映画:朝鮮通信使の足跡たどる 日韓、触れ合いの歴史見て 将来の関係考えるきっかけに−−来月公開
毎日新聞 2013年05月30日 大阪夕刊
室町時代に日本と朝鮮半島を40回以上も往復し、文化交流に尽くした朝鮮王朝の外交官の足跡をたどる日韓共同製作のドキュメンタリー映画「李藝(リゲイ)−最初の朝鮮通信使」が、6月1日から全国で公開される。竹島の領有権問題の影響で撮影が一時中断し製作費が膨らんだが、「映画を日韓両国の未来につなげてほしい」と民間から寄付が集まって完成にこぎつけた。益田祐美子プロデューサーは「映像の力で国際関係を改善したい」と話す。【遠藤孝康】
朝鮮通信使は当時の李氏朝鮮からの外交使節で、室町時代に始まり、江戸時代に盛んになった。李藝は最初の通信使とされる人物で、倭寇(わこう)に拉致された朝鮮人の帰還や室町幕府との貿易協定締結に尽力した。
映画では、韓流スターのユン・テヨンさん(38)が李藝ら朝鮮通信使にゆかりのある西日本の各地を訪ねる。長崎・対馬、広島・鞆の浦、京都……。住民との交流を重ね、ユンさんは映画で語る。「触れ合いを重ねることで信頼が生まれる」
在日韓国大使館の企画で昨夏に韓国を訪ねた日本人大学生約20人の旅の様子も挿入されている。釜山での交流会で、韓国の大学生から「過去に被害を受けたという気持ちを忘れていない」と言われ、両国間に横たわる歴史問題の重さを実感する日本の学生の姿も映す。
2011年12月に始まった撮影は両国関係の悪化で公開のめどが立たなくなり中断し、スタッフの人件費などが膨らんだ。益田さんは映画のホームページなどで寄付を呼びかけた。すると、「映画を日韓両国の政治家に見せたい」「日韓の文化交流に尽力した李藝を知ることは両国の未来につながる」などと、日韓両国から約2000万円が集まったという。
日本の政治家から従軍慰安婦制度を巡る発言が相次いだほか、韓国紙では「原爆は神の懲罰」とするコラムが掲載され、両国関係がぎくしゃくする中での公開。益田さんは「暗いニュースも多いが、民間での両国のつながりは確実に深まっていることを映画で伝えたい」と話している。
6月1日からシネ・リーブル梅田、8日から京都シネマで公開される。