★政界キーマンたちの夏・麻生太郎
首相経験者にして安倍晋三首相の後見人、そして、「ポスト安倍」の筆頭候補でもある。それが麻生太郎副総理兼財務相の立ち位置だ。
「衆参ねじれ解消で、これからがスタートだ。一致団結してやろう!」
7日に開かれた自民党麻生派の懇親会。麻生氏は所属議員を前に気勢を上げた。27日からは横浜市内で派閥研修会を行う予定だ。
6月に「次に安倍晋三首相に仕掛けていきそうなのは、どう考えても麻生太郎だ」と語ったこともあり、党内では「ポスト安倍」に意欲的と見なされている。
麻生派幹部は「今はそんなこという時期ではない」と自制を促すが、足場固めは着々と進む。今秋には大島派との合併を模索しており、実現すれば総勢47人。岸田派(42人)を抜いて党内第3派閥になる。
運も味方する。
7月末の「ナチス発言」は野党から猛批判されたが、今月4日召集の臨時国会は、集中砲火を浴びる前に4日間で閉会した。米国が表立って問題視しなかったのも「米中央情報局(CIA)元職員、スノーデン容疑者の亡命問題などで、麻生発言まで問題にしている時間がなかった」(国際アナリスト)とされる。
だが、危うい失言癖が改めて注目されたのも確か。失言が2020年夏季五輪の東京招致に影響する可能性も否定できない。もし東京が落選すれば“戦犯”の1人に挙げられるのは確実だ。
麻生派議員は「ゴルフでもやっていたのか、とにかく日焼けして真っ黒。闘志は少しも衰えていない」と強調するが、失言が招いたピンチを脱したわけではない。
その影響もあってか、消費税増税をめぐり、9月9日からの20カ国・地域(G20)首脳会合までに明確にすべきとの持論を封印した。
とはいえ、「安倍首相にズバズバと物を言えるのは麻生氏だけ。失言にヘコまないで国家百年のために発言してほしい」(自民党長老)という声も根強い。
安倍内閣の重鎮として将来の禅譲に道を開くのか、それとも内閣のアキレス腱に終わるのか。そのカギは、本人の口にありそうだ。(田村建雄)