「愛媛県知事「橋下さんと同志」「新党結成に悲壮な決意」」の記事詳細：イザ！

　（４）橋下氏を政治の世界に導いた中山氏　ボタンのかけ違いを後悔に戻る【「橋下徹」を語る】（５）中村時広・愛媛県知事

　橋下さんが愛媛に来県したのは８月下旬だった。

　昨年１１月の大阪市長当選直後、「初登庁まで２週間あるので愛媛に行きたい」と電話があったが、就任準備で忙しく見送られた。今回も多忙を極める中での２泊３日で、「日本維新の会」と連携する「松山維新の会」主催のフォーラムで対談したほかは、行き当たりばったりの行程だった。

　宇和島市内の旅館に泊まって酒を酌み交わし、翌日は魚や真珠の養殖、段々畑などの１次産業の現場を見学、道後温泉で友情を温めた。橋下さんにとって愛媛は、リフレッシュする場所なのだと思う。

　松山市長時代に取り組んだ市の窓口改革や能力主義システムの導入などにも興味を抱いてくれた。「大阪市の窓口も市民本位のものに変えたい」と。養殖漁業や段々畑は新鮮だったようで、「大阪だとこういう現場には出合えない。勉強になる」とも。広く政治を考えるにも現場を知る必要性を実感されたのだろう。

　◆地方分権で共闘

　橋下さんとの出会いは、平成２１年の衆院選目前。主要政党のマニフェスト（政権公約）は地方分権について無策であり、地方政治家がリスクを負って突き上げるべきだという憤りを共有して「首長連合」を結成したことに始まる。

関連記事

• 橋下氏には「立場に恋々としない突進力…
• 橋下維新、なぜ大阪に固執するのか

記事本文の続き　橋下さんは当時から、自己保身のかけらもなく、正しいと思えば信ずるままに行動を起こそうとした。その勇気に共感した。

　国政と地方政治は、お互いを尊重し、役割分担をする水平思考が必要だ。しかし、国会議員の大半は、政党の地方組織を選挙のための下部組織としてしか捉えていないのではないか。

　国民に負担を強いるならば、主要政党は国会議員の大幅削減、世襲制限など先の公約で示した身を削る改革を先にやるべきだ。公約をほごにした政党に「日本維新の会」が掲げた定数削減を批判する資格はない。

　国・地方の役割分担の明確化も、わが国の統治機構問題に直結するテーマだ。領有権の問題や原発問題という国政の重要課題にも、国会議員には票のために耳ざわりの良いことしか言わない「自己保身病」が蔓延（まんえん）し、国民との距離は離れているのではないか。

　必要なのは、重箱の隅をつつくような批判ではなく、国政に対する覚悟と約束を実現する行動力、機動力だろう。覚悟を持った地方政治家の決起と突き上げも必要になる。

　◆自己保身と決別

　日本維新の結成も、言えばたたかれ、動けば潰しにかかられる中、橋下さんからは自己保身と決別した覚悟と悲壮な決意が伝わってくる。既成政党や国会議員が責任ある仕事をしていれば、橋下さんがリスクを覚悟で行動を起こす必要もないし、国民の期待も生まれない。橋下さんの国政選挙出馬は理想論だろうが、首長の責任を負いながら国政に向きあうのは並大抵のことではない。

　僕は松山維新や「愛媛維新の会」と基本的な考え方は一致しているが、知事の立場上、直接のメンバーではない。でも、政治の欺瞞（ぎまん）、限界を見過ごさないことを共有し、変えよう、そのためのリスクはいとわないということでは橋下さんと同志であるし、ピンチになれば助け合う「友、遠方より来る」の仲だと思っている。＝おわり

　【プロフィル】なかむら・ときひろ

　商社勤務、愛媛県議を経て、平成５年、日本新党から衆院初当選（１期）。松山市長３期目の２２年に愛媛県知事選に出馬し、当選。先月２日に政治塾「えひめ志高塾」を開講した。５２歳。