現在位置
ホーム(最新号紹介) > バックナンバー > 金曜アンテナ(一覧) > 金曜アンテナ(詳細)

金曜アンテナ

金曜アンテナ(2009/3/20)

カルデロンさん親子離別を決断
守られなかった「子どもの権利」


 日本で生まれ育った一三歳の長女を一人残して両親が帰国するか、それとも家族三人全員がフィリピンに強制送還されるか――法務省から厳しい選択を迫られていたフィリピン人家族、カルデロンさん一家が、先週一三日に、長女を日本に残し両親は帰国、という苦渋の決断を下した。
 父アランさんと母サラさんは、一九九〇年代初頭に他人名義の旅券で来日。九五年に長女のり子さんが誕生、二〇〇六年にサラさんが「不法入国」容疑で逮捕され、家族全員に退去強制令書が出された。家族は行政処分を取り消す裁判を起こしたが、〇八年九月に最高裁で棄却され、改めて「在留特別許可」を法務大臣に求めていた。
 昨年一一月から、のり子さんが通う中学校の同級生や保護者も協力して街頭署名が始まり、二万人を超える署名が集まった。取材も過熱し、BBCの報道がきっかけで、「国連人権理事会」が情報提供を日本政府に求めた。子どもの権利のための国連NGO「DCI日本」やアムネスティインターナショナルも「子どもの最善の利益」と「家族保護」を法務大臣に訴えた。二月末には埼玉県蕨市議会が全会一致で「カルデロンのり子さん一家の在留特別許可を求める意見書」を採択した。しかし法務省の頑なな方針は変わらなかった。「家族三人、一緒に日本で暮らしたい」という願いは拒絶され、三月九日には、父アランさんが東京入管に収容された。
 一三日の朝、のり子さんと母サラさんは最後の協議で東京入管に出頭した。約五時間後、弁護士が庁舎から出てきて語った。「のり子ちゃんの始業式を待って、四月一三日に両親は帰国、母サラさんの妹夫妻が蕨市内に引っ越してのり子ちゃんを養育する。いくつか案を提示したが、のり子ちゃんの意思を尊重し、彼女の在留を法務大臣が認めた上で、両親が納得して帰国の意思を表明するという、最後の希望も拒否された」。
 夕方六時前、霞ヶ関の会見場に憔悴し切った表情でカルデロンさん一家三人が揃って姿を現した。「私の在留は認められたけど、家族三人一緒ではないので、嬉しくないです。いつかまた家族一緒に日本で暮らしたい」。感情を押し殺して、のり子さんは呟いた。
「今回のケースは、日本政府が批准している自由権規約や子どもの権利条約に明らかに違反する」と阿部浩己・神奈川大学法科大学院教授(国際人権法)は指摘する。近藤敦・名城大学教授(憲法・国際比較法)も、「不法入国も査証の関係で頻繁に起こる。家族全員が在留特別許可されたケースも多い。最高裁判決と法務大臣の裁量では判断時の事情が異なる」と話す。現在、長期非正規滞在一七家族の在特を求めているNGO「APFS」の吉成勝男相談役は「今、在特を求めている家族は、バブル経済期に来日し人手不足の職場を支え、子どもが成長したケースがほとんど。在留特別許可の運用を早急に見直すべき」と言う。
 過去数年、在留特別許可件数は毎年一万人を前後しているが、一方で法務省は「不法滞在者」の摘発・送還を強力に推し進めてきた。今国会でも、出入国管理と在留管理を一元的に強化し、非正規滞在者や難民申請者を排除する入管法や住民基本台帳法の改定案が審議される予定だ。カルデロンさん夫妻の再入国や在留資格変更を求める取組みと同時に、政策として「在留特別許可制度」の運用を根本的に見直す時期に入っている。
西中誠一郎・ジャーナリスト

