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    かけはし2012.年4月2日号

官民労働者の連帯で権利を守れ

橋下・維新の会の組合つぶしに反撃を
教育・職員基本条例に反対する
公務員バッシングを許さない


 【大阪】3・6労働基本権を守ろう・官民連帯集会が集会実行委員会(南大阪平和人権連帯会議、大阪東南フォーラム平和・人権・環境呼びかけ)主催で官民連帯集会が三月六日、エルおおさかでひらかれ、三〇〇人の労働者・市民が参加した。
 司会の中村吉政さん(南大阪平和人権連帯会議副議長)は、「カラスの鳴かない日はあっても、大阪市長がテレビに出ない日はない」と述べ、最近の週刊誌に、橋下の秘書長が後援会長の息子だという記事が載っていたことを紹介。
 大野進さん(南大阪平和人権連帯会議議長)は主催者あいさつで、二条例案(教育基本条例・職員基本条例)や施政方針演説で述べた地下鉄・バスの民営化、職員アンケート、組合適正化条例など一連の橋下手法を批判し、さらに「橋下は府労委の勧告後も違法な調査を継続し、現場にタクシーで乗りつけ関係書類を押収している。知恵を持ち寄りどうしたら倒せるか考えよう、五年前の公務員バッシングへの対応を教訓に今回は官民で共に闘おう」と呼びかけた。

労働基本権を
確立するために
 在間秀和弁護士(大阪労働者弁護団)が「公務員労働者と労働組合の労働基本権確立のために」と題して講演した。在間さんは、「興味深い新市長のあいさつ」と題した記事(毎日新聞昨年一二月一六日掲載)を引用し、「福祉は最高収益の投資。福祉は施恵ではなく市民の権利だ」とする新市長の言葉を読み上げた。この新市長は誰か。記事を書いた湯浅誠さんは、「あの人と似ていると思った方がいたかもしれないが、全然違う」と述べ、新市長がソウル市長の朴元淳氏であることを記事の最後に書いている。在間さんは、この市長と橋下氏の違いは何なのかと自問した(要旨別掲)。
 続いて三人からアピールがあった。大阪市労連の中原康夫さん(大阪市従業員労組副委員長)は、「今回の大阪市問題は〇五年の時よりたちが悪く火事場泥棒的だ。大阪市民の公共財産を奪い、公共の予算を市場原理に基づいて使おうとしている。アンケート調査実施でムダな金を浪費していることについては住民監査請求を、また損害賠償請求を考えている。現業の特殊勤務手当の協定があるが、見直しを言いだしており、現業賃金見直しも言ってくるだろう。チェックオフ協定は三月末で切れるので、組合費のみここからはずすといいだしており、団交を拒否するなら府労委に申し立てをするつもりだ。職員基本条例の相対評価で五%がDは絶対飲めない」と述べた。
 
橋下は知事時代
何をやったのか
 大阪府労連の川本富士夫さん(自治労大阪府職員関係労組委員長)は次のように述べた。「橋下氏は知事時代に何をやったのか。普通は止めたら功罪にふれて業績を検証するものだが、マスコミは何もふれない。橋下氏が大阪府でやったことは大阪市でもやるだろうから、手に取るようにわかる。男女共同参画センターなど五二団体の財団法人等への補助は経営補助から事業補助だけになり、事務所維持は自前でやれとなった。障害者ガイドヘルパーは廃止になった。中小企業の経営支援もなくなった。これがあまり府民に知られていないのは、実際の事業の多くは市町村がやっているからだ。賃金は全国最低」。
 「いいこと(?)はイルミネーション、WPCビルの購入。一応いいことは私立高校支援補助。私立高校支援補助は今年は八〇億円だったが、やがて三年生までいくと二二〇億円かかるから、財源続くかどうか。橋下氏は大阪府財政を黒字にしたと言われるが、緊急時のための二兆円の臨時債権をつかっていたのだから、借金をしてやっていたということだ。職員基本条例では相対評価Dを五%つけて整理解雇できるようにするためだ。また教育基本条例は教育に一層の格差を持ち込むもの。二条例を全国に広めるといっているから、是非大阪で止めねばならない」。
 大橋さゆりさん(労働者弁護団事務局長)は「労働者弁護団の賛助団体は八〇団体、半数は公務員労組。民と官間で非正規労働者問題など共通することが多くなっている。公務員が労働基本権を付与されたら、その関係の勉強もしなければならなくなる。橋下は弁護士から見るとおかしなことばかりだが、弁護士だから間違いはないと思われている。労働者弁護団もアンケート問題では二日間準備して二月一三日にアピールを出した。これから、公務労働・行政サービス、公務労働と民間労働について全体的な企画をするつもりだ。最近は弁護士の数が多くなって就職できない弁護士が出てきているし、なぜか労働弁護士も増えている。直接問題に触れて力を付けていきたい」と抱負を述べた。
 白木原雄さん(大阪東南フォーラム平和・人権・環境議長)の閉会のあいさつで集会を終えた。(T・T)

