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ま、普通のキャリアはそう思うだろうな。 あんたのようなタイプは本庁(警察庁)に残って、事務官僚として活躍する出世コースの方が向いている。犯罪捜査の現場に出ても役に立つどころか、現場の連中に邪魔者扱いされるのがオチだ。 いいだろう。出世コースを選んだあんたが最後に行き着くのは、警察庁長官だ。上手くすれば、元官房長官の後藤田正晴や自民党の亀井静香のように、政治家へ転身することも出来る。だが最近は警官の不祥事が多いからな、下手すりゃ国会に呼び出し喰らって、政治家連中に糾弾される羽目になる。覚悟しておけよ。 そして、もう一つ忠告しておく。 ここを選んだ時点で、あんたは「警官」じゃない。警察官僚だ。ということは、他省庁の官僚達が別省庁に出向したり、民間企業に天下りするのと同じ事を、あんたもいずれ、必ず経験する。 何だ、随分意外そうな顔をしとるな。 警察庁だって中央省庁の一つだ。天下りだって当然あるし、他省庁への出向だってある。何年か前、狙撃されて入院してた国松元警察庁長官も、今じゃアメリカだかヨーロッパだかの財団法人に天下りしとるしな。それ以外にも映倫、交通安全協会、パチンコ業界、警備会社と、天下り先はよりどりみどりだ。 だが、天下りも最近は簡単じゃないらしいぞ。随分問題になったし、世論も厳しいしな。だから、そう誰もが天下り出来るって訳じゃないが、運が良けりゃ、そういった場所で第二の人生設計を立てられるぞ。 それから他省庁への出向だが、これもキャリアなら当然経験することだ。多いのは防衛庁や内調(内閣情報調査室)、外務省、法務省だが、中には運悪く、気の向かん場所に骨を埋める羽目になった、なんていうのもある。警察庁長官を夢見て頑張ってきたのに、ある日突然出向命令が出て財務省に行かされたなんて類の話は、キャリアの間じゃよく聞くからな。財務省や外務省みたいな人気省庁ならまだいいが、中には総務省や自治省へ飛ばされたり、農水省に飛ばされて族議員と農協の板挟みにあって気苦労のあまり入院した、なんていう笑えん話もある。 まあ、これからのあんたに待っとるのは生き馬の目を抜くような出世競争だ。その中を勝ち抜いて行くにゃ、ルパンなんかに関わりあっとる暇なんざないぞ。 まあ、せいぜい頑張るんだな。
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