そこが聞きたい:麻生副総理「ナチス」発言 ゲプハルト・ヒールシャー氏
毎日新聞 2013年08月14日 東京朝刊
日本は第二次大戦後、生まれ変わったと理解してきた。憲法も天皇主権、帝国主義から国民主権、平和主義に改められた。ところが、分断されたドイツに育ったヒールシャーさんは「日本は戦後も国が継続している」と言い、あいまいな戦後処理の根源をそこに見る。68年たつのに置き去りにされていること、小さな声を上げている人たちの話に耳を傾け、今からできることを考えなければならないと思う。こっそりと元に戻す前にやるべきことはたくさんある。
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■ことば
◇1 麻生副総理の「ナチス」発言
改憲と国防軍の設置などを提言する「国家基本問題研究所」が7月29日、東京都内で開いた討論会で「ドイツのヒトラーはワイマール憲法という当時ヨーロッパで最も進んだ憲法の下で出てきた。ワイマール憲法はいつの間にかナチス憲法に変わっていた。あの手口、学んだらどうかね」と発言。「誤解を招いた」と撤回したが、5野党が罷免を求めた。
◇2 ボン基本法
戦後、東西に分かれたドイツのうち、西ドイツで1949年に作られた憲法。各州代表で組織した評議会がボンで制定し、米英仏3国の軍司令官が承認した。90年までに35回改正された。ドイツ再統一の際、適用範囲を旧東ドイツを含む全域に改めて、現在まで存続している。
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■人物略歴
◇Gebhard Hielscher
1935年、東プロイセンの旧ティルジット(現ロシア領)生まれ。67年来日。71〜2000年、南ドイツ新聞特派員。日本外国特派員協会会長も務めた。