在間秀和弁護士の講演から

不当労働行為が明らかな
職員アンケート調査問題

 
全回答を強制
するやりかた
 私は今、大阪市職員労組・大阪交通労組の弁護士をしている。まず、大阪市問題の転機となった「労使関係に関する職員アンケート調査」の経緯を事実に即して詳しく説明したい。
 二月九日、橋下氏は署名入りの通知を出し、アンケートに答えるのは業務命令だ、きちんと答えなければ処分の可能性もあると述べた。アンケートは職員が一〇日にパソコンを開いたら届いていて、順番にチェックしていかないと次にすすめないようになっていて、一六日までの回答を指示していた。つまり、全回答を強制する形式だった。
 実は、二〇〇五年関市長のとき、ブレーンの上山眞一氏(大阪市の現特別顧問)が「職員アンケート」をやろうとしたが、事前通告してきたので交渉で撤回させた経緯がある。今回は、その余裕がなかった。一三日、大阪市労組連合会・大阪市従・大阪交通労組・大阪市水道労組が大阪府労委に不当労働行為救済申し立てをした。これら四労組は労働組合法の適用を受ける組合だからだ(市労連最大単組の大阪市職労組は地公法の適用を受けている)。
 アンケートは、 労働組合に参加したことがあるか、誘った人の名前、特定の政治家を応援する活動をしたことがあるか、特定の政治家へ投票を要請されたことがあるか、選挙で紹介カードを配布されたことがあるか、組合幹部は職場で優遇されていると思うか、組合に加入しているかなど、不当労働行為が明確なものばかりだった。
 一七日、大阪市は府労委に問題が持ち込まれたことを理由にアンケート調査の凍結を表明し、調査は市ではなく、第三者調査チームが行ったと言い訳した。さらに、三月二日、「三月中に府労委の結論が出なければ回答を廃棄」と表明。これは彼らの実質上の敗北宣言だ。府労委の第一回調査は三月一三日に行われる。

「大阪市問題」
とはなにか?
 現在大阪市問題としてあるのは、@労働組合事務所退去要請問題。これはいったん引いた上で市に責任追及する。市労連は来年度、事務所使用を求めて提訴することを決めている。
 A市庁内メール調査問題。この問題については最近裁判でもいくつか例があり、労働者側が勝っている。メールは、仕事中の電話と同じで、社会的には許容される範囲内だ。
 B「君が代」起立斉唱条例(府・大阪市で成立)。
 C「職員基本条例」・「教育基本条例」(府・大阪市議会で審議中)。
 D市営バス運転手賃金四〇%削減問題。一三九路線中一三六路線が赤字だからというのが理由。抗議を受け、橋下氏は段階的に削減すると変更。自分の給与も四〇%カットすると表明。橋下氏はよくても一般労働者が四〇%もカットされたら、生活できなくなる。
 E大阪交通労組の「市長選推薦リスト」捏造問題。これはガセネタであることを、特別顧問の野村弁護士も認めた。このネタを最初に報道したのは朝日放送(ABCテレビ)だった。ところで、野村以外の特別顧問の顔ぶれは例えば、堺屋太一・上山信一(慶応大教授)・山田宏(元杉並区長)・中田宏(元横浜市長)・古賀茂明(元経済産業省官僚)等であるが、特別顧問総勢一六人、ちなみに特別参与は三四人である。
 