都立七生養護学校訴訟勝訴
性教育攻撃は「不当な支配」


 東京・日野市の都立七生養護学校(現・七生特別支援学校)の性教育に対する政治家介入の不当性を訴えていた訴訟の判決が一二日、東京地裁であり、矢尾渉裁判長は、都議らの行為を改定前教育基本法が禁じる「不当な支配」と認め、都議らと都教委に計二一〇万円の賠償を命じた。
 七生養護学校では、保護者らと連携、試行錯誤しながら性教育を実践し、高い評価を得てきた。しかし二〇〇三年七月二日の都議会で土屋敬之都議(民主)の質問に横山洋吉・都教育長(当時)の「七生養護の教材は極めて不適切。強く指導して参ります」と答弁した翌々日、土屋・古賀俊昭(自民)・田代博嗣(自民)の三都議が、都教委職員と『産経新聞』記者を伴い同校に押しかけ、養護教諭らに、「こういう教材を使うのはおかしい。感覚が麻痺しているよ」などと非難。都教委は教材を没収し、翌七月五日の『産経新聞』は「過激性教育」「まるでアダルトショップ」などとする記事を掲載した。
 さらに都教委は同年九月、同校の教職員を厳重注意し(校長は懲戒処分の上、降格)、性教育の年間指導計画の変更を強制。年度末には教員の大量異動も強行した。
 東京弁護士会は〇五年一月、都教委に対し教育への不当な介入をしてはならないと警告を行なったが、都教委は無視したため、同年五月、教員と保護者三一人が都教委と三都議、『産経新聞』を相手取り、計約二九〇〇万円の損害賠償を求める裁判を起こした。
 判決はまず、三都議の養護教諭らへの非難行為を「侮辱により教諭らの名誉感情を侵害。民法七〇九条の不法行為責任を負う」とした上、「七生養護の性教育に介入・干渉するもので、教育の自主性を阻害し歪める危険のある行為として、改定前教育基本法第一〇条一項の『不当な支配』に当たる」と明言。続けて「同行した都教委職員は、三都議の『不当な支配』から個々の教員を保護する義務があった」が、「非難する都議を制止せず、保護義務に違反した」とした。さらに、「(三都議が攻撃を始めた)〇二年一一月までは、都教委は七生養護の性教育を評価していた」と認めた上、「教員への事前の研修や助言・指導の機会を与えないまま都教委が厳重注意した行為」は「裁量権の濫用で、国家賠償法上違法」と断じた。
 だが、都教委による教材没収や教員の大量異動強行などと、『産経新聞』の報道については「『不当な支配』に当たるとはいえない」とした。
 判決後、原告側の児玉勇二弁護士は「教育内容への不当介入は許されないという判決は、教育史上、画期的だと思う」と述べた。一方、大原正行・都教育長は「主張が認められず大変遺憾。内容を確認し今後の対応を検討したい」とコメントした。
永野厚男・教育ライター

日米安保の「無効」を
確認求める訴訟始まる


「日米安全保障条約は、岸信介がCIAに買収されて結んだものであり、成り立ちからして無効」――。国を相手取り、日米安保の「無効」確認を求める裁判の第一回口頭弁論が三月四日、東京地裁で開かれた。
 同条約をめぐっては、過去に違憲訴訟が起こされ棄却されてきたが、今回問われるのは条約の効力そのもの。提訴したのは、埼玉県に住む会社員・長岩均さん(五七歳)だ。
 一九六〇年、日本側岸信介首相、米国側アイゼンハワー大統領(ともに当時)により結ばれた日米新安保条約。だが近年、米公文書館が情報解禁した結果、当時の日本側全権委任者である岸がCIAに買収されていたことが判明している(ティム・ワイナー<『ニューヨーク・タイムズ』記者>著『CIA秘録』などに詳細)。日本ではこの事実を一部週刊誌を除き、大手メディアが軒並み黙殺している。
 昨年、その事実を知ると同時に、「日米安保の条約としての正当性を疑うようになった」と言う長岩さん。たしかに日本が一九八一年八月に発効させた条約法条約(「条約法に関するウィーン条約」)の第五〇条には「買収された条約は無効」と明記されている。長岩さんはこれを最大の根拠に「安保無効」を主張。さらに日本が七〇年以降、同条約を一年ごとに自動更新している点にも注目し、「一年ごとに更新するならば、一年ごとの見直しも当然なされるべき。買収の事実が発覚した以上、条約は見直されるだけの十分な根拠がある」との主張も展開している。
 長岩さんは二月二日、訴状提出と同時に「日米安保条約無効訴訟の会」を設立。訴訟参加費二〇〇〇円を払えば参加でき、すでに約二〇人が参加を希望しているという。第二回口頭弁論は四月二二日。
古川琢也・フリーライター

