シベリア抑留:開始68年 救済されない兵士たち

毎日新聞 2013年08月20日 02時33分

 ◇給付金 旧満州、北朝鮮は除外

 第二次大戦後のシベリア抑留が始まってから23日で68年を迎える。2010年成立のシベリア特別措置法により、特別給付金が支給されたが、支給対象は旧ソ連とモンゴル内の抑留者に限られ、ソ連の支配地だった旧満州(現中国東北部)や北朝鮮などに留め置かれた人たちは救済されなかった。「同じように抑留されたのになぜ」と法の不備を訴える声が出ている。【青島顕】

 北朝鮮に抑留された東京都新宿区の小室鐵雄(てつお)さんは、支給を認められないまま11年4月に88歳で亡くなった。家族によると、小室さんは引揚証明書などをもとに申請書類を作り、病身をおして役所に行ったが受け付けられず、肩を落としていたという。

 平壌で終戦を迎え、1947年までソ連が管理した平壌郊外の三合里収容所などで宿舎の改築・改装に従事させられた。延べ3万人が収容された三合里収容所は途中から病院施設になり、病弱で強制労働に耐えられなくなった元兵士らがシベリアから送られてきた。伝染病などで1400人以上が死亡した。

 小室さんら施設管理の元兵士や陸軍病院看護師だった女性ら数百人は、厳しい労働を強いられる一方で、ソ連国内に送られずに留め置かれたため、特措法の対象にならなかった。食糧の配分などを担当した東京都葛飾区の保富雅介(やすとみまさすけ)さん(88)もその一人。「同じ抑留者。一緒の扱いでいいはずなのに」と訴える。

 「シベリア抑留全史」を今月出版した民間研究者、長勢了治さん(63)は、北朝鮮、中国東北部、サハリン、千島列島などに侵攻したソ連に抑留された「現地抑留者」について「何人抑留されたか実態は分からないが、給付金が支給されなかったのは法の盲点、不備といえる」と話す。

 また、特措法は日本人のみを対象にしており、台湾、韓国、朝鮮など外国籍の旧日本兵にも給付金が出ていない。当事者や支援者は新たな立法での救済を求めている。

 ◇シベリア抑留と特別措置法

 第二次大戦後、旧ソ連は旧満州などにいた日本の軍人・軍属、民間人約60万人をシベリアなどに抑留し、使役した。最長11年に及び、食糧不足や寒さで約6万人が死亡したと推定される。2010年6月に議員立法で特措法が成立し、日本政府は生存者に25万〜150万円の特別給付金を支給した。総務省によると、支給対象は6万8847人、総額約193億円。

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