彼の暴言には
根拠などない
 妄言を挙げてみると、?カジノを誘致し、子どもの頃から勝負心を養う?我が国の停滞の原因は……硬直した公務員制度?ギリシャを見よ。あんなののさばらしておいたら大変なことになる?日の丸・君が代反対教師・公務員は公務員辞めろ?弁護士会の言うことは日本で一番当てにならない(アンケート調査で抗議声明が出た後)?市民から白紙委任を受けている?震災によるがれき処理の受け入れを拒否しているのはすべて憲法九条が原因。これに加えて最近、九条改憲の国民投票に言及している。
 さらに、公務員労組は「国際競争」・「都市間競争」を勝ち抜くための障害だともいっている。そもそも「都市間競争」なんてあるのか。橋下氏の目的は、自分がやろうとしていることの障害になる公務員労働者の団結権そのものを否定することだ。彼は、弁護士だが憲法二八条(労働者の団結権、団体交渉権など)や労働組合法を知っているのだろうか。
 日本の公務員労働者の状況は世界と比べてどうだろうか。日本は公務員は多すぎると言われるが、人口比で見ると欧米諸国と比べてももっとも少ない。フィンランドなどは全人口の二〇%が公務員だ。人件費は高すぎるのか。高いのは高級官僚等だ。米国の大統領の年俸は二二〇〇万円(二〇〇〇年の通貨価値で)、英国首相は年俸一二〇〇万円(一九九八年)、英国の国会議員の年俸九〇〇万円、リバプールの市会議員年俸一五万円(?)だ。日本の首相は年俸四〇八〇万円(二〇〇〇年)、日本の国会議員は年俸二三〇〇万円(二〇〇一年、世界最高)だ。公務員賃金が高いというなら、なぜこれを問題にしないのか。

労働運動の存在
が試されている
 これからの課題は何か。この機会に是非、公務員労働者の二面性、すなわち公務員の「労働者性」と「公務」の特殊性を見直してほしい。憲法一五条(公務員は全体の奉仕者)の意味は、「労働者性」を否定するものではない。公務員は「公務員労働者」として「市民」といかに連帯するのか。つまり、どちらを向くのか、という視点を欠如させてはいけない。
 「公務員労働運動」はいかにあるべきか。戦後、官公労の運動が強かった頃、民間はここに寄りかかってきた。現在、公務員労働運動はもっと民間労働運動に目を向けなければいけない。官民の境界は少なくなり、共通項が多くなっている。民間労働運動といかに連帯するのか、考えてほしい。
 最後に一つ。「地方自治」はいかにあるべきか。日本の地方自治は「劇場型(観客型)」で、劇場型民主主義だ。それを、北欧のような参加型民主主義に変えていかなければいけない。地方分権一括法ができたとき、これは千載一遇のチャンスだと問題提起したが、あまり関心をもってもらえなかった。現在の地方自治は、市民である観客は面白ければ拍手し、だめならブーイングする。これを変えていかないと、パフォーマンスの得意なものが現れたら太刀打ちできない。
 橋下は義務教育の留年制まで言いだしている、わからない子には徹底してわからせるべきだと。子どもの実情、低学力の原因解明、それをやったときの結果の予想、そもそも教育はどうあるべきか、考えているのか。私たちは、団結権と官民連帯で、彼に憲法二八条、労組法、地方行政法、教育行政法を理解させねばならない。日本の労働運動の存在が試されている。(講演要旨、文責編集部)
 

3.9

TPPに反対する関西集会

日本でも世界でも支持は
1%、 %はNOだ

  【大阪】三月九日、協同会館アソシエで《TPP反対!3・9関西集会》が開かれた。
 最初に山元一英さん(全港湾大阪支部書記長)が、「TPPと言えば、一般的には農業の問題となってしまい、私たち労働者・市民・中小企業事業者にとってはどのような影響が出てくるのかあまり知られていない。『国鉄民営化』の中曽根から小泉に至る自民党政権は、市場原理(自由競争)で経済を成長させるという名目で、構造改革(規制緩和)を強行してきた。その結果、社会はどうなったか。格差社会である。TPPは、二四部門にわたって非関税障壁を取っ払い、自由競争をさせる社会をつくろうとしている。農民たちは起ち上がっているが、具体的なことが知らされない中で進められている。私たちは学習を深め、TPPを阻止する勢力を皆でつくっていきたい」と今回の集会の目的を語った。続いて、全農林労組近畿地本からの連帯のメッセージが紹介された。

