2013年8月13日(火)

北海道の観光地 マナー違反に怒りの声

佐々木
「次は、旅先でのふるまいについて大いに考えさせられるニュースです。
こちらは、北海道に行くならぜひ訪ねてみたいという人も多い、美瑛町。
丘と畑の美しい景観が、訪れる人を魅了しています。
その一方で、押し寄せる観光客が地元の農家に大きなストレスを与え、時には強い怒りを買ってしまうケースが増えているんです。」

北海道の観光名所 美しい景観が…

北海道の中央、美瑛町に広がるゆるやかな丘。
色とりどりの畑が広がるその美しさから、「パッチワークの丘」と呼ばれています。





丘の上には印象的な樹木の姿が。
心癒される景色を求めて、年間130万人以上が訪れています。
こうした美瑛や富良野を訪れる観光客の間で、今年(2013年)一躍、話題になっている木があります。



こちらは、大手航空会社のコマーシャル。
人気アイドルグループのメンバーの人数と同じ、5本のカラマツです。




観光客
「コマーシャルで知って、行きたいと思った。」




グループのメンバーが訪れたコマーシャルのロケ地を一目見ようと、多くのファンが押し寄せ、現地は新たな観光名所に。
ところが、木をよく見てみると…。

5本の木の根元に、小さな木が2本。
先月(7月)、土地を所有する農家があえて植えたのです。
異変は、ほかの観光名所でも…。




この木の幹には、赤いバツ印が。
これを書いたのも所有する農家です。
みずから景観を台なしにしたのは、なぜなのか?


 

核心:マナー違反への怒り

 

観光客の傍若無人 怒る北海道の農家

バツ印が書かれたのは、美瑛の丘に立つポプラの木です。
冬には、いてつく寒さを堪え忍ぶような姿。





夏には、葉をいっぱいに広げて喜びを表すようにも見えます。
「哲学の木」と呼ばれ、観光客の人気を集めてきました。
しかし、木にバツ印を書いた農家の男性は、不快感をあらわにしています。



所有する農家
「麦畑の中に入り込んで、写真を撮っている。
ジャガイモの花盛りの時も畑の中に入って。
もう地主は怒っているよ、いいかげんにしてくれよと。」



哲学の木が立っているのは、農家の畑の中。
およそ100メートル離れた道路から記念撮影ができますが、もっと近づきたいと、無断で入り込む観光客が少なくないのです。



所有する農家
「1人が入ると、それをまねして次から次へと入っていく。
トラクターに勝手に乗り込んだり、ゴミのポイ捨てもある。
対策を行ったところで(マナー違反は)全然変わりがない。
ストレスもあって、その時の勢いで。」

 

マナー違反に対する抗議のメッセージ。
それを見た観光客の思いは複雑です。

観光客
「何とも言えない、切ない気持ち。」

観光客
「入ってはダメとアピールをするなら、別の方法もあったのでは。
ちょっと残念。」

こうしたトラブルは美瑛一帯で起きていて、各地の農家の間からは懸念の声があがっています。
観光客に畑を踏み荒らされるだけでなく、有害な菌や虫を持ち込まれ、作物に被害が及ぶ危険性が高まっているのです。
また、中には農作業中の姿を勝手に撮影する人もいて、非常にストレスを感じるといいます。
マナー違反の観光客に共通しているのは、少しぐらいならいいだろう、という安易な考え。


観光客
「全然気づかなかった。
みんなカメラマンがそこにいたから、同じように撮影した。」

近くの農家
「(マナー違反は)今までたまにはあったが、今年は特にひどい。」

追い打ちをかけているのが、台湾や韓国など、アジアからの観光客の増加です。
美瑛観光の玄関口、旭川空港の国際便の利用者は、先月9,300人余りと、去年(2012年)より8割も増加。
ことばの通じない観光客が大挙して押し寄せているのです。


近くの農家
「バスから降りてきて、台湾やタイからの観光客が20人くらい、わっと畑の中に入ってきて写真を撮る。
入っちゃ困る。
問題が起きてからでは取り返しがつかない。」

 

何とかマナー違反を防げないか。
町の観光協会では、スタッフが見回りをするなど、対策に乗り出しています。

「(畑の外の)アスファルトのところで撮ってくれる?
そっちは畑だから、ここまでにして。」




外国語を併記した注意書きの看板も設置。
畑に無断で立ち入らないよう、ロープを張ったところも。
しかし、マナー違反はあとを絶たず、看板やロープは増える一方です。
自慢の美しい景観は損なわれつつあります。
名所の木に書かれたバツ印。
地元を気遣って、常識的な行動をとってほしいと観光客に訴えかけています。

旅先でのふるまい 求められるマナー

佐々木
「地元の自治体も、もちろん農業はしっかり守りたいし、一方で、観光による町おこしも図りたいという板ばさみで、頭を抱えているのが現状のようですね。」

大越
「観光地というのは、あとから与えられた性格であって、もともとはそこに自然や人々の暮らしがあったわけですから、よそからお邪魔する側の人間としては、その土地や人々に対する敬意をちゃんと払いたいなと思いますよね。
それがまさにマナーというものだと思いますし、それは、われわれ日本人が外国に行く場合も同じだと思います。
しっかりとした、ふるまいをしたいものです。」

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