岩国で初の騒音訴訟
米軍再編に挑戦


 全国で三沢を除き、これまで米軍基地を抱えた自治体として唯一米軍機による爆音訴訟が起こされていなかった山口県岩国市で三月七日、基地周辺住民約四八〇人が加わった「岩国基地爆音訴訟原告団」(津田利明団長)が結成された。二三日に山口地裁岩国支部に提訴する予定だが、同市では米軍再編に伴う二〇一四年までの米海軍空母艦載機移転をめぐって根強い反対運動があり、裁判が与える影響が注目される。
 二月末に福岡高裁那覇支部が下した「新嘉手納爆音訴訟判決」では、地裁判決を覆して「うるささ指数」が七五以上のエリアが「違法」とされ補償が認定。岩国市では、艦載機移駐に反対する「岩国爆音訴訟の会」がこの数値以上のエリアに住む約一万七〇〇〇世帯の住民に原告参加を要請。艦載機移転が強行されれば現在も深刻な米軍機と自衛隊機による爆音被害がさらに深刻化し、「違法」状態のエリアが拡大するのが確実なため、移転が安易にできなくなる可能性もある。
 さらに訴訟では、全国の爆音訴訟ですべて退けられている夜間・早朝の飛行差し止めと将来の被害に対する損害賠償の請求と並び、「空母艦載機部隊の岩国移転差し止め」も請求。市民の「今以上の基地機能強化には反対」という世論を受けて、米軍再編を正面から争う構えだ。
田村順玄・岩国市議

田母神氏に平和的生存権
脅かされたと慰謝料
2万円求める裁判始まる


 田母神俊雄・前航空幕僚長に対し、二万円の慰謝料を求める裁判が一〇日、東京地裁で始まった。田母神氏は、侵略戦争を正当化した論文を発表後、退職金七〇〇〇万円(推定額面)を受領して定年退職している。
 原告の長岩均氏(会社員・五七歳)は、「政治家ならば、選挙の洗礼を受けますが、憲法否定・脱法行為を示唆する言動を繰り返した自衛隊幹部に対しては裁判に訴えるしかない。どのような思想や歴史観を持とうが個人の自由。地位を利用した言動だから問題なのです」と言う。
 田母神氏は小松基地司令時、小松市の「どんどんまつり」では、特設ステージに基地司令を登壇させないと行政が決定したのを無視して、制服着用の上、副官を伴って会場に押しかけた。また、統合幕僚学校長在任中に、「脱専守防衛教育」「文民統制蹂躙教育」「自衛隊の先制攻撃教唆」「日本国憲法体制転覆教唆」(訴状より)を行なっている。一連の言動により、「平和的生存権を脅かされた」ことに対する慰謝料請求である。
 田母神被告は不適法却下を求めているが、その理由を答弁書で「(原告が指摘した行為は)職務行為または職務執行に社会通念上関連する行為としてなされたものである(中略)被告に故意又は重大な過失があった場合にのみ、国から求償権の行使を受けるというのが法律の建前」としている。原告支援者の中からは、「職務行為で行なったと認め、訴えるなら相手は国だということだから、国家賠償請求に値するのではないか」との声も出始めている。
林克明・ジャーナリスト