米国に従属し
カネに群がる
 この後、三人のパネリストによるパネルディスカッションがあった。まず、コーディネーターの田淵太一さん(同志社大学商学部教授)が、次のように提起した。
 「TPPは、アメリカに従属する財界・大企業がお金に群がる、という点で原発と同じ構図である。TPPは(壊滅させられる)農業だけでも深刻な大問題だが、その他に労働、公共事業、郵政・保険、金融等がすべて開放させられる。その開放の手段にISD条項(毒薬条項)がある。これが恐い。日本が協定を結べば、これに反する国内の法律は無効にさせられる。しかも、日本の法律・制度・慣行等を、例えば米国の投資家・企業が気に入らない時は日本の政府を訴えることができるというものだ」。
 「環境・安全・健康は一切守られない。実際、カナダの環境規制は、米国の企業からこの条項を使って訴えられ、逆に賠償金を取られた。訴えを審議するのは(IMF傘下の)仲裁機関なので、米国は敗訴したことがない。韓国では今、大問題になっている(韓米FTA)。では、なぜ日本の政府や財界はTPPに加入したがっているのか。自分たちも、加入している他国に対し、この条項を使って米国と同じようにできるからだ」。
 「もう一つ、経団連の会長・米倉の思惑もある。彼の会社―住友化学は、ベトナム戦争の枯葉剤で大儲けし、現在は遺伝子組み換え作物市場を独占している米国モンサント社と提携している。TPPによって、遺伝子組み換え作物の表示義務がはずされ、住友化学は儲かるという仕組みになってくる。民主党は『大連立』によってでも、消費税とTPPはやろうとしている。橋下知事も最初からTPP推進の立場だ。結局、TPPは労働者・農民・中小企業事業者の共通の敵である。今日の学習会で、アメリカの国内にも反対する人たちが多いということを知ってほしい」。

アメリカでも
民衆は反対だ
 そのアメリカからは、NGO〈パブリック・シティズン〉から二人の講師に参加してもらった。まず、貿易担当のローリー・ワーラックさんが発言した。「投資に関わって言うと、企業は会社設立・経営、また労使紛争の場合も、その相手国の法律ではなく、TPPがつくったルールに従うことになる。企業が自分たちの利益を守るためだ。そして、これによって企業は、ベトナムの例のように海外進出しやすくなる。TPPのモデルとなっているNAFTAだが、これによって米国内では製造業の雇用が五〇〇万人失われ、メキシコでは農業が破壊された。また、金融に関してもその国の規制は禁止され、例えば日本の郵政・簡保に米国の企業が参入しやすくなる。公共企業の他、医療・医薬品、インターネット等、そして大切な食品安全についても同様なことが起こってくる」。
 「もう一つ、外国人労働者が、『TPPビザ』で入ってくると、底辺での競争を加速させる。このようにおかしなTPPを誰がもち込もうとしているのか。TPPの仲裁機関は、加盟各国の最高裁判所よりも強い権限を持っている。つまりこの機関を通して、一民間企業が国家を訴え、賠償金を取ることができるのだ。このようなTPPを積極的に進めているのはアメリカだが、それは政府・企業であって、国民が皆賛成しているわけではない』と発言した。続いて、ピーター・メーバードックさんも医薬品担当の立場から提起した。
 「巨大な医療・製薬会社が、世界の人々の命に関わる健康をコントロールしている。アメリカは知的財産権の保護を強化し、日本に対しても日本の医療・製薬のシステムを変えようとしている。彼らは秘密裏に交渉しており、結果だけが報告されている。現在の日本での『特許』の条件を変えさせ、米国企業が開発した新薬を高価で売り込み、利益を上げようとしているのだ。そのようなことをさせてはならない」。
 そして「安価な医薬品が手に入らなくなる世界の多くの人々の命を守るためにも、皆で団結してこのような動きには反対しなければならない」と訴えた。
 さらに武建一さん(連帯労組関西地区生コン支部委員長)は、「軍事大国アメリカから発信される情報からは、私たちはアメリカの国民の多くはTPPも先制攻撃も賛成しているのではないか、と思ってしまう。しかし、話を聞いていると、賛成しているのは一%の人達だ。TPPの中味を知って、運動の力にしていく。そして知らない人たちに宣伝して大きな社会運動にしていく。労働組合の役割は重要だ。私たちはこの問題を最初から取り上げて反対しているし、近畿二府四県の生コン関連の業者三二七社にも共闘を働きかけている。中小企業事業者とも一緒に取り組んでいきたい。市場原理主義は世界的に終わったといわれながら、アメリカは、なぜTPPか。それは、中東・ラテンアメリカでは不可能になったので、アジアの市場に活路を見いだそうとしているからだ。中国に対しては、日本を引っ張り出してきて、安全保障という性格をもっている。『恐慌』以降の歴史から何も学んでいないのではないか」と発言した。
 会場からの「アメリカの人々が反対しているのはなぜか」という質問に対して、ローリー・ワーラックさんは「?雇用が奪われ、賃金が下がる。労組の組織率の低下?輸入製品の安全性に対する懸念?仲裁機関で審査される(主権の侵害)?インターネットに対する規制への懸念を挙げ、議会でも反対している議員がいる」との答えだった。
 最後に、西山直洋さん(連帯労組関西地区生コン支部執行委員)から、TPP反対集会(四月一六日)への参加の呼びかけがあった。
          (努)

 


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