新井貴で虎連勝！同点13号＆サヨナラ犠飛

＜阪神２－１ヤクルト＞◇１６日◇京セラドーム大阪

　ミラクルの序章かな？　阪神新井貴浩内野手（３６）が自身２年ぶりのサヨナラ打を放って、チームに大きな白星をもたらした。この日は福留に続き、西岡も復帰。今日１７日に自力優勝の可能性が復活するケースも出てきた。巨人を追いかける態勢がついに整った虎。決して、あきらめん！

　打球が舞い上がった瞬間、一塁ベンチの誰もが右手を突き上げた。サヨナラだ。新井はバットを放り投げた。同点で迎えた９回裏１死満塁。ヤクルトのバーネットのカットボールが高めに浮いた。

　「あまり考えずに楽に入ろうと思った。低めをケアして、力まないように」

　自分に言い聞かせ、ジャストミート。センター後方まで飛ばす決勝の犠飛になった。ヒーローは一塁付近でガッツポーズ。ペットボトルの水が降り注いだ。

　いくつもの執念が最後の最後で実を結んだ。８回表の光景に、新井は心を揺さぶられていた。２死満塁で打者はバレンティン。マウンドに上がった安藤の姿だ。フルカウントから高めの直球で空振り三振を奪った。新井は言った。

　「２人とも今年のスタートは良かったわけじゃない。安芸でいろいろと一緒にリハビリや練習をした」

　若手の鍛錬場である高知・安芸の２軍キャンプに、本来はいるべきではないベテランがいた。新井は右肩のリハビリが思うように進まず、背中の張りもあって、１軍から離脱。安藤は沖縄組に入れず、２月１日のキャンプインを安芸で迎えた。

　「お互い、ここから、はい上がろうな。がんばろうな」

　復活の時を信じ、励まし合ったという。その時は来た。並んで立ったお立ち台の上。ヒーローインタビューを終えた新井はかみしめるように言った。

　「うれしいよな。安ちゃんがね。（８回の）あのガッツポーズは格好よかった」

　サヨナラの犠飛だけではない。５回には同点の１３号ソロ。前日には全身の疲労で試合前の全体練習を回避した。ペナントレースは長い。首位を争うチームの主軸として、極限の状態で戦っている。ここにも執念があった。

　もうひとつの執念は、サヨナラの直前にあった。無死一、二塁で打順は鳥谷に回った。和田監督は今季０犠打の鳥谷に、バントを指示。指揮官の勝利への思いがつまった一手。相手の失策もあって満塁へとチャンスは広がっていた。

　鮮やかな勝ち方ではない。薄氷を踏む思いでつかんだ劇的な勝利。ナインの、和田監督の執念で、優勝争いにかすかな変化が見られた。巨人が負けたため、ゲーム差は「７・５」に縮まった。きょう１７日の結果次第で、阪神の自力優勝の可能性が復活する。奇跡を信じたくなる夜だった。【田口真一郎】

　▼新井のサヨナラ打は１１年４月２２日横浜戦（甲子園）９回に江尻から二塁打を放って以来。サヨナラ本塁打２度、二塁打１度、単打４度、押し出し四球が１度あるが、サヨナラ犠飛は初。チームの今季サヨナラ勝ちは８度目。犠飛でのサヨナラ勝ちは１１年７月１３日巨人戦（甲子園）９回の桧山以来、２年ぶり。

　▼巨人が負けた日に阪神が勝ったのは、７月１４日以来（阪神がＤｅＮＡ戦○、巨人が中日戦●。直接対決除く）。巨人は８月９日に優勝マジック３９が点灯して以降、順調にＭ３３まで減らしてきたが、初の足踏み。阪神に今日１７日に自力優勝の可能性が復活するケースも出てきた。条件は阪神○なら巨人△または●、阪神△なら巨人●。いずれも阪神が残り試合全勝すれば、巨人が阪神戦を除く全試合に勝っても勝率で上回る。

　［2013年8月17日10時52分　紙面から］