新型ロケット:「イプシロン」27日打ち上げ/上 技術に夢託す内之浦

毎日新聞 2013年08月15日 東京朝刊

 新型ロケット「イプシロン」の打ち上げが27日に迫った。最新鋭のロケットを支えるのは、世代を超えた研究者の思いとともに、51年前から科学技術に夢を託し、支えてきた住民の熱意だ。「世界一地元に愛される射場」から飛び立つロケットを2回に分けて紹介する。

 ●62年以来、400号機目

 「今度で通算400号機目。ごう音がまた町にとどろくのをみんな待ちに待っている」。鹿児島県肝付町で写真館を営む牧工(まきたくみ)さん(86)は、地元の宇宙航空研究開発機構(JAXA)内之浦宇宙空間観測所で迫る久々の打ち上げに喜びを隠さない。

 日本の「宇宙開発の父」、糸川英夫博士(1912〜99)が大隅半島にある合併前の旧内之浦町を訪れたのは60年。「ペンシルロケット」以来5年の急速な進歩で秋田県の射場が手狭になり、全国行脚して「ここにしよう」と決めた。町外への道路が1本しかない「陸の孤島」。射場建設の作業員は集まらず、地元婦人会が土砂を運び、炊き出しまでして全面支援した。

 62年、初めて打ち上げられたロケット「OT75」を町民約2000人が見守った。音と閃光(せんこう)に「洗礼を受けたように魅せられた」と牧さん。以来、全ロケットをノートに記録し、訪れる新聞記者のため自宅に暗室を作って写真館を開いた。70年にここから打ち上げられた日本初の人工衛星は、地元の支援に感謝し「おおすみ」と命名された。

 ノートの最終ページは空白。イプシロンと書き込む日が楽しみだ。「いまや打ち上げをパソコンで遠隔操作できる新しい時代。地元の発展とともに歩んだロケットは町の誇り」と話す。

 ●種子島統合に待った

 高コストを理由に2006年にM5ロケットが中止され、後継機イプシロンの射場は一時、H2Aロケットなどを打ち上げている種子島に統合の可能性が浮上した。勤続22年の峯杉(みねすぎ)賢治・観測所長(50)は町内の高齢者から「ロケットが上がらないと寂しいよ」と声をかけられ、「町民が待っている。いつ再開が決まってもいいように」と機器の保守点検を続けてきた。

 永野和行町長も上京して折衝を続け、ついに11年1月、内之浦での打ち上げ再開が決定。12年6月の豪雨で通信用の鉄塔や電線が流され、国道が崩落するなど観測所に危機的な被害が出たが、町民の手助けで早期復旧した。峯杉所長は「世界一地元に愛されている射場」と話す。

 徹底したコスト削減のため、発射装置はほぼM5当時のまま流用。1970年から改修しつつ大事に使ってきた。一番の心配は老朽化だ。7年ぶりの打ち上げを前に、最新鋭のロケットと地上設備との接続に細心の注意を払う。【斎藤有香】

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