カバード・コールのリターンは、インデックス(市場の平均)を上回る

さて、ここでおさらいをしましょう。統計学的事実からは、市場の平均に勝ち続ける天才級の投資家の存在が示唆されます(KosowskiFama)が、私を含めてほぼすべての投資家は、「まぐれ」以上に市場の平均に勝つことはできません。

 

アクティブ投資のリターンは、それらの平均(=市場の平均)よりいいのもあれば、悪いのもあるのは当然です。そして、その平均値は中央値より必ず高いので、アクティブ投資の半数以上は平均値、つまり市場の平均以下のリターンしかあげられないことは必然です。これは、ファンダメンタル分析が難しいとか、市場が効率的かということとはまったく別のことです。理論的にも、経験的にも、リターンの平均は「インデックス(市場の平均)>アクティブ投資」なので、平均的に見れば、「ファンダメンタル分析は労多くして、益なし」ということになります。

 

インデックス(市場の平均)のリターンをさらに上回るのが、そのインデックスを原資産とするカバード・コール (CCW) や現金確保プット売り (CSP) です。

 

このCCWCSPについてもインデックスがあります。インデックスがたくさん出てきて、頭が混乱しそうですが、(米国市場の大型株500社の時価総額加重平均により算出される)S&P 500というインデックスを原資産とする2% アウト・オブ・ザ・マネーのカバード・コール(CCW)のインデックスがBXYです。

 

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上の図は、遡って1988年から25年間のBXYとBXM(ATMのCCW)のチャートです。BXYとBXMは、S&P 500と比べて、リターンは多く、ボラティリティは低くなっています。投資家としてこれを利用しない手はありません。

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また、Kapadiaは(Russell 2000という米国小型株2000銘柄のインデックスである)IWMを対象にして、15年間のリターンを調べています。


それによると、
5% アウト・オブ・ザ・マネーが最もリターンがよく、シャープ・レシオも最高となっています。RUTTRが、IWMの配当込のリターンです。
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ファンダメンタル分析は労多くして、益僅少

米国の個人投資家(セミ・プロ?)が意見を述べるサイトとして、Seeking alpha は有名です。レベルは、我が国の同様のサイトに比べて、はるかに高いです。市場に「非効率的」な部分があるとしたら、やはり小型株でしょう。しかし、小型株に投資するとしたら、それなりの専門的な知識が必要です。私にその知識があるとすれば、ヘルスケア・バイオ関係だけです。バイオ関係の会社はほとんど赤字ですから、PERなどの単純な指標で判断することはできません。


BioTodayMEDICINE BLOGというサイトでは、開発中の医薬品の効果、副作用などについての論文や学会発表を、一部だけですが、見ることができます。それらの医薬品を開発している会社の大部分は、聞いたこともない小さな会社です。一般の方が論文を入手するには、それだけで1本30ドルぐらいかかります。本格的に、ファンダメンタル分析をする場合は、これらの論文を入手して読む必要があるでしょう。この作業は、ふつうの「週末投資家」には、時間的に、能力的、あるいは金銭的にも、とてもできません。もちろん、これらを全部読んだとしても、ファンダメンタル分析ができるというわけではありません。必要条件であり、十分条件ではありません。

トランスレーショナルリサーチの展開により、新規抗体医薬品・分子標的治療薬が次から次へと上市されて、今や、実にfruitfulな時代を迎えようとしています。 それで、ファンダメンタル分析をする能力も、時間もない「週末投資家」の私は、主に、ETFのIBBに投資しています。これはNasdaqに上場している、バイオ企業(およびジェネリック会社)に広く分散されていて、週末投資家が投資するのには、とてもいいと思います。どのバイオ企業がブレイクするかわからないから全部買うということです。「分散は無知と知れ」と言う人がいますが、そういうことを言う人こそ、無知か、馬鹿です。

"Money Never Sleeps" by Covered Call

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Money Never SleepsというCovered Call というバンドのCD、 ロックですが、5曲目の"Anything You Want"はバラードで、なかなかいいです。

