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【韓国の元徴用工訴訟】 新日鉄住金、敗訴確定時に賠償 戦後補償に影響も


  新日鉄住金に損害賠償を求めた裁判で、判決を前に拳を掲げる原告ら=7月、ソウル高裁前(共同)
 朝鮮半島が日本の植民地だった時代に徴用され強制労働させられたとして韓国人4人が損害賠償を求めた訴訟で、被告の新日鉄住金(旧新日本製鉄)は韓国最高裁で敗訴が確定した場合には賠償に応じる意向であることを18日、明らかにした。

 日本政府は、1965年の日韓請求権協定で韓国人の個人請求権問題は消滅したとの立場から「完全、最終的に解決済み」としている。新日鉄住金の方針は民事訴訟とはいえ政府判断と異なり、半世紀近く続いた日韓両国の戦後補償処理に影響を与える可能性がある。

 ソウル高裁は、7月10日に韓国人4人に請求通り計4億ウォン(約3500万円)の支払いを命じる判決を出した。戦後補償問題で韓国の裁判所が日本企業に賠償を命じた初めての判決。新日鉄住金は判決を不服として最高裁に上告したが、判断が覆る可能性は低いとみられている。同社は「最高裁で敗訴が確定した場合は、世界規模で事業展開する企業として賠償に応じざるを得ない」としている。

 新日鉄住金は、個人請求問題に対する政府判断に基づき最高裁判決前の和解には応じない方針だ。一方、最高裁で敗訴が確定した場合に賠償を拒めば、韓国内の資産の差し押さえなど強制執行に踏み切られる可能性が高いため、賠償に応じる。

 7月30日には韓国の釜山(プサン)高裁が三菱重工業に対し、元徴用工の韓国人への賠償を命じる判決を出した。同社も判決を不当として上告審で争う方針。和解する予定はないといい「勝訴すると信じているが、万が一敗訴が確定した場合は、外務省や経済産業省と対応を協議する」としている。

 新日鉄住金、三菱重工業のほか、機械メーカー不二越も同様の訴えを起こされており、今後も賠償に応じる動きが続く可能性がある。

懸念強める日本政府 「重大、深刻な影響」 

 日本政府は、韓国の元徴用工の賠償請求権について消滅したとの立場を堅持している。このため新日鉄住金が韓国での訴訟で敗訴が確定した場合に元徴用工への損害賠償に応じる意向を示したことに関し「仮にこうした事態に追い込まれれば、日韓関係全体に重大かつ深刻な影響を与えかねない」(政府筋)と懸念を強めている。

 戦後の日韓関係は、植民地時代の個人請求権問題を決着済みと位置付けた1965年の日韓請求権協定の上に成り立っているというのが日本側の基本認識だ。日本政府高官は「決着済みの戦後補償問題を蒸し返せば日韓関係の土台が揺らぐ。協定を無視するような韓国の一連の司法判断は理解に苦しむ」と不快感をあらわにする。

 ただ韓国の司法当局を相手とする問題だけに、有効な手だては見当たらないのが実情だ。日本と同様に、韓国でも司法権は行政権から独立しており、韓国政府に不服を申し入れるわけにはいかないためだ。外務省幹部は「どのような結果になるにせよ、表だって韓国の司法判断をとやかく言うことは、日本政府の立場からはできない」と指摘する。

 韓国裁判所の強制執行命令に基づく財産差し押さえなどの恐れがあることから、新日鉄住金に賠償金支払いを思いとどまらせるのも困難とみられる。差し押さえがあった場合、日韓請求権協定の明白な違反と見なして対応策を取る案もあるが、最高裁の和解勧告や判決に基づき企業が支払いに応じるケースでは協定違反と断定するのは難しい側面がある。

 今後の政府対応は外務、経済産業両省を中心に検討を進めるものの、当面は静観せざるを得ない可能性が高い。

企業イメージ悪化を懸念 影響配慮し苦渋の選択

 朝鮮半島の植民地支配をめぐる戦後補償問題で、政府見解に沿って対応してきた日本企業。韓国最高裁で敗訴する恐れが強まり、企業イメージの悪化や本業への影響に対する懸念が、賠償に応じる苦渋の選択を迫っている。

 「すでに解決した問題なのにこんな判決が出るとは信じられない」。ことし7月、ソウル高裁の判決内容を聞いた新日鉄住金幹部は驚きを隠さなかった。同社は直ちに韓国の最高裁に上告する方針を決めた。

 それでも、新日鉄住金は、現実的には敗訴した場合の対応を冷静に判断せざるを得ない。問題がこじれると企業イメージが悪くなるのは不可避。韓国で生産拠点を保有しないものの、賠償を拒んで売掛債権などが差し押さえられれば本業に影響する恐れがある。

 同様に韓国の高裁で賠償を命じられた三菱重工業は、韓国でかつて人工衛星の打ち上げなど大規模な事業を手掛けたが、工場などの生産拠点はない。現地法人が規模の比較的小さい事務所を構えるだけだ。敗訴の確定で固定資産が差し押さえられても「事業にはほとんど影響ない」(広報部)とみるが、差し押さえ対象の範囲がどこまで広がるか、影響が読み切れない部分も残る。新日鉄住金の判断を受け、あらためて対応を検討することになりそうだ。

(共同通信)

2013/08/19 14:05

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コメント

いつまで誤報を流してるんですか?

投稿者 匿名 : 2013年08月19日 22:57

この記事が言わんとしている論理では、一国の裁判所の判段が国際的な協定や協約よりも優先されることになり、国際政治そのものが成り立ちえないことになる。それをあたかも新日鉄住金という一企業のコンプライアンスの問題であるかのように矮小化して報道するのは、報道記者としての常識が欠如しているとしか言えない。こういう非常識な報道を垂れ流すことは報道機関としての存在意義を問われるほどの大問題であると強く指弾したい。

投稿者 寺田 博人 : 2013年08月19日 22:53

新日鉄住金がプレスリリースで報道内容を否定してますが。どこの捏造ですか?

投稿者 シナニュース? : 2013年08月19日 21:30

二国間の条約の規定に対して、あるいは両国政府が尊重してきた解釈に対して、一方の国の司法当局がそれを覆す判断を下すということがどうして可能なのか、国際法の専門家に伺ってみたいものだと思います。もしそれが可能であれば、条約の批准は立法権だけではなく、司法権にも帰属するものとなるでしょう。また韓国司法当局の判断が不適切であると思えば、国際司法裁判所への提訴も可能なのではないでしょうか。在日韓国人の法的地位協定とも連動して成立した請求権協定ですが、日本企業も、総会屋に応接するように、韓国司法の判断への対応を迫られているのかも知れませんね。

投稿者 トンキン湾握亞ライン : 2013年08月19日 20:59


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