ネットいじめ:英国、カナダも深刻 少女自殺で波紋 サイト管理者責任、追及の動き
毎日新聞 2013年08月17日 東京夕刊
【ロンドン小倉孝保、ニューヨーク草野和彦】英国中部レスターシャー州のハンナ・スミスさん(14)が今月初め、インターネットの交流サイト(SNS)でのいじめを苦に自殺した。このサイトに広告を出すのを中止する企業が出たほか、英国のキャメロン首相がこのサイトを利用しないよう呼びかけた。同様のいじめが原因で少女(17)が自殺したカナダ東部ノバスコシア州では今月、ネット上のいじめを告訴できる法律を施行するなど、波紋が広がっている。
スミスさんがいじめに遭ったのは、ラトビアを拠点とするSNS「Ask・fm」で、匿名で利用者同士が交流できる。スミスさんの家族などによると、スミスさんは数カ月にわたり、自分の体重と叔父の死に関して繰り返し攻撃を受け、「漂白剤を飲め」と自殺を迫るような書き込みもあったという。
スミスさんの父、デビッドさんは、こうした書き込みを許したサイト管理者に責任があるとして「管理者を殺人罪で起訴すべきだ」と述べた。キャメロン首相は英BBC放送で、「彼ら(サイト管理者)の行為についてメスを入れなければならない」と述べた。さらに、何らかの対応が必要との考えを示したうえ、サイトを利用しないよう呼びかけた。
同じSNSを巡ってはスミスさん以外にもこれまでに、少なくとも10代の英国人とアイルランド人の計3人が書き込みを苦に自殺したとみられている。英国児童虐待防止協会(NSPCC)によると、昨年1年間にSNS上で、いじめを受けた子供は5人に1人になるという。
一方、カナダのノバスコシア州ではラテイア・パーソンズさんが今年4月、ネット上でのいじめを苦に自殺した。パーソンズさんは15歳だった2011年11月、少年4人に性的暴行を受け、その際の写真がソーシャルメディア上などに出回った。級友にバカにされたり、嫌がらせを受けたりしていたという。
同州で今月7日に導入された法により、ネットいじめの被害者は、加害者(未成年の場合は親)を告訴することができるだけでなく、いじめを規制する「保護命令」適用の申請ができる。パーソンズさんの父のグレン・カニングさんは、ネットいじめについて「銃を持って歩き回っている子供のようなもの」と危険性を表現した。