名古屋グランパスのDF阿部翔平(29)が珍記録でJリーグの歴史に名前を刻んだ。J通算213試合目の出場を飾った17日の広島戦でノーゴールに終わり、デビューからの連続無得点試合(GKを除く)で歴代単独2位に浮上した。試合に出続けなければ達成できないだけに“勲章”とも言えるが、阿部の思いは複雑のようだ。
ポジション柄とはいえここまで得点と縁がないJリーガーも非常に珍しい。2006年3月5日のC大阪戦でデビュー。不動の左サイドバックとしてグランパスを支えてきた阿部が、ゴールを記録しないまま歴代単独2位の高みに到達してしまった。阿部は「ベストじゃなく、ワーストの記録ですからね。そりゃあ喜べないですよ」と苦笑した。
もともと得点力がないわけではない。高校3年時は強豪の市立船橋(千葉)で背番号10。ポジションは左サイドハーフだった。高校で1学年下のMF小川は「ミドルシュートもフリーキックもあった。普通に点を取っていたイメージがありますね」と述懐する。
転機は筑波大でDFへコンバートされたこと。ポジションが後ろへ下がり、阿部はシュートよりもサイドからのクロスに磨きをかけていく。グランパスでは1試合に1本シュートを打つか打たないか。得点チャンス自体があまりなかった。
デビューから連続無得点の歴代1位はMF桑原裕義の243試合で、阿部が試合に出場し続けた場合、来年夏ごろに“Xデー”を迎えてしまう。阿部は「ボクは2位でいい。最近の試合ではペナルティーエリア付近まで攻め上がる機会も多い。ミドルも積極的に狙っていきます」とトップ浮上を何とか回避する構え。
小川は「得点していないのに出続けていること自体がすごい。ここまできたら記録をつくってほしい」と面白半分に記録達成を期待しているが…。これからの1年で阿部がゴールを決める歴史的瞬間が見られるか。
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