今月のオプションのトレードおよびポジション

MSFTが決算発表を受けて、急落しました。今、MSFTの株価は32ドル近辺です。私は、ファンダメンタル分析はできないので、なんとも言えませんが、2015年1月の時点で25ドル以下には下がらないだろう、そして2015年1月までのいつかには、35ドルを上回るだろうという根拠がない予想で、LEAPS (Jan. 2015) の35 call のロング・ポジションとLEAPS (Jan. 2015) の25 put のショート・ポジションを取りました。本にも書きましたが、これは「趣味」です。


もし2015年1月までに、MSFTの株価が35ドルを超えて、ITM (イン・ザ・マネー)に入れば、LEAPS (Jan. 2015) の35 call の価格は、(株価-35+時間価値)ドルになり、当初私が買ったcall の価格を大幅に上回ります。その時点で、call を売れば、投資金額の何倍もの利益になります。

一方、2015年1月の時点で、株価が25ドル以下なら、put を買い戻さない限り、25ドルでMSFTの株を買わなければいけません。しかし、潰れることはないでしょう。そのまま持って、CCWに移行します。

その他には、IWMのCCWはexerciseされ、IYRのCCWとSPYのLDSはcontinurd tradeです。赤字はショート・ポジション。

1. CSP

  • 69 put IWM  (Jan. 2014)
  • 70 put IWM (Jan. 2014)
  • 103 put IWM (Aug. 2013) - STO
  • 74 put QQQ (Aug. 2013) - STO
  • 25 put MSFT (Jan. 2015) - STO
2. CCW
  • 69 call IYR (Sep. 2013) - continued trade 
3. Long LEAPS
  • 35 call MSFT (Jan. 2015) - BTO
4.  LDS

  • 105 call SPY (Dec, 2014)
  • 169 call SPY (Sep. 2013) continued trade

日本の科学におけるポジション

昔から”Publish or perish”という言葉があるように、大学の教員や医師は、自分がした仕事を最終的に論文に書かないと評価されません。その論文が権威あるジャーナルにacceptされるということは、非常に名誉なことで、しかも自分の出世に非常に大きな影響を与えます。どのジャーナルが権威あるかを知るのに有用なのは、Thomson Reutersが毎年発表している Impact factorです。理科系の人はご存知だと思いますが、Impact factorは、簡単に言うと、そのジャーナルに載っている論文がどのぐらい他の論文に引用されているかを指数化したものです。その Impact factorが先月発表されました(非公開)。

 

それによると、今回も、基礎科学系では、Natureが38.597で、1位でした。2位はCellで、31.957、3位はScienceで、31.027でした。Scienceは20年ぐらい前は1位だったのですが、最近元気がありません。

 

次に、個別の大学のランキングを見ていきましょう。これには実に多くの会社や機関が独自にランキングを発表しています。それらを見ると、規模、留学生の比率、外国人教師の比率、図書館の蔵書数、同僚学者からの評価などを合計するものが多く、藤原正彦氏の言葉を借りれば、「人間を評価するのに、IQと肺活量を足すようなもの」です。

 

私は、大学における「研究の質」を評価するものとしては、Nature Publishing Indexがシンプルで、一番いいと思います。Nature Publishing Indexは、Natureに何本論文が載ったかを指数化したものです。そのNature Publishing Indexですが、東大は9位と昨年の6位から順位を落とし、ほかにトップ100に入っている26位の京都大学、36位の大阪大学、65位の名古屋大学、84位の東北大学も、名古屋大学以外軒並み順位を前年より落としています。これを一時的なものと見るか、日本の科学の退潮の始まりと見るか、注目したいと思います。アベノミクスでは、トップ100に日本の大学を10校入れることを目標にしていますが、現状では5校のみ。トップ100に入るのは、旧帝国大学の7校+αが候補でしょうか?

 

Thomson Reutersのデータ・ベースで分野別に、日本の得意・不得意なものを見てみると、物理、地球科学、宇宙科学、材料科学、化学、免疫学、神経科学は比較的強いようです。その一方、社会科学、精神医学、経済学、環境学・エコロジー、数学の分野では、日本は質・量ともに存在感がまったくありません。環境学・エコロジーは日本は進んでいると、思っていたので、この結果は意外でした。少なくても、この分野の大学の教授たちは論文を書いていないのは事実ですが、実際の水準はどうなのでしょうか?

