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【社会】福島の原発作業員 健診データ登録6割 被ばく線量も修正東京電力福島第一原発で、事故直後に緊急作業をした作業員の健康管理の不備が目立っている。健康診断結果のデータベースへの登録が六割程度と遅れているほか、七月には東電が登録の前提となる被ばく線量を修正し、混乱を招いた。事故から二年五カ月が経過したが、国や事業者による健康管理は厳格さを欠いたままだ。 ◆ゼロ「結果は速やかに提出してほしい」。今月九日に、作業員の登録状況を公表した厚生労働省の担当者は焦りを隠さない。 累積被ばく量が一〇〇ミリシーベルトを超えると、がんの発症リスクが高まるとされる。国は高い被ばく量が見込まれる緊急作業に従事した約二万人をデータベースに登録する方針。長期的に健康管理するため東電や協力企業などの事業者に対し、作業員の被ばく量に応じて年一、二回の健康診断やがん検診などの検査を受けさせ、結果を提出するよう求めている。 厚労省による、法令に基づく一般的な健康診断の実施率は昨年九月までで99%だが、検査結果の登録率は64%だった。また五〇ミリシーベルトを超える場合に求める白内障の検診で、東電の作業員の実施率は今年三月時点で69%。データベースへの登録はゼロだった。 東電は作業の煩雑さを挙げるが、対応の改善が求められる。厚労省は「実施率に比べ、登録率が低すぎる」としている。 ◆修正東電は七月、厚労省の指導をきっかけに、二〇一一〜一二年度の被ばく量を修正した。四百五十二人が既に報告していた値よりも大きくなり、最大約四九ミリシーベルト高くなった。一〇〇ミリシーベルト超の人は六人増えて百七十三人で、ほとんどが事故直後に働いた作業員だった。 事故直後は、内部被ばくを測定するホールボディーカウンターが不足し、数カ月に一回の計測結果から期間全体の総被ばく量を推定して算出するケースもあった。厚労省はより厳しい条件での算出を求め、東電は数値の修正を迫られた。 ◆被ばく修正に合わせて東電は、特に健康リスクが指摘される作業員の甲状腺被ばく線量についても公表。これまでは実測データがある五百二十二人分しか明らかにしておらず、一〇〇ミリシーベルト超は百七十八人から千九百七十二人と十倍以上に増えた。 原発労働者問題に詳しい原子力資料情報室の沢井正子さんは「これだけ被ばくするのは異常事態。検診回数を増やすなど国が前面に立ち手厚い健康管理をしなければ、廃炉作業を担う作業員がいなくなる」と強調している。 PR情報
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