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ニートでも生活保護でも生きていけない現実『生活保護――知られざる恐怖の現場』

2013年7月23日 11時00分 (2013年7月27日 12時41分 更新)

『生活保護――知られざる恐怖の現場』今野晴貴・著/ちくま新書
極貧の末、餓死、自殺。数々の事例をあげながら本書で語られる生活保護の実態は、貰うべき人が貰えず適切な保護を受けることができていない機能不全の状態だった。「オニギリ食べた―い」と書きのこして餓死した50代の男性。「働かん者は死んだらいいんだ」「風俗ででも働け」受給者に浴びせられる数々の暴言。生活保護の抱える問題は不正受給だけではない。

親が死んで、仕事もなくて、お金もなくて、生きていけなくなったらどうしよう。半ニートの僕は、時々、そんなことを考える。でも、サイアク生活保護があるじゃないか! そこから再出発すればいい、と思って安心している。

しかし、『生活保護――知られざる恐怖の現場』を読んで、そんな安心感は吹き飛んでしまった。生活保護が受けられなくて、餓死、自殺。本書には、現代日本でナゼ?と思わずにはいられない過酷な貧困の実態が描かれていた。

著者は今野晴貴。若者の労働問題を考えるNPO法人「POSEE」代表を務め、毎年数百人もの労働・生活相談に携わってきた人だ。

例えば、こんな事件。北九州小倉区のJさん(52歳、男性)のお話。
アルコール性肝書障害や糖尿病を患ったJさん。タクシー運転手の仕事を続けられなくなり、生活保護を申請した。受給後、市の記録によるとJさんの主治医は「軽作業可」と判断したという。そこで市のケースワーカーはJさんの就労指導を始めた。その後、生活保護を辞退したJさん。当時の心境が日記に綴られている。

《4月5日》「体がきつい、苦しい、だるい。どうにかして。」
《日時不明》「せっかく頑張ろうって思っていた矢先に切りやがった。生活困窮者は、はよ死ねってことか。」
《5月25日》「小倉北のエセ福祉の職員ども、これで満足か。貴様たちは人を信じる事を知っているのか。3月、家で聞いた言葉、忘れんど。市民のために仕事せんか。法律はかざりか。書かされ、印まで押させ、自立指(ママ)どうしたんか。」
《同日》「腹減った。オニギリ腹一杯食いたい。体重も68キロから54キロまで減った。全部自分の責任です。」
《5月26日》「人間食ってなくてももう10日生きてます。米食いたい。オニギリ食いたい。」
《6月5日》「ハラ減った。オニギリ食べた―い。25日米食ってない。」

日記はここで終わっている。およそ1ヶ月後、Jさんは餓死状態で発見された。
100円のオニギリすら、食べられないというのか。でも、なぜJさんは、一度は受けていた保護を辞退したのだろう。

事件の後、主治医は「働ける」と判断した文章は書いていないと抗議した。著者は、行政が受給者を保護から追い出すために、病状調査を改竄し、辞退届も不本意に書かせた可能性が高いと考えている。

「違法行政」としか言えないような状態が、生活保護の現場にあるのだ。その原因の一つは、保護費の抑制をしたいという財政上の要請だ。

ライター情報

HK(吉岡命・遠藤譲)

文芸カルチャーマガジン「HK」の2人組ユニット。編集長の吉岡は元旅人。遠藤は89年生まれのフリーライター。雑誌ではシェアハウス、ホームレス、老人ホーム、現代葬儀事情など体当たりのルポルタージュ記事を書いています。文学から社会問題まで幅広く扱います。基本的になんでもやるのでお仕事のご依頼はツイッターまで。

ツイッター/@HKeditorialroom

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