酒どころ、灘五郷の一つ、西宮郷にある白鷹株式会社は、文久2年(1862年)創業の造り酒屋です。伊勢神宮御料酒を献上していることでも知られており、灘の酒らしいキリッとした味が特徴です。同社は地域の文化を守り伝承することにも力を入れており、能や文楽などの古典芸能や地場産業である日本酒に関するイベントなどを、自社の文化施設「白鷹禄水苑」で開催しています。白鷹禄水苑の総合プロデューサーとして、構想段階から企画・運営に携わる辰馬朱滿子さんにお話を伺いました。


 私は生まれも育ちも西宮で、小学校から高校までの12年間、阪急西宮北口駅を通って通学していました。当時は校則が厳しくて通学中に途中下車はできなかったのですが、駅の賑わいや電車の窓から眺めた静かな住宅街の風景は記憶に残っています。  西宮北口の魅力は、なんといっても便利さでしょうか。通勤や通学はもちろん、神戸、大阪、京都、宝塚、こういった繁華街や観光地に電車1本で行けるのは魅力ですね。 例えば美術館、博物館、寺社仏閣など、行きたいと思った時に気軽に動けるので、静かな環境に住みながら、いろんなところへ出かけることを楽しめます。
 戦後すぐ、今の芸術文化センターがあった場所に日芸会館という劇場があったそうです。能楽師のかたが中心になって作られた立派な劇場で、あの劇団民藝が旗揚げ公演をしたそうです。年月を経て、今同じ場所に兵庫県立芸術文化センターがあるというのも不思議なご縁ですね。
 西宮北口の北西部は昔から静かな高級住宅地でした。環境のよいエリアに住みながら、線路を挟んだ南側に行けば素晴らしい劇場があって、本物の音楽や芝居が楽しめる。こんなに身近に、自然に芸術にふれる機会があるなんて、素敵なことですね。

 大きな劇場が近くにできたおかげで、この辺りの人が気軽に芸術を楽しむ機会が増えていると思います。私も音楽を聴きに行った時に、ばったり同窓生と会ったことがあります。えっ、こんな趣味があったの?とお互い驚いたのですが、やはり近くに劇場があるというのは大きいですね。
 音楽を聴いたあと、駅の北側に戻って、甲風園や南昭和町あたりで食事をして帰る、というのが定番になっている人も多いですよ。駅の北西に、おしゃれな飲食店が増えました。お友達と食事をしながら、劇場の余韻を楽しめるのがいいですね。最近友達がこのエリアに家を建てました。やはり環境の良さや便利さで選んだのだと思います。

 大学時代を過ごした東京では、青山や原宿といったおしゃれなエリアが近くでしたが、ずっと西宮の方が住みやすいと思っていました。阪神間は北側に山があって、南に海がある。どの場所にいても山を見て方向がわかりますし、自然を間近に感じられる安心感がありますね。

 白鷹禄水苑は、明治時代に辰馬家が住んでいた蔵元の住居を再現したものです。当時、実際に使われていた家具や生活道具の展示の他に、伝統芸能を中心に様々な文化イベントを開催しています。オープンから12年、街の皆さんが文化を大切に育てようとしているのを実感し、ますます良いものを発信していきたいと思っています。

白鷹禄水苑
西宮市鞍掛町5-1
TEL.0798-39-0235
http://www.hakutaka-shop.jp/