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【国際】タイ・スラム街から震災募金 「10倍恩返し」図書館改修
タイ・バンコクのスラム街にある唯一の古い図書館が、東京に住む日本人男性の寄付により全面改修される。スラム街の住民らが一昨年、東日本大震災の被災地に貴重なお金を寄付したと知った男性が「十倍のお返しがしたい」と約千百万円の寄付を思い立った。日タイの善意のキャッチボールで住民の夢が実現する。 (バンコク支局・杉谷剛) 首都の南に粗末なトタン屋根の家が密集する東南アジア最大級のクロントイ・スラム。住民が東日本大震災被災者のために募金活動を始めたのは二〇一一年三月十二日、震災の翌日だった。 呼び掛けたのはタイでスラム街の改善運動に長年取り組み「アジアのノーベル賞」と言われるマグサイサイ賞を受賞したプラティープ・ウンソンタム・秦(はた)さん(60)。日本人の夫を持つプラティープさんは「これまで多くの日本人に支援してもらったので、恩返しがしたかった」。約四十万バーツ(当時約百十万円)を被災地に寄付した。 このことを新聞記事で知り、寄付を思い立ったのは、東京都練馬区に住む会社顧問の男性(64)。「住民がすぐに動いて、なけなしのお金を寄付してくれたことに感動した。退職金でお返しがしたいとずっと考えていた」 男性は昨年十月、東京のタイ大使館に紹介されたシャンティ国際ボランティア会(SVA、東京)とプラティープ財団に二百万バーツ(約五百五十万円)ずつ、計四百万バーツを寄付した。SVAは一九八九年、クロントイ・スラムに事務所と図書館を建設して運営。各地のスラム街で図書活動を続け、プラティープさんの募金集めにも協力。図書館には約五千冊の本などがある。伝統舞踊教室にも使われ、傷みが目立っていた。 図書館は映画上映や講演会もできる多目的スペースに改修される。今年一月に初めてスラム街を訪ねた男性は約二千人の子どもに学用品を渡し「自分の夢を文字や絵でノートに描き、勉強してぜひ実現して」と励ました。ほぼ毎日図書館に来る小学六年女子のジェちゃん(12)は「いっぱい勉強して新聞記者になりたい」と笑顔。 八木沢克昌SVA理事(55)は「図書館は子どもが将来の夢を思い描く場所。善意がありがたい」と話した。 PR情報
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