夏休みの読書

マルキールの「ウォール街のランダム・ウォーカー」は、間違いなくいい本ですが、多くの人が絶賛しているので、ここでは、「投資4つの黄金則」を推薦したいと思います。著者は素人(医師)ですが、非常に多くのエビデンスをあげていて、説得力があります。既に絶版ですが、幸いなことに、Kindle版の、"The Four Pillars of Investing"は1670円で、米国Amazonで買うのとほぼ同額です。

まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」も、少し読みにくいですが、いい本です。

株式投資と数学は切っても切れない関係ですが、興味のある方には、「天才数学者はこう賭ける―誰も語らなかった株とギャンブルの話」がお勧めです。タイトルが似ていますが、凡庸な数学者が自らの恥ずかしい経験談を述べただけの「天才数学者、株にハマる 数字オンチのための投資の考え方」と間違えないようにしてください。カスタマーレビューを読めば、カスタマーの質がいかに低く、そのレビューはあまり当てにならないかがわかります。

最後に、Vanguardのボーグルが書いた、「波瀾の時代の幸福論 マネー、ビジネス、人生の『足る』を知るを読んで、心を洗ってください。これも絶版なので、「Enough: True Measures of Money, Business, and Life 」のkindle版がいいと思います。カスタマーの評価は、nが少ないときは、とくに当てにならないので、こちらを見てください。

Portfolio as of Jun. 29

私は金融機関に勤めているため、日本株のETF以外の個別銘柄(REITも)の売買には、事前に面倒くさい手続きが必要で、事実上「売買禁止」なので、最近はまったく売買していません。ウエイトもほとんどないですが。

時間に余裕がある者同士で、顧問や相談役から時々飲みに誘っていただきますが、やはり、頂点を極めて人の話は、面白いです。

「第2の柱」と「第3の柱」では、ここ数か月、KXIのウエイトを少し落とし、BRK-BとIBBを増やしました。イタリックは個別銘柄ですが、全くの趣味です(BRK-B以外)。

KXI
18.7%
BRK-B
14.8%
VB
13.4%
IBB
12.8%
SDY
12.1%
VSS
10.0%
VWO
6.7%
PXF
4.0%
PFE
1.1%
LLY
0.7%
AMGN
0.7%
JNJ
0.6%
SGEN
0.6%
MRK
0.3%
日本株
3.5%

第1の柱 - CSP, CCW and LDS

今月は、CSPがexerciseされ、久し振りにCCWに移行しました。赤字は、ショート・ポジションです。

1. CSP
  • 69 put IWM  (Jan. 2014) 
  • 70 put IWM (Jan. 2014) 
2. CCW
  • 98 call IWM (Jul. 2013) - STO
  • 67 call IYR (Jul. 2013) - STO
3.  LDS

  • 105 call SPY (Dec, 2014)
  • 160 call SPY (Jul. 2013) - STO

DPP-4阻害剤のアウトカム試験

糖尿病の薬で、DPP-4阻害剤と呼ばれる薬は、確実な血糖値の低下と、その一方の(一時的な)低血糖などの副作用の少なさで、ここ数年糖尿病治療薬として、急激にシェアを伸ばしてきました。世界で一番売れているのは、最初に発売されたMRKのsitagliptin (Januvia)で、二番目に売れているのがAZN/BMSのsaxagliptin (Onglyza)です。後者は日本では7剤目のDPP-4阻害剤ですが、間もなく協和発酵キリンから販売されます。

Saxagliptin (Onglyza)は、2009年にFDAが糖尿病薬承認の条件に、アウトカム試験を要求するようになってから初めてFDAに承認された薬です。アウトカム試験とは、実際に心筋梗塞やそれにより死亡を減らせるかどうかを実証する試験です。Zetiaのところでも強調しましたが、薬の目指す所は、データの改善ではなく、アウトカムの改善です。

