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【社会】野球女子 高まる熱 選手育成に課題2013年8月17日 06時58分
この夏、小学生が参加した野球の全国大会で、栃木県代表の陽南学童野球クラブ(宇都宮市)の女子バッテリーが「歴史的一勝」を挙げた。近年、女子プロ野球の球団も創設され、「野球女子」熱が高まっている。その一方で、女子が中学、高校と野球を続けていく環境が整っているとは言えない現状がある。 (大野暢子) 「男女の違い? 野球は団体競技。気にしたことはない」「力では負けないよね」 エースの本間茜梨(あかり)さん(12)、捕手の生井美桜(なまいみさき)さん(11)=いずれも陽南小六年=は、地元の同じ中学に進み、野球部に入るつもりだ。 二人は七日、高円宮賜杯第三十三回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント(全日本軟式野球連盟、東京新聞など主催、東京中日スポーツなど後援)で初戦を突破。二回戦は敗れたものの注目された。 全日本女子軟式野球連盟の担当者は「学童女子は選手数、質ともに上昇傾向。女子の活躍が新たな(女子の)参加者を呼んでいる」と、女子の盛り上がりぶりを語る。 女子はプロ野球にも参入。日本女子プロ野球機構(京都市)が二〇一〇年からリーグを運営し、現在、京都、兵庫、大阪、東日本を拠点にした四チームに計六十人程度の選手が在籍している。 半面、選手を育成する基盤は、男子と比べて脆弱(ぜいじゃく)さがまだまだ目立つ。 一般に、成長に従って男女の体力差が広がることから「中高生以上の男女合同チームは現実的でない」(陽南の渡辺誠宏(まさひろ)監督)。つまり、女子選手が育つには、女子チームの拡充が必要となる。 しかし、日本中学校体育連盟(中体連)によると、中学校で女子野球部を設けている学校はほとんどなく、男子に交じっての活動が主流だ。 高校はさらに厳しい。日本高野連の大会参加者資格規定では、軟式・硬式問わず女子の公式戦出場を認めていない。 残る道は、女子野球部かクラブチームだが、全日本女子軟式野球連盟の加盟チームで高校生が所属できるのは約三十。全国高校女子硬式野球連盟の加盟校は約十校と少数だ。 陽南の場合、最近では生井さんの姉を含む三人の女子選手が活躍。全員が小学校卒業後も野球を続け、一人は硬式野球部がある東京都の私立高校に進んだ。二人は「私立だけでなく、どこの公立学校にも普通に女子野球部がある。そうなれば一番うれしいよね」と夢を語った。 ◆兄・姉追いかけ熱中 全日本で活躍 栃木バッテリー 「歴史的一勝」を挙げた女子バッテリーは、どうやって誕生したのか。 本間さんは、幼少期から六歳上の兄とキャッチボールをして遊んだ。陽南クラブに入った兄が、練習で遠くまで打球を飛ばす姿を「気持ちよさそう」と感じていたといい、小学三年の時、自分も入った。生井さんにも三歳上の姉がおり陽南に所属。先に入会した本間さんから「楽しいよ」と聞かされ、四年生の時に入団した。 二人は持ち前のまじめさと、男子に劣らぬ体格・体力を発揮し、高学年になると中心選手に。渡辺監督は「本間は制球が良く、生井は体力があって強い球も体で止める」と評価、自然にバッテリーとしての起用を決めたという。 五月に行われた全日本学童軟式野球大会の県予選では、本間、生井バッテリーは決勝途中までの5試合28イニングを1失点に抑えるなど、圧倒的な強さを見せた。 (東京新聞) PR情報
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