(セ・リーグ、阪神2x-1ヤクルト、15回戦、阪神11勝4敗、16日、京セラドーム大阪)誰もが固唾をのんで見守った。1-1の八回二死満塁、フルカウント。打席にはこの日、リーグトップの42号ソロを放っているバレンティン。絶体絶命のピンチでエースから託された男が覚悟を決めた。安藤は口を真一文字に結び、信念の1球を選択した。
「腕だけは振ろうと思った。あそこで逃げたら、やられるだけ。向かっていくしかない」
投げ込んだのは144キロの真っすぐ。インハイを狙った速球は真ん中高めのボール球になったが、「高めの方がいい。真っすぐを狙っていたら、振ってくると思った」。投げミスも想定したベテランの読みが勝った。B砲のバットは豪快に空転。マウンド上で小さく拳を握りしめた。
出番は突如、訪れた。好投を続けていた先発・能見が二死までこぎ着けたものの、満塁の窮地を招き、よもやの交代となった。四球も許されない極限の登板。首脳陣の選択は制球力のある背番号「16」だった。気迫満点の「安藤の8球」が強打者をねじ伏せた。