≫あなたのブログに福井のニュース
福井市中心部の人口減止まらず 率は市平均の7倍、若年世帯流出
(2013年8月7日午前7時47分)
福井市の人口の推移
福井市中心部の人口減少に歯止めがかからない。JR福井駅を中心として市が定める「まちなか地区」の2012年度の人口は、約3万2200人。過去5年で2千人以上減り、市平均の減少率を大きく上回る。郊外部への転出傾向が続いているのが原因で、市は13年度から、若年世帯を主なターゲットとして居住促進の補助メニューを拡充、市街地集約型の都市づくりに本腰を入れようとしている。
市によると、「まちなか地区」の人口は1970年代以降、毎年減少。85年度には約4万8千人で市全体の約2割を占めていたが、2012年度は12・0%にまで落ち込んだ。過去5年の減少率をみると、まちなか地区は6・4%で、市平均の約7倍に相当する。
福井駅東口に位置する同市旭地区。市中心部にもかかわらず、地区内のある自治会長は「過疎化が進んだ」と嘆く。20年以上前は1万人近くが住んでいたが、現在は約6千人にまで減った。
結婚後の若い世帯が次々と郊外に移り住み、元の住宅に住んでいた親世代が亡くなって徐々に空き家に。子どもは減り、かつてマンモス校の一つだった旭小も、今は1学級だけの学年が大半を占める。
「最近では、3世代同居は珍しくなってきた。住民は高齢者ばかりで活気がなくなった」と先の自治会長。地域コミュニティーの衰退にも不安を感じている。
◆ ◆ ◆
市住宅政策課によると、まちなか地区の転出入による社会増減(一部推計)は、07年度から3年間で664人の転出超過。中心市街地にマンション建設が相次いだ影響で11年度はいったん38人増となったが、12年度は再び11人減った。流出傾向は止まっていない。
さらに、10年度のまちなか地区人口のうち、65歳以上の高齢者は32・7%。10年間で6・2ポイントも上昇し、市全体の24・6%に比べると大幅に高い。
同課は「若い世代の転出で人口が減り、出生数が死亡数を下回る自然減にもつながっている」と分析。本年度から5年間の都心居住推進プランでは、まず社会増減数のプラス転換を目指すこととした。「人口維持」としていた従来の目標を見直し、“現実路線”に軌道修正した形だ。
◆ ◆ ◆
市は04年度から、まちなか地区で共同住宅や二世帯住宅の建設、リフォームの費用助成などさまざまな補助メニューを設けてきた。だが、12年度までの補助実績は目標1300世帯に対し、わずか327世帯。制度のPR不足もあり、利用は伸び悩んでいる。
本年度からは、若年層の居住を促すため、市外から転入する40歳未満の夫婦や子育て世帯に、賃貸住宅の家賃1万5千円補助をメニューに加えた。高齢者世帯が所有する空き住宅を借り上げ、子育て世帯に賃貸する住み替えのマッチング支援制度も新設する。「手を打たないとますます地盤沈下が進む」(住宅政策課)と危機感は大きい。
同課の試算では、社会増減をプラスにするには、5年で計875世帯の転入促進と転出抑制が必要となる。補助制度で300世帯分を確保し、県都デザイン戦略や公共交通の充実などの効果で残りをカバーする考えだ。
まちなか地区の住民からは、県立音楽堂や県立図書館が郊外に分散しているため「中心部に都市機能を集め直さないと、住民は戻らない」との声も聞かれる。同課は「住宅分野だけでなく、さまざまな施策と合わせ定住促進に取り組む必要がある」と強調している。
× × ×
【まちなか地区】 福井市が都市計画マスタープランに定める地域で、東西は板垣橋通りから花月橋通りまで、南北は公園通りからえちぜん鉄道三国芦原線までにおおむね囲まれた約625ヘクタール。行政機関や商業施設、文化施設が集まり、JRや地域鉄道、路線バスなど公共交通の利便性も高い。市は都心居住推進プランを定め、市民に定住を促す施策を進めている。