当然ながら、DPP-4阻害剤はどれもほぼ同じ作用機序なので、差別化が難しいのですが、saxagliptin (Onglyza)は、承認後のアウトカム試験がsitagliptin (Januvia)より進んでいました。先週聞いた、Onglyzaの説明会でもそのことが強調されていました。そして、SAVOR-TIMI-53というPhase 4(販売後)の治験の結果がセールス・ポイントになると期待されていました。しかし、先週、衝撃的な結果が出ました。その治験で、saxagliptin (Onglyza)は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞の複合エンドポイントで、placeboと比較して差を出せませんでした。

9月の
 European Society of Cardiology (ESC) 2013 Congressで詳細が発表されるので、確認したいと思います。Zetiaの二の舞にならないことを期待しています。

「知の鎖国」

少し古い本ですが、Ivan Hall という知日家が、1998年に書いた「Cartels of the Mind」は、「知の鎖国―外国人を排除する日本の知識人産業」として邦訳されています。弁護士、マスコミ、外国人教員、科学者などの分野を例に挙げて、日本人社会の外国人に対する閉鎖性を指摘しています。例えば、本書によれば、東大以外は、外国人を日本人と同等の終身在職の条件で教員として採用していないとのことです。

制度的には、本が書かれた当時と比べて、「表面的」には多少変わっているかもしれませんが、日本人の偏狭な「島国根性」は、現在もそのままです。

現在の他大学の状況は知りませんが、東大でさえ、2007年のデータでは、「外国人教員」の比率は6%と、ケンブリッジ大学の41%、ハーバード大学の31%に比べると桁違いに少なく、留学生の比率も、東大の8%に対し、ケンブリッジ大学の27%、ハーバード大学の20%と比較になりません。また、米国で学位を取得した学生の比率は、日本は全体で2%に過ぎませんが、中国は30%、韓国は9%です。医学部はやや特殊で、東大の場合、卒業後、およそ半数の人が米国などに留学していますが、それでも大部分は2,3年の留学で、米国で終身のポストを得た人は、ごくわずかです。

日本人は外国人を受け入れない。そして、日本人は外国に出ていかない。

このような「知の鎖国」については、日本の個人投資家も同じです。なぜ、日本の個人投資家は、米国の証券会社に口座を開設することをためらうのでしょうか?米国口座を開設すれば、最も効率的と思われるCSP & CCW ができるので、積極的に米国に口座を開設するといいと思います。

「カリスマ投資家」は存在するか?

投資信託の広告を読むと、どれもプラスのα(超過リターン)が得られるかのように書かれています。それで、投資の初心者はプロが運用する投資信託のパフォーマンスはいいと思ってしまいます。しかし、少し考えれば、すべての投資信託の(コスト控除前の)αの合計は0なので、プラスのリターンをもたらした投資信託もあれば、マイナスのリターンをもたらした投資信託もあるという、当たり前のことに気が付きます(機関投資家が運用しているファンドもほぼ同じです)。信託報酬などのコストも考えれば、トータルのαはマイナスです。年率で、-1%ぐらいのαになると思いますが、この数字は決して小さくはありません。

 

マルキール教授など効率的市場仮説を強く支持している人たちは、運用成績がいいファンドは、単に運がよかっただけと考えています。また、パフォーマンスのよかったファンドは翌年のパフォーマンスは悪くなる傾向が強いと考えています。それで、「ウォール街のランダム・ウォーカー」を読んだ、少し知識のある個人投資家の多くは、「カリスマ投資家」は存在しないと思っているでしょう。


しかし、「カリスマ投資家」は、本当に存在しないのでしょうか?

 

これに対する興味深い考察を、2006年、Kosowski は、The Jounal of Financeに発表しました。彼は、Carhartの4ファクター・モデルによる投資信託のαをブートストラップ法で解析することにより、優れたファンド(上位10%)のパフォーマンスは、コスト控除前もコスト控除後も、単に運がよかった以上に、ファンド・マネージャーの腕がいいことを示しました。例えば、1788本の投資信託のうち、少なくても5年間の期間中年率10%以上のαのファンドは、偶然では9本のファンドしかない計算ですが、実際には29本ものファンドがありました。

 

また、とくにグロース指向のファンドでそのことが顕著で、インカム指向のファンドは一見パフォーマンスがいいように見えても、それは単に運がよかっただけでした。さらに彼は、過去3年間パフォーマンスがよかったファンドは次の年のパフォーマンスもいいことを証明しました。その逆もまた然りです。


次いで、2010年、Fama は、投資信託について、CAPMとCarhartの4ファクター・モデルにおけるαをブートストラップ法で解析しました。Kosowskiの方法とは、対象期間や解析方法が少し異なるのですが、彼は、優れたファンドでもコストを吸収するだけのパフォーマンスは得られなかったと述べました。その一方で、コスト控除前のリターンについては、腕がいいファンド・マネージャーがいるというエビデンスがあるとも述べています。

 

ところで、なぜ、ブートストラップ法を用いて検証したこれらの結果は、従来の検定とは違う結果になるのでしょうか?