伊達判決50周年の今年
砂川事件の情報公開請求


「日米安保条約にもとづく米軍駐留は、憲法九条に違反」という砂川事件伊達判決五〇周年記念日を前にした五日、砂川事件の元被告土屋源太郎さんと、「砂川事件の情報公開を請求する会」は、外務省・内閣府・最高裁判所に対し、それぞれ「開示請求書」を提出し、関係文書などを明らかにするよう求めた。
 外務省では、ほぼ全員が省内に入ることができたが、内閣府と最高裁判所では、入場制限が加えられた。対応がひどかったのは内閣府で、中に入れたのは三人のみ。開示請求後は参議院議員会館で「『伊達判決』五〇周年記念院内集会」を開催。「請求する会」は、米公文書館で五〇年前の、米大使と最高裁長官、外務大臣が密談していたことを示す文書を新原昭治さんが昨年四月に発見したことが報じられてからの一〇カ月にわたる取り組みを報告した。参加した山内徳信・辻元清美(社民)、赤嶺政賢・井上哲士(共産)、川田龍平(無)ら各議員は、情報公開を求める運動を支持すること、国会でも取り上げていくことを確約した。
 元被告の土屋さんと坂田茂さんが、半世紀前を思いおこして、自らが闘った砂川闘争の思い出や、逮捕・勾留・起訴その後の裁判闘争のことを語ると、立川自衛隊監視テント村の加藤克子さん、砂川を記録する会の星紀市さんや、許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さん、沖縄・日本から米軍基地をなくすための運動の平山素生さん、ジャーナリストの斎藤貴男さんなど、多くの参加者が共感・連帯を表明。開示請求が通らない場合には提訴して闘い抜くこと等を確認し閉会した。
塚本春雄・砂川事件の情報公開を請求する会

沖縄・国有林の検討委
保全管理委設置を答申


 沖縄北部国有林の取り扱いに関する検討委員会(座長・篠原武夫琉球大学名誉教授)が三日、那覇市で開催され、北部訓練場(米海兵隊ジャングル戦闘訓練センター)の返還予定地の八〇%を占める国有林(約三三七二ha)を「やんばる森林生態系保護地域」に設定し、その保全管理のための委員会設置を九州森林管理局長に対して答申した。設定理由として「面的な広がりをもった原生的な天然林として……山原や琉球列島を特徴づける希少種や固有種が数多く見られ、多様な生態系を有している」と述べている。
 同検討委は、一九九六年の「沖縄施設・区域特別行動委員会(SACO)」の最終報告に基づいて返還される国有林の取り扱いについて、学識経験者や地元関係者らが委員となり九七年九月から九回に及ぶ会合で議論を重ねてきた。返還地を林業等に利用したいという地元要望も含め丁寧に話し合う中で、返還地全体を、保護林の中でも最も保全のレベルの高い森林生態系保護地域とすることを、検討委の総意として提言した意義は大きい。
 保護地域はコアエリア(保存地区)とバッファゾーン(保全・利用地区)から成るが、バッファゾーンはコアエリアを守るためのものであり、利用はその外側の森林で行なうべきである。保護地域が孤立した形になっているため、今後、民有林も含めた「緑の回廊」として繋げていくことが必要、などの意見が出され、今後の保全管理委員会の課題とされた。
 ただしこの計画は、返還が実現しなければ絵に描いた餅だ。米軍が返還条件としているヘリパッド移設は地元住民、県民の反対に遭って膠着状態に陥っており、米軍は無条件で返還すべきである。
浦島悦子・フリーライター


