稔彦王[東久邇宮](のち東久邇稔彦)は、本ホームページで對象となるべき人々の中でも最も超絶した事績を殘してゐること、疑ひの餘地がないと思はれるが、今囘は、東久邇稔彦『やんちゃ孤独 菊のカーテンの中の一人の人間記録』(読売新聞社(読売文庫)、昭和三十年六月初版)−− 歩兵第二十九連隊中隊長(大正三年十二月〜大正四年十二月)・第二師團長(昭和八年八月〜昭和九年八月)として所縁のあった仙台の『河北新報』に連載されていた −− に記されてゐる囘想の一つを取り上げてみたい。同書の一四五頁に曰く。
この一例から見ても明らかなやうに、後日に作成された囘想録の類に於る主觀的な敍述は、他の一次史料の敍述によつて客觀化・相對化する必要がある。この「史料批判」といふ方法が近代歴史學の「いろは」の一つであること、歴史學研究に專門的に從事する者であれば當然わきまへてゐる筈であるのであるが、近年なほ、かゝる研究上の基本を輕視するが如く自身の所論に都合の良い記載のみを「よいとこ取り」して作された論文・著作を目にすることが少なくない。誠に殘念なことゝ思ふ。 (平成十三年十一月五日 誤字訂正アリ)
本頁新装開設日時 : 2004.01.06. |