WINEPブログ
セシウムによるコンクリート汚染に端を発して、福島県が「他の建築資材についても水平展開して調査する必要がある」。その際材木や製材について「国の基準値10万cpmを下回るものだけを出荷する体制を整える」としている。
だが、この10万cpmには少し納得がいかない。
ちなみに、手元のベータ線測定用のガイガーカウンターAlokaTG3-133で、「セシウムの標準サンプル」を密着して測ると3600 cpmを示した。同じ標準サンプルをガンマ線測定用線量計AlokaTCS-172で測定すると6.59 マイクロシーベルト/時間(:µSv/h)であった。だから、単純に外挿するとガイガーカウンターで10万cpmという値は、線量計では
(6.59 µSv/h ÷ 3600 cpm) x 100000 cpm = 183 µSv/h
となる。これはべらぼうな値である。
下記の記事によると県当局は、10万cpm以下の建材なら、汚染地帯から流出してもいいといっているのである。仮に、これに近い放射能を含む材木を住居の室内に使い、その柱にもたれかかって放射線を浴びつづけると、わずかに10時間で1ミリシーベルト(mSv)という年間被爆線量基準値を越えることになる。だからこの基準はちょっとおかしのではないだろうか。
誰が10万cpmという基準を設定したのか知らないが、これはあくまで、東電福島第一原発が暴発した当初、しばらくの間放射性ヨウ素-131(I-131)による被爆が主流汚染源と考えられたので、暫定的に設定された基準なのではないだろうか。
I-131はエネルギーが強いベータ(β)線を出すからガイガーカウンターでの計数効率が良い。しかし、セシウムは主としてガンマ(γ)線源であるから、計数効率はガイガーカウンターでは格段に悪いのである。
すでに周知のように、今は東電福島第一原発由来の半減期8日間の放射性ヨウ素は完全に我々の環境から消失している。その代わりに、Cs-134とCs-137が主流の外部被爆をもたらす汚染源である。だから、この暫定基準は、セシウムを基準にした値に早急に見直さなくてはならないのではないだろうか。
こんな不明瞭な基準だから、自動車などが易々と、避難区域から逃れて外国にまで売られていったのであろう。木材も取り返しがつかなくなる前に、基準を見直して、早急に検査態勢を整備しなければ危ないと思う。この問題は県レベルでなく当然国がなすべきことであろう。
県産材、出荷前検査へ 県が態勢整備急ぐ
県は新年度、建設資材用の県産材について、放射線の出荷前自主検査態勢を構築する。県木材協同組合連合会の地区組合に放射線測定器を配置する方針で、測定器の購入費を補助する方向で検討している。建設資材をめぐっては、浪江町内で保管されていた砕石を使ったコンクリートから比較的高い放射線量が検出されたため、県は出荷前検査の態勢整備を急ぐ。
16日の県議会政調会で明らかにした。県が自主検査の対象とするのは、東京電力福島第1原発事故後に伐採された材木や、屋外で天然乾燥された製材。出荷前に放射線測定器で放射線量を確認し、国の基準値10万cpmを下回るものだけを出荷する態勢を整える。
(2012年1月17日 福島民友ニュース)
砂利、製材を線量調査 県、経済産業省
二本松市のマンションで放射性物質に汚染された疑いがある砕石を原料にした生コンが使われた問題で、県と経済産業省は17日、東京電力福島第一原発事故当時、屋外に置かれていた砂利や製材などの建設・建築資材の調査に入る方針を固めた。計画的避難区域と特定避難勧奨地点周辺の土木、建築関連業者を対象に出荷先などを調べる。::::
県と経産省は砕石と同様、屋外に置かれていた砂利や砂、製材についても放射性物質が付着した可能性があるとして調査に乗り出す。
浜通り北部や県北地方などの計画的避難区域、特定避難勧奨地点の周辺を中心とした建設業者や製材、建築業者らに原発事故当時、屋根のない屋外の敷地に置いていたかどうか聞き取る。該当する資材があれば出荷先を特定し、放射線量を測定する考えだ。
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県幹部は「砕石で発生した問題を水平展開し、他の建築資材についても早急に調査する必要がある」としている。
(2012/01/18 09:19)
(森敏)
付記: cpm (counts per minute) は放射線測定器による1分間あたりの計数値
追記: 結局以下の厳しい基準になりそうである。
砕石の出荷基準1キロ100ベクレル以下に 経産省の検討会(2012.2.29.朝日新聞)
マイカー持ち出しに数値が載ってました。
http://www.town.futaba.fukushima.jp/oshirase/ichijitachiiri/09.html