土壌汚染地に強引移転
理科大に学生ら大抗議


 私立理系大学の名門として知られる東京理科大学(東京都新宿区)。昨年九月以降、大学経営側に対する学内での抗議活動が拡大している。というのも、大学が総費用三五〇億円以上をかけ、東京都葛飾区が所有する土壌汚染地を購入して金町キャンパスとし、主要学部を移転させることに対して多くの教員や学生が反対しているからだ。
 移転予定地はそもそも三菱製紙工場を現UR(都市機構)に払い下げた土地。土壌汚染のため当時、土地改良したが、昨年から今年二月にかけた区の再調査で、同じ場所から新たに基準値を超える鉛とヒ素が検出されている。
 理科大前評議員の亀田光昭科学技術振興会理事長は「川に挟まれている水分の多い土地のため、土を盛っただけでは改良できない。地下の汚染が表層に上がってくる。五月に改定予定の土壌汚染法の新基準にかかれば、あの土地に建物を建てることはできないだろう」と指摘する。
 今年二月二六日には、一部と二部の工学部と理学部の教授総会で、金町キャンパスで教育と研究はしない旨の決議がなされた。さらに、工・理・理工学部の教授総会で、金町移転を強行しようとしている竹内伸学長に対する不信任決議がなされ、経営学部の同会も賛成している。
 また、三月一一日には学生有志らが集会を開き、汚染土壌の他、移転により通学アクセスが低下することなどを検証し金町キャンパス取得白紙撤回などを決議。さらに一三日には、大学評議員会(定員七二人)が土地購入の賛否の決議をしている最中、建物前に教員たち約七〇名が集まり、抗議のデモをした。
 しかしながら大学の学長選考規定にリコール規定がないことを理由に、移転計画は粛々と進んでいる。大学評議会は予定通り、賛成多数で購入を決議。葛飾区との契約は三月二六日にされるというが、このまま進めれば将来に禍根を残すだろう。詳細は東京理科大学新聞会URL http://tuspress.jp/「日本の理科教育を考える会」URL http://rikadai.seesaa.net/のweb参照。
平井康嗣・編集部


コラム



ベーシック・インカム実現めざし活発な議論



「『派遣切り』など雇用の確保が厳しくなっているいまの時代には、雇用がなくても所得を保証するベーシック・インカム(BI)の考え方が重要」。そう語るのは評論家の関曠野さん。東京・江戸川区で8日、「生きるための経済 なぜ所得保証と信用の社会化が必要か」と題する講演会が行なわれた。労働問題、福祉、教育、環境など複雑化した現代の社会問題への包括的な解決の糸口として、BIの意義を探るべく、「ベーシック・インカム・実現を探る会」が主催したもの。
 会場発言では、福祉施設に働いているという女性から「生活保護がセーフティネットとして機能していない。捕捉率が低いし、自立支援の名の下に、受給している人への差別・排除がある。BIを待ちわびている」と現場からの熱い要望が寄せられた。本誌3月6日号のBI特集にも執筆した小沢修司・京都府立大学教授からは、「BIですべてが解決するわけではない。どう組み合わせていくかが大事」と、実践的課題が提起された。BIの導入をマニフェストにとりいれる田中康夫・新党日本党首や、農業への導入の利点を指摘した曽我逸郎・長野県上伊那郡中川村村長なども発言。実現をめざす積極的な議論が繰り広げられた。   文/山村清二・編集部 写真/フォーラム・スリー


ジェンダー



【国会】参議院予算委員会で鰐淵議員が選択議定書について質問 3月9日
 参議院予算委員会で9日、公明党の鰐淵洋子議員が、国連女性差別撤廃条約選択議定書の政府の取り組み状況について質問した。橋本聖子外務副大臣は「真剣かつ慎重に検討していきたい」と、これまでの主張を繰りかえしたものの「今年は節目の年にあたり、早急に選択議定書を批准すべしとの要望が様々な団体から寄せられてきている。要望をしっかりと認識をしながら引き続いて検討を進めていく」と、これまでより前向きの見解を示した。
 鰐淵議員は、「OECD加盟諸国で批准していないのは日本とアメリカだけ。オバマ大統領が批准すると公言しているので、今後我が国の動向がさらに注目される。一刻も早く批准すべき」と、麻生太郎首相に前向きの対応を求めた。