従来の伝統的な統計学でまず問題となるのは、正規性の仮定です。ブートストラップ法は、モデルの仮定は必要なく、標本の分布は母集団の分布を再現していると考えて、観測されたデータのみに基づいてコンピュータで大量の反復計算を行って、母平均などの母数を推測するものです。

 

上記の論文が示唆するように、おそらく、(運ではなく)腕がいいファンド・マネージャーは、実際に存在するのでしょう。しかし、その一方、(運ではなく)腕の悪いファンド・マネージャーがいるのも事実です。

 

(私のような)凡庸な個人投資家は、やはり、ETFを原資産とするCSP & CCW をするのが賢明だと思われます。

 

「ファンダメンタル・インデックス」は有効か?

等金額加重インデックスの話をしたので、次にファンダメンタル・インデックスについて、少し書きます。ご存知の方も多いかと思いますが、「ファンダメンタル・インデックス」とは、LLCというファンド会社の会長のArnottが時価総額加重インデックスに代わるインデックスとして2005年に提唱したものです。私が「東大卒医師が教える科学的株投資術」を書いた2006年の直前に発表されたので、この論文のことは今でも鮮明に覚えています。

 

Arnottは、時価総額加重インデックスは、割高な株式をオーバーウエイトし、割安な株式をアンダーウエイトさせているので、仮説上のフェアバリュー加重戦略に対するリスク調整後リターンを低下させることになると考え、それに代わるインデックスとして、ファンダメンタル・インデックスを考案しました。具体的には、下記の4項目から企業規模を尺度としてウエイトニングします。

  • 自己資本
  • キャッシュフロー(5年間の平均)
  • 配当総額(5年間の平均)
  • 売上高(5年間の平均)

Arnottは、1962年から2004年までの米国市場における「ファンダメンタル・インデックス」のリターンを調べたところ、参照ポートフォリオに比べて、年率2.12%の超過リターンが得られたと述べています。超過リターンのt値は3.26で、CAPMのαに対するt値は3.87でしたが、その論文にはt値が統計学的に有意かどうかの記載がありませんでした。

 

ほぼ同じころ、野村総研の田村氏は、「アナリスト ジャーナル」に、ファンダメンタル・インデックスのグローバル版を構築し、国ごとのパフォーマンスを発表しました。それによると、1998年から2005年までの米国市場でのファンダメンタル・インデックスの1年間の超過リターンは2.13%ですが、超過リターンに対するt値は1.55で、5%の有意水準で有意差がありませんでした。参考までに、日本、英国、カナダ、オーストラリアなど、先進国23カ国中、13カ国で有意で、米国以外では、ドイツ、フランスなどでは有意差は出ませんでした(なお、米国市場では、CAPMのαに対するt値は5%の有意水準で有意でした)。

 

2009年、Walkshauslは、Arnottの方法でグローバルのファンダメンタル・インデックスを調べました。彼は1982年から2007年までの1年間のSharpe retio(=超過リターン/標準偏差)をbootstrap法で解析しましたが、米国市場では有意差がでませんでした。有意差が出たのは、先進国では、日本、ドイツ、フランス、カナダ、オーストラリアなど28カ国中11カ国、新興国ではマレーシア、タイ、シンガポールの22カ国中3カ国でした。米国以外では英国、ブラジル、中国、香港、インド、フィリッピン、韓国、台湾、トルコ、ロシアなどでは有意差が出ませんでした(グローバルでは有意でした)。


