資生堂/ネット会員75万人超/ウェブ連動で店頭売上10%増
資生堂が12年4月に開設した、通販やオンラインカウンセリング機能を備えたウェブサイト「watashi+(ワタシプラス)」の会員数が、12月末までに75万人を突破した。ウェブ限定キャンペーンや、新商品のウェブ先行発売を行うことで会員を獲得。会員の約8割を新規顧客が占めた。今後は会員を販売店に誘導し、店頭販売の活性化を図る。化粧品売上高への貢献度は現時点で未知数。だが、ウェブと店頭販売を連動したキャンペーンは、期間中の店頭売上高が前年同期比10%増を上回るなど成果も現れ始めている。
スマホアプリで誘導も
「ワタシプラス」は約2600品目を取り扱っている通販機能に加え、約30人の専任美容部員が電話やチャットを利用し、商品の使い方に関する問い合わせや美容相談に応じている。詳しい肌診断などを希望する会員には最寄りの販売店を紹介する。
オンラインショップの販売価格は原則、店舗と同額。ウェブ会員にメールマガジンを配信しているほか、会員の属性や購買行動などを分析して商品開発にも活用している。
人口減少などで国内化粧品市場の縮小が続く中、「単なるネット通販ではなく、ウェブと既存店舗の強みを生かすことで愛用者を増やす仕組み」(末川久幸社長)としてスタートした。
13年3月期の国内マーケティング費用として計画した約30億円のうち、「多くをウェブマーケティングに投資する」(同)との方針を掲げている。
会員数は12月末までに75万人を超えた。会員の約8割は特約店での購入実績がない新規顧客が占めている。
ウェブと店頭販売の連動キャンペーンとして、9月21日から10日間、店頭での購入金額に応じてネット通販で使える割引ポイントを最大で通常の10倍発行する「ワタシプラス化粧品デー」を実施した。期間中の店頭売上高は「前年同期比10%増を大きく上回った」(広報部)と言う。
ウェブ会員の獲得に向け、ウェブ限定商品の販売や、店頭でサンプル品と交換できるチケットの発行も行っている。
スマートフォンの無料通話アプリ「LINE(ライン)」では、登録ユーザー向けに美容情報や限定キャンペーンを配信、「ワタシプラス」に誘導している。登録ユーザー数は12年7月の開設から約半年で330万人を超えた。
12年4月に開始した美と健康をテーマにしたショッピングモール「Beauty&Co(ビューティ アンド コー)」からも「ワタシプラス」に誘導している。
「ビューティ アンド コー」には化粧品や美容機器、旅行、出版社など30社以上が参加。美容情報の提供やキャンペーンなどを通じて個別企業のサイトに誘導している。会員数は「ワタシプラス」とほぼ同数の約75万件に達した。
ネット事業による化粧品売上高への貢献度は現時点では未知数だ。12年4―9月期(中間期)の国内事業売上高は前年同期比3・2%減の1866億円で、国内事業の減収傾向に歯止めはかかっていない。
今後、ネット会員の増加が売り上げ回復につながるか、真価が問われる。
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