【選挙】千葉県知事選挙立候補予定者に公開質問状 3月4日
 12日に千葉県知事選挙が告示となり、森田健作、八田英之、西尾憲一、白石真澄、吉田平の5氏(届け出順)が立候補を届け出たが、それに先立つ4日、「候補者の政策を知る会」(表弥生代表)が県庁で記者会見し、この5人への公開質問状への回答を公表した。
 質問は27項目あり、二者択一式。白石氏は個々の質問には答えず一括回答した。森田氏は、当初「決戦を前に準備が大変な中、事務所の物理的な都合で、個々に対応しきれない」と拒否してきたが、4日の記者発表の後に回答が届いた。
 この回答の中で、森田氏の男女共同参画政策についての後ろ向きな考えが鮮明になっている(URL http://chibatiji.exblog.jp/)。同氏は、「女性専用外来」については「存続させる」、DV対策については「被害者の自立支援のために、住宅支援を含め、財政援助をする」としたものの、「子ども人権条例を作る/作らない」については無回答、「男女混合名簿を見直す/推進する」では「見直す」。「男女共同参画条例」については、「男らしさ、女らしさを生かし、男女の役割分担を尊重した条例をつくる」を選択。「子育ては、主に母親がする方が望ましい/父親も育児休業をとって、子育てに参加すべきである」では、前者を選択して「母親には母親としての子育てがあり、父親には父親としての子育てがある」などとコメント。「パパ・クオータ制を推進する/しない」では無回答であり、上記について回答した他の候補者全員が前向きだったのに対し、一人だけ後ろ向きだった。同氏は、前回選挙時「男らしさ、女らしさがなかったら、どうするのですか。後はオカマだけですよ!」と発言しており、「バックラッシュ候補者」であることは変わらないようだ。

協力/mネット・民法改正情報ネットワーク、現田正義


国際短信



イラク
クルド地区に
イスラエルが「飛び地」を画策


 イラクからの分離・独立の気運が高まっているクルド地区で、イスラエルが影響力の拡大を図っている。旧フセイン政権時代に弾圧されたことからクルド人は親米・親イスラエルの傾向が強く、すでに独自の民兵組織・ペシュメルガはイスラエルの諜報機関であるモサドによって訓練されている。
 同時に最近目立っているのは、イスラエル国内のクルド系ユダヤ人やイランから亡命してきたユダヤ人がクルド地区のモスルやニネヴェにあるユダヤ寺院を「巡礼」という名目で訪れ、そこで土地を購入したり、キリスト教徒を脅迫で追い出すなどしてそのまま住み着いてしまうケース。これにはモサドの工作員も関与しているとされ、息子がユダヤ教徒と結婚するなど親イスラエルの姿勢で知られるタラバニ大統領率いる「クルド愛国同盟」も、裏で協力している。イスラエルは将来、クルド地区を「飛び地」として確保する狙いがあるが、国内のスンニ派はこれに対しクルド人地区の「独立」と並んで強い警戒感を抱いており、今後政治問題化する可能性がある。
編集部

マカオ
マカオに忍び寄る
独裁国家・中国の弾圧


 中国のマカオ特別行政区立法会でこのほど可決された「国家安全維持法」(治安維持法に相当)をめぐり、各界から「言論、表現の自由を侵害する」という憂慮する声が高まっている。
 ボルトガルの植民地だったマカオは、1999年に中国に返還。外交と国防以外をマカオ市民の自治に委ねる「一国家二制度」が採られているが、中国政府が制定を狙っていた「国家安全法」により、中国国内に倣った治安立法を定めることが予定されていた。
 この点は同じく「一国家二制度」を採る香港とも共通するが、香港では董建華行政長官時代の2003年に国家安全条例を強行しようとした際、反対する市民が50万人デモで抗議。これが董長官の辞任にもつながった。後任の曾蔭権行政長官は「任期中には制定しない」と表明しており、香港は当面の危機から回避されている。
 一方、マカオは民主派議員が僅か2人。民主新マカオの呉國昌議員らが「法案はグレーゾーンが大きく、恣意的弾圧を招く」と反対したが、賛成多数で政府案が可決された。法案審議を取材しようとした香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』のフォトジャーナリスト・王智強氏が繰り返し入境を拒否されるなど、早くも悪影響が出始めている。このため、国際記者連盟では、事態を注視するコメントを発表した。
ジャーナリスト 稲口仁


