会社の数字を見るときに、まず売上高を見ることが多いですよね。しかし、安易に売上高を信用するのは危険です。今回は、財務諸表で会社が実際どれくらいの利益を出しているのかを見抜く方法を紹介します。
前年度の数字を見る
売上高を見るときには、必ず、前年に比べてどれくらい伸びているか、あるいは減少しているかを見ましょう。前年度の数字と、どれくらいの差があるのかを見比べてください。
売上高の増減がなぜ大切か
売上高は、その会社と社会との接点の大きさを表すものです。会社は商品やサービスを顧客に提供します。その代わりに、会社が受け取るのが売上高です。企業の社会での「存在」そのものを表しているのが売上高です。売上高が上がれば、社会での存在が増えたことになり、下がれば、それが小さくなったことを意味します。
企業は、商品やサービスを通じて社会に貢献しているため、売上高は社会への貢献度合いということもできます。だからこそ、売上高の増減は大切なのです。
資産と売上高の関係も大切
売上高の増減を見るときに、もうひとつ注意が必要です。それは、貸借対照表の資産の増減率と売上高の増減率との関係を見ることです。売上高との関係で重要なのは、「売上高の伸び率と資産の伸び率ではどちらが大きいか」です。正常なのは「売上高の伸び率>資産の伸び率」の関係にあるときです。
もし、売上高の伸び率より資産の伸びのほうが大きいということであれば、資産の活用度合いが悪くなっていると言えます。つまり、使った資産が多かった割には売上高が伸びておらず、資産活用の効率が落ちてしまったといえます。これを表す指標が資産回転率(売上高÷資産)です。資産の有効活用度合いを表した重要な指標です。
売上原価は製造原価と違う
売上原価と製造原価は違います。製造原価とは、作った製品にかかった費用です。なぜ、売上原価と違うかというと、損益計算書で損益を計算する際に売上原価となるのは、「売れた分だけの製造原価」だけだからです。
これは損益計算書を理解する上で最も大切なポイントです。例えば、1年間に「製造した」製品にかかった費用が製造原価です。一方、そのうち、1年間に「売れた」製品の製造原価が売上原価です。そのため、売れた分だけの原価(費用)しか計上されていないのです。
作ったけれども売れ残っている製品は、貸借対照表の「棚卸資産」つまり、在庫に資産として計上されています。売れなかった分は、費用とはならずに資産になっているのです。
これは、製造した製品だけでなく、仕入れた商品についても同じです。作った分、仕入れた分がすべて売上原価になるのではなく、それらは一旦すべて棚卸資産になり、そのうち、売れた分だけが売上原価として費用となります。
将来売れるか売れないかに関わらず、製造したもの、仕入れたものは、一旦すべて棚卸資産となります。そして、そのうちの売れた分だけが、売上原価となるのです。
売上総利益から一般管理費を引いたものが営業利益
ここからさらに、販売費及び一般管理費(販管費)を引いたものが営業利益です。製造や仕入れに直接関係のない費用が販管費ですが、売上高に対する販管費の比率(販管費率)も重要です。粗利益を稼いでも、販管費が大きくては、利益は出ないからです。
特別損益と税効果会計
この経常利益から特別利益や特別損失を調整します。特別利益や損失は、過性の利益や損失です。例えば、工場を売却して簿価より高く売れた場合の利益や、子会社を売却したら損失が出たというような、経常的(常に起こる)ではなく、そのときだけ特別に起こる利益です。
そして、この特別損益を調整して、税金等調整前当期純利益が計算されます。そこからさらに、税金を差し引き、さらにその税金の「財務上の」調整(「法人税等調整額」という)を行うことで当期純利益が計上されます。
売上高だけではなく、きちんと会社の利益を見抜きましょう。