その様子を現地取材したスポーツジャーナリストの松瀬学氏が語る。
「現地取材の感触では、東京とマドリードが並んでいて、少し後からイスタンブールが追っているという印象でした。イスタンブールはデモなど政情不安があるうえ、インフラ面などでの整備不足も否めない。マドリードはスペインの財政危機がネック。計画、都市力を冷静に判断すれば、東京が有利です。
ただし、長らくIOCを牽引してきたサマランチ前会長(故人)がスペイン出身で、その息子がIOC委員を務めている関係上、義理でマドリードに投票する委員もいるでしょう」
松瀬氏が指摘するように、都市そのものの実力よりも政治的力学が働く投票では、マドリードがトップに立つと見る専門家は少なくない。ただし、これですんなり決まるわけではない。投票で過半数の票を獲得する都市がなければ、決選投票が行われるからだ。
スポーツ評論家の玉木正之氏も、
「おそらく1回目の投票では過半数の票を獲得する都市が出ず、上位2都市による決選投票が行われるでしょう。つまり、2回目の投票を見越しての説得が重要になってくるのです」
と分析する。
9月8日午前5時に発表
日本側は決選投票に備えて、イスタンブール支持と見られるIOC委員に接触。「1回目の投票はイスタンブールでいいけれど、マドリードとの決選投票になったら東京に入れて欲しい」と根回しを徹底しているという。
日本側の戦略的なロビー活動に加え、マドリードを取り巻く環境も日本に有利に働いている。
実は2024年のオリンピックは、前回開催からちょうど100年が経過するパリでほぼ決まっている。つまり、2020年がマドリードになれば、2回連続ヨーロッパでオリンピックが開かれることになる。
しかも、スペインでは7月24日に列車事故が起き、79名もの死者を出したばかり。原因は運転士の不注意によるものだったが、事故現場はスピードの自動制御装置が働かない区間。オリンピックにおける大量の人員輸送を考えれば、鉄道の安全対策不備は大きなマイナス要因になった。
こうした事情も考えると、1回目の投票でマドリードに負けて、2回目の決選投票では東京がマドリードを逆転。東京でのオリンピック開催が発表されるのは日本時間で9月8日の午前5時。テレビ局ではTBSが深夜1時から、3都市による最終プレゼンや、投票の様子、そして決定までを長時間生放送することを決めた。このIOC総会で「東京」の名前が正式に呼ばれた瞬間から、日本は7年後の本番に向けて大きく動き出す。
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