今週の裁判予定



協力/NPJ


3月24日(火)
原爆症認定集団訴訟(東京2次訴訟)
13:30~ 東京地裁 522号法廷
※裁判後、弁護士会館10階1007号室で報告集会開催予定
事件内容:1945年8月6日に広島で被爆した被爆者及び8月9日に長崎で被爆した被爆者(いずれも直爆被爆者のみならず、いわゆる入市被爆者・遠距離被爆者を含む)で、提訴時に東京都内在住者が、「原爆症」認定申請の却下処分の取り消しと損害賠償を厚生労働大臣および国に対して求めた訴訟
期日裁判の内容:原告本人尋問


3月26日(木)
根津公子さん・河原井純子さん停職処分取消訴訟
14:30~ 東京地裁 606号法廷
事件内容:卒業式・入学式等において君が代斉唱時に起立しなかったために受けた6カ月の停職処分の取り消しを求めた訴訟
期日裁判の内容:判決
日の丸君が代強制反対裁判 ~東京「日の丸・君が代」処分取消し訴訟第1次訴訟
13:30~ 東京地裁 103号法廷 
※傍聴抽選予定。詳細は近藤徹・原告団事務局長(携帯:090-5327-8318 メールアドレス qq947sh9@vanilla.ocn.ne.jp)まで。裁判後、報告集会あり
事件内容:都教委が出した10.23通達直後の卒業式・入学式等において、職務命令に従わなかったとして2004年に懲戒処分を受けた都立学校の教員173名(元教員含む)が、懲戒処分の取消し及び慰謝料を請求した訴訟
期日裁判の内容:判決
タクシー運転者から家族を奪うな!~運賃値下げ誘導通達の違法性を争う訴訟
13:30~ 東京高裁 817号法廷
事件内容:国交省が発出した、タクシー運賃を安値誘導しようとする通達によって精神的苦痛を受けたタクシー運転者らが、国に対して慰謝料を請求した訴訟の控訴審
期日裁判の内容:判決
北海道NTTリストラ訴訟
13:10~ 札幌高裁 2号法廷
事件内容:NTTグループがリストラのため業務を100%子会社に委託し、NTTを退職した従業員を再就職させようとしたが、それに応じなかったため遠隔地へ配転を命じられた労働者が、配転無効確認と慰謝料を請求した訴訟の控訴審
※現在は慰謝料のみの請求
期日裁判の内容:判決
中国海南島戦時性暴力被害訴訟
15:00~ 東京高裁 424号法廷 ※傍聴券配布。裁判後、報告集会あり
事件内容:日本軍占領下の海南島で日本軍によって行なわれた性暴力の被害者として、海南島の少数民族(黎族、苗族)の女性8人が、日本政府を相手に起こした訴訟の控訴審
期日裁判の内容:判決


詳細はhttp://www.news-pj.net/npj/npj-cal.html

一覧に戻る



編集長ブログ

編集長のコラムを公開しています。

きんようブログ

社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

おしらせブログ

購読中の方や書店様向け情報からニュース続報も掲載。イベントの動画や音声も楽しめます。

新刊のご案内

『週刊金曜日』臨時増刊 憲法 特別編集(2013年7月9日号) 

サイズ:AB版 84ページ  

『週刊金曜日』臨時増刊 憲法 特別編集(2013年7月9日号) 

あなたにも責任がある 知らなかったじゃすまされない 私たちの日本国憲法。昨年末の安倍政権発足以降、その改正が議論...


貧困なる精神25集
石原慎太郎の『狂った果実』

著者:本多勝一

貧困なる精神25集

長年にわたり批判してきた石原慎太郎氏を、あらためて断罪。 同じ「日本維新の会」共同代表・橋下徹大阪市長を批判した最新論...


無名人のひとりごと

著者:永 六輔

無名人のひとりごと

これぞ元祖つぶやき ここに、46年前から「つぶやき」をしていた男がいた! テレビやラジオの世界で最先端にいな...


悪名正機
アウトサイダー十三人の話

著者:高須基仁

悪名正機

嘗て「ヘアヌード写真集の仕掛人」とも言われた高須基仁。彼の交際範囲は広く、芸能人、レスラー、ボクサー、宗教家、左右の活動...