核燃料サイクル施設の立地自治体から離れ、国の財政支援が受けられない青森県内25市町村向けに続いてきた電力業界の寄付金が、20年目の本年度限りで打ち切りになる公算が大きくなったことが19日、分かった。
地元側は5年ごとに支援の延長を業界に要請してきたが、東日本大震災後の原発停止で電力各社の経営が悪化し、これ以上の支出を求めるのは難しいとの判断に傾いたため。寄付は累計約130億円に上り、「原子力マネー」依存との指摘もあった地域振興策を見直すきっかけになりそうだ。
この寄付は全国の電力10社でつくる電気事業連合会(電事連)が、青森県の「むつ小川原地域・産業振興財団(むつ財団)」に拠出。対象市町村が立案した事業に、財団が資金を助成金として配る仕組みだ。「原子燃料サイクル事業推進特別対策事業」と呼ばれる。
寄付総額は1994年度から2013年度までで約130億円。助成事業は1350件余りに上り「五所川原立佞武多(たちねぷた)」などの観光資源や公共事業への補助が含まれる。
原子力施設がある県や地元、隣接などの市町村には国の「電源3法交付金」が支払われるが、現在、青森市などの25市町村は対象外。原発から出る使用済み核燃料の再処理工場を受け入れた六ケ所村などにとどまらず、県全域の協力を得る狙いから寄付が始まった。
その後は本来5年の寄付期間を地元の要望で3度延長し、金額も次第に増えた。だが、電力各社の業績が低迷。相次ぐ値上げを機に国が寄付金や電事連の会費負担を電気料金に上乗せすることを禁止し、業界側の支出が難しくなっている。
青森県町村会の幹部は取材に「電力会社の赤字や値上げで、寄付を続けてほしいと言うのは非常に厳しい。(首長は)みな無理だろうと思っている」と語り、県と協議して最終的な扱いを決める意向を示した。電事連は「継続するかは今後、状況を見て判断する」としている。