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【暗躍列島を追う】対馬で韓国排除の動き 親韓派は仏像騒動で肩身が狭くなって内部分裂
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「韓国の裁判所が、対馬・観音寺の観世音菩薩坐像を、韓国人窃盗団が盗んだものと認定しながら、『(韓国由来のものなので)当面返還を差し止める』という仮処分を出したのは、どういう了見なのでしょう」
こう憤るのは、対馬協議会の友納徹事務局長(一般社団法人IIFG副理事長)だ。
ただ、この件は対馬に思わぬ変化をもたらした。島最大のイベント「対馬厳原(いづはら)港アリランまつり」(8月4日)から、20年ぶりに「アリラン」の文字が削除されたのだ。
対馬は、韓国・釜山から高速船で約2時間半。年間10万人近くの韓国人観光客が訪れる。最大の繁華街、川端通りには韓国人向けの民宿やホテル、土産物屋などが並び、道路標識や公共の建物などにもハングルが併記、リトル韓国の様相を呈している。
朝鮮通信使行列などを復活させ、対馬にコリアン・ブームを作ったのは、大阪出身の商工会幹部を中心とするアリラン派(親韓派)。観光客が大勢訪れ、島の経済が潤えばいいではないかと思えるが、事はそう単純ではない。
「彼らが泊まるのは韓国人経営のホテルや民宿で、島民が霊山とあがめる白嶽では貴重な薬草を根こそぎ採る。海では禁じられているまき餌をして高級魚を釣り、アワビやサザエの密漁をする」(漁業関係者)
天皇皇后両陛下の行幸啓記念碑がある場所は韓国人専用のリゾート施設になり、日本人は立ち入り禁止。
日本人名義でひそかに買収された民宿や土地も多く、「島を韓国人に乗っ取られる」(友納氏)という不安が地元に広がっていたのだ。
実際、2005年には韓国・馬山(マサン)市議会が「対馬は慶尚南道に属する韓国領土」とする条令を制定。08年7月には退役軍約20人が対馬市役所前に押しかけ、自らの指を食いちぎって韓国国旗に血をしたたらせて「対馬は我が領土!」と叫んだ。翌年1月、島内の観光名所・鰐浦(わにうら)の展望台に「対馬は韓国領土」と書かれた看板が立てられた。
こうした韓国侵攻の象徴となっていたのが「港祭り」にアリランの文字があったことなのだ。
「アリラン派は仏像騒動で肩身が狭くなり内部分裂。祭りから『アリラン』の削除案はすんなり通り、多くの島民は『本来の祭りに戻った』と喜んだ」(商工会の女性)
だが、問題がすべて解決したわけではない。
「自民党政権になり、今年7月から林野庁による韓国資本の土地買収調査が始まったが、随行した山林組合幹部によると『買収された土地は想像以上で、政府関係者も驚いていた』といいます」(友納氏)
国境の島を守るため、政府は日本人観光客の誘致促進など、対馬経済を活性化させる早急な支援対策が必要だろう。
■大高未貴(おおたか・みき) 1969年、東京都生まれ。フェリス女学院大学卒業。ダライ・ラマ14世や、PLOのアラファト議長などにインタビューし、95年にジャーナリストとしてデビュー。世界100カ国以上を訪問し、潜入ルポなどを発表。著書に「神々の戦争」(小学館)、「冒険女王 女一人シルクロード一万キロ」(幻冬舎)「日本被害史」(共著、オークラNEXT新書)など。