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(2時間20分前に更新) |
きょう15日は68回目の終戦の日だというのに、中国、韓国との関係はかつてないほど冷え切っている。
日中韓の3カ国は昨年末から今年にかけて安倍晋三首相、習近平国家主席、朴槿恵大統領と最高指導者が交代し新しい関係をつくり直すきっかけだったにもかかわらず、いまだに日本と両国との首脳会談が実現していない。
互いにナショナリズムと不信感を増幅させ、関係は悪化するばかりだ。打開の糸口さえ見えない。
共通しているのは、沖縄県・尖閣諸島、島根県・竹島をめぐる領有権問題と日本の政治家の歴史認識をめぐる発言に対する中韓の反発である。
日本の民間非営利団体と中国英字紙による世論調査によると、相手国に「良くない印象を持っている」と答えた人は、日本が90・1%、中国が92・8%で、2005年の調査以来、最悪の数字だ。
中国に至っては軍事紛争が「起きる」と答えた人は52・7%に上る。わずかな救いは、日中関係が「重要」と答えた人が日中双方とも7割を超えていることだ。
一方、15日は韓国にとって日本の植民地支配から独立したことを祝う「光復節」である。最大野党の民主党国会議員らが13日、竹島に上陸した。「日本の右傾化と軍国主義復活の動きに警告するため」と上陸の理由を説明した。日本では在日韓国・朝鮮人にヘイトスピーチ(憎悪発言)が投げつけられている。偏狭なナショナリズムの応酬では関係改善は遠のくばかりだ。
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独仏友好条約(エリゼ条約)が1月に締結50周年を迎えた。ドイツとフランスの戦後和解の土台となった条約だ。少なくとも年2回の定期的な首脳会談を設定、相手国の言葉を学び、青少年の集団交流などが盛り込まれている。
両国は過去百数十年の間に3度も戦争を繰り広げ、「宿敵」の間柄だったが、互いに歩み寄り、欧州連合(EU)の基礎がつくられた。
両国大使館のホームページなどによると、条約の結果、共通の教科書を使用し、750万人の若者が交流。姉妹都市提携は2200以上に上り、世論調査では両国民の85%以上が相手国に良いイメージを持っているという。
ドイツとフランスの和解プロセスが東アジアに適用できるとは限らない。だが、憎悪を乗り越えたエリゼ条約には、不信を受け止めつつ近隣諸国とどう和解し共生の道を探るか、多くのヒントが含まれているのではないだろうか。
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安倍首相は4月、歴史認識を問われ「村山談話をそのまま継承しているわけではない」と国会答弁している。
村山談話は、植民地支配と侵略によって多大な損害と苦痛を与えたアジア諸国の人々に対し痛切な反省と心からのお詫(わ)びを表明したものだ。
安倍首相はその後、発言を修正したものの、中韓の警戒感を高め、米国も自制を求めている。韓国は、北朝鮮の核問題をめぐり、「日米韓」から日本を外した「米中韓」の枠組みで会議を始めている。再び日本が孤立してしまうことにならないか危惧する。