さらに、Walkshausは、RomanoのStepM法でαを検定すると、上記の先進国・新興国の45カ国中6カ国でしか有意差が出なかったと述べていて、国のレベルでは、ファンダメンタル・インデックスが時価総額加重インデックスを超えるという頑強な証拠はないと結論付けました。

これは「機械的銘柄選択法」の有効性を信じていた私には、衝撃でした。 

Euphoria

犬でも儲かる相場が続いています。軽薄な経済誌では、株価上昇の記事が多くなっています。駄本も増えてきました。今がピークか、さらにその先にピークがあるかは、私にはわかりません。

オプションに関しては、CSP & CCWについては、毎月、機械的に同じことをしているので、とくに言うことはありません。現状、CSPだけです。こういう相場では、S&P 500に負けているかもしれませんが、気にしません。

Long LEAPSは、もはやLEAPSではありませんが、27 call PFE (Jan. 2014) がITMに入り、大分いいプライスになったので、清算しました。PFEのStockも、一旦売りました。

GW中の株式投資の復習

順番が逆ですが、GW中に時間があれば、株式投資の復習をしましょう。

まずは、定番の「ウォール街のランダム・ウォーカー―株式投資の不滅の真理 」 をお勧めします。この本に注文があるとすれば、株価がランダム・ウォークする場合、長期的な株価のリターンがどのようになるかを説明してほしかった点です。実際には、株価は短期的には正の系列相関があり、ランダム・ウォークはしませんが、ランダム・ウォークしていると仮定した場合の長時間後の株価の確率分布を知ることは、決して無駄なこととは思いません。

微小時間後の株価変動率が正規分布すると仮定した場合、T年後の株価変動率の単利表示は正規分布しません。連続複利表示の株価変動率が正規分布するのです。ボラティリティは、この1年あたりの連続複利表示の株価変動率の標準偏差ですが、このボラティリティがT年後の株価変動率に非常に大きな影響を及ぼします。

投資信託のブログ」から全面的に拝借すると、期待リターンが5%で、標準偏差(ボラティリティ)が10%の株式の1年後から10年後までの株価の分布は下記のようになります。濃赤が1年後で、水色が10年後の株価の確率分布です。

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一方、期待リターンが5%で、標準偏差(ボラティリティ)が30%の株式の1年後から10年後までの株価の分布は下記です。

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これを見れば一目瞭然ですが、ボラティリティが小さな株式は、平均値、最頻値、中央値ともに経過とともに上がりますが、ボラティリティの大きな株式では、最頻値、中央値は、10年後には1以下、つまり当初の投資金額以下になる確率が高くなります。

さらに、実際の株価の対数リターンは、左側に長い裾を持つことが知られています。このことが示唆することは極めて重要で、現実の世界では、株価は長期投資で上記のグラフ以上に下落する可能性が高いということです。

GW中のオプションの勉強

GWです。サルでも儲かる、いや、イヌでも儲かる相場が続いています。私のオプション取引も儲かっています。ロング・オンリーの個人投資家の多くも儲かっていると思いますが、これを自分の実力と勘違いしないでください。

ところで、株式投資とオプションの間には、結構大きなクリフがあるようです。個人投資家の株式投資のブログから、このブログへのリンクがほぼ皆無なことがそれを証明しています。私は、多くの人にオプションを知って欲しいと思います。そのためには、少しだけ勉強が必要ですが、まずは、吉本先生の

金融工学の悪魔―騙されないためのデリバティブとポートフォリオの理論・入門 

がいいでしょう。真面目な内容だけに、タイトルがやや残念です。

オプションがなんとなく理解できたら、私の本を読みましょう。これでCCWはできるようになります。

さらに、勉強したい人には、CCWの教科書とも言える定番をお勧めします。

New Insights on Covered Call Writing: The Powerful Technique That Enhances Return and Lowers Risk in Stock Investing
 
また、LDSについては、

Understanding Leaps: Using the Most Effective Option Strategies for Maximum Advantage

これは、キンドル版もあるので、今すぐにでも読めます。 

多くの人が、euphoricになっています。海外の不動産の現物を買う人もいるようです。不動産は、国内でも大変なのに、海外の不動産を買うなんて、私には理解できません。ここは、手綱を引き締めて、CSP&CCWで行くのが、賢