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加害責任―歴史から目をそらすな

68回目の終戦の日だったきのう、安倍首相は靖国神社への参拝を見送った。尖閣、竹島や歴史認識の問題で、中国や韓国との関係が冷え切っている折である。ここで参拝すれば、両国と[記事全文]

エジプト騒乱―和解の道をつぶすのか

かつての独裁時代でさえ、めったになかった凄惨(せいさん)な光景だ。群衆を容赦なく襲うブルドーザーと銃弾。全国での衝突で、500人を超す命が消えた。[記事全文]

加害責任―歴史から目をそらすな

 68回目の終戦の日だったきのう、安倍首相は靖国神社への参拝を見送った。

 尖閣、竹島や歴史認識の問題で、中国や韓国との関係が冷え切っている折である。ここで参拝すれば、両国との関係改善はさらに遠のく。

 見送りは現実的な判断と言えるだろう。

 首相が、過去とどう向きあおうとしているか。中韓のみならず、欧米諸国も目を凝らしている。靖国問題だけではない。先に首相が「侵略の定義は定まっていない」と、日本の戦争責任を否定するかのような発言をしたことなどが背景にある。

 対応を誤れば、国際社会で日本の孤立を招く。そのことを首相は肝に銘じるべきだ。

 その意味で、気がかりなことがある。

 きのうの政府主催の全国戦没者追悼式で、首相の式辞からアジア諸国への加害責任への反省や哀悼の意を示す言葉が、すっぽりと抜け落ちたのだ。

 加害責任への言及は、93年の細川護熙首相(当時)から歴代首相が踏襲してきた。

 第1次安倍内閣の07年には首相自身も「アジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた」「深い反省とともに、犠牲となった方々に謹んで哀悼の意を表す」と述べていた。

 今回は、これまで表明されてきた「不戦の誓い」という表現も使わなかった。

 首相周辺は「式典は戦没者のため、という首相の意向を反映した」「アジアへの配慮は国会答弁でしている」という。

 だが、そんな方便は通用しないのではないか。式典は、先の戦争への日本の姿勢を世界に発信する場でもある。加害責任への言及が消えたことで、アジアの人々への配慮を欠いていると受け取られかねない。

 せっかく靖国参拝を見送りながら、逆のメッセージを発することにならないか。

 気になるのは、式辞からなくなった言葉が、植民地支配と侵略によって「アジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた」という95年の村山首相談話の表現と重なることだ。

 首相はかねて村山談話の見直しに意欲を示している。そうした意図が今回の式辞に表れたとするなら、とうてい容認できるものではない。

 首相は見送ったが、きのうは一部の閣僚や国会議員が大挙して靖国神社に参拝した。

 歴史から目をそらさず、他国の痛みに想像力を働かせる。こんな態度が、いまの日本政治には求められる。

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エジプト騒乱―和解の道をつぶすのか

 かつての独裁時代でさえ、めったになかった凄惨(せいさん)な光景だ。

 群衆を容赦なく襲うブルドーザーと銃弾。全国での衝突で、500人を超す命が消えた。

 エジプト軍が主導する暫定政権は首都カイロで、先月のクーデターに抗議していた座り込み活動を強制排除した。

 指導部は「治安回復のため、やむを得なかった」と釈明したが、各地で多数の実弾発砲による殺傷行為が目撃されている。

 デモ活動に対する武力の行使は、常軌を逸した暴挙というほかない。政権はただちに弾圧をやめなくてはならない。

 デモ隊は、ムルシ前大統領が属する「ムスリム同胞団」の支持者が主体だ。同国初の民選大統領だったムルシ氏は、政変後ずっと拘束されている。その理不尽さの訴えには理がある。

 若者やリベラル派など世論の支持があったとはいえ、軍事力を背に政権を奪った以上、暫定政権には同胞団と粘り強く和解を探る義務があったはずだ。

 なのに先月のデモ隊への発砲に続き、さらに大規模な流血事件を起こしたことは、政治対話の扉を閉ざすに等しい。

 軍部は来年初めまでの憲法改正や国民議会選挙という行程表を描いているが、その実現を自らの手で遠ざけてしまった。

 リベラル派のエルバラダイ副大統領は流血に抗議し、辞意を示した。穏健派が離反すれば、強硬派は増長しかねない。

 さらなる暴走を防ぐには、もはや米欧と周辺の主要国が説得を強めるしかないだろう。

 年13億ドル(1300億円)の軍事支援をしている米国は、今も先の政変をクーデターと認めていない。認めれば米国内法で支援は止まり、エジプトへの影響力を失いかねないからだ。

 だが、もはや事態は急を要する。米国は支援の凍結を検討すべきだろう。欧州連合やアラブ連盟とも調整し、国際社会の総意として暫定政権に自制を求めねばならない。

 同胞団に対しては、トルコやカタールなど親交のある国々が関与して、暫定政権との対話にのぞむよう促すほかあるまい。これ以上の衝突は、同胞団にとっても利益にならない。

 今回発令された非常事態宣言や夜間外出禁止令で、エジプトが頼る観光産業はさらなる打撃を受けるのは確実だ。

 経済の低迷は、クーデターを正当化する材料にされたが、その軍部がまた経済の足を引っぱれば、政情不安は長引く。

 国の安定への道は、国民の統合しかありえない。民主革命の初心を見失ってはならない。

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