2013年8月13日(火)

チーム内に溝 異例の事態プラスへ/大宮ベルデニック監督解任

鹿島に敗れて肩を落とすベルデニック監督(左)=3日、カシマサッカースタジアム

 大宮のズデンコ・ベルデニック監督(64)が電撃解任された。優勝を争うチームの指揮官が、シーズン途中で解任されるのは極めてまれなケースだ。現在5連敗中とはいえ、首位と勝ち点6差の4位。優勝、アジア・チャンピオンズリーグ出場圏内の3位以内の可能性は十分ある。毎年残留争いを演じてきたチームを一時は首位へと押し上げたベテラン指揮官はなぜ、志半ばで去ることになったのか。真相を探った。

 常識ではあり得ない事態が起こった。

 ベルデニック監督は間違いなく今季の大宮躍進の立役者の一人である。確かに現在5連敗中と、前半戦の勢いはない。しかし、2009年、5連敗しながらもリーグを制した鹿島の例もある。巻き返しのチャンスは十分残っている。しかも、昨年まで毎年残留争いをしていたチーム。シーズン途中での解任はあまりに厳しいという意見が出るのは当然だ。

 それでもクラブは指揮官を解任した。いや、解任せざるを得ない状況がチーム内に起こっていた。まさに苦渋の決断だった。

■指揮官の功績

 昨年6月に就任したベルデニック監督は降格危機にあったチームを救った。守備を立て直して残留させると、今季は昨年9月から今年5月まで続いたJ1記録の21戦負けなしを樹立。さらに、7連勝をマークして、チームを初の首位に導いた。

 注目度も急上昇し、各メディアで大きく取り上げられた。知名度も高まり、観客動員も増え、取り巻く環境は激変。指揮官の母国スロベニアのメディアでも、チームの結果が取り上げられるほどだった。

■連敗で不満噴出

 しかしその裏でチームは問題を内包していた。指導法などをめぐり、指揮官とスタッフ、指揮官と選手に溝が生まれ始めていた。

 ベルデニック監督は自分以外のスタッフが選手たちに直接アドバイスすることを嫌った。だが、実際は当時ヘッドコーチだった小倉テクニカルダイレクター(TD)らの助言などが、非常に大きな効果をもたらしていた。大宮の躍進は有能なスタッフ陣に支えられていた部分が大きい。指揮官だけの力ではここまでの飛躍はなかった。選手たちのコーチ陣への信頼も厚かった。

 その筆頭だった小倉TDが7月21日、ヘッドコーチからTDに就任。突然現場から離れた。これには、監督よりも上の役職にすることによって、選手とコミュニケーションを図る大義名分を与える狙いがあった。

 しかし、効果があったとは言えない。ヘッドコーチ時代の小倉TDは練習でも試合のような厳しさを選手に求め、ほとんど選手を褒めなかった監督とは違い、褒める時は褒めた。TD就任後は一歩引いた形で練習を見つめることになった。

 連敗が止まらなくなると、頑固な指揮官に対して選手らの意見がぶつかり合う事態に発展した。10日のC大阪戦前に選手だけのミーティングを開いた。しかし、チーム内の不協和音に「勝ちたいのか、負けたいのか、どうしたいのか」と、選手たちの不満はピークに達していた。

 C大阪に敗れ、08年以来の5連敗。周囲からすれば「まだまだ」だが、チームとしてはもう限界だった。

 新監督は小倉TDが最有力候補で、円滑にチームを立て直す上で適任者だろう。暫定的に岡本GMが指揮を執るが、新体制スタートは一日でも早い方がいい。異例の事態をプラスの力に変えて、再び輝きを取り戻してほしい。これが大宮を支える人たちの願いだ。

もっとニュースを読みたい方は携帯サイトで

【関連記事】

全国各地の関連ニュース

日本が見える 47NEWS