのコンセプトを生かせてない。あんなにキバって歌われてもね…

天童よしみも、小林幸子も足りない。由紀さおり、伍代夏子…『川の流れのように」は、シンプルであるだけに難しい。下手も目立つし、技巧を凝らすと曲の良さが削がれる。ひばりは音程に気を配すこともなく、余裕と遊び心をもって表現する。下手の目イッパイの歌唱は聴く側を疲れさせるだけ。旋律をズラしたりするような奇をてらうことせず、一つ一つの言葉をはっきりと。

ひばりを聴いていると、日本語の素晴らしさと、日本人であることの誇りを感じさせてくれる。良い「川の流れのように」を求めてたどり着いたのがジョー・平田という日系ブラジル人。ひばりと同じkeyで歌い上げ、これが実に素晴らしい。聴いてもらえば判るので注釈は書かない。良い時代に生を受けた。良い歌手に出会えた。良い曲にも出会えた。良い時代に感謝を差し出したい。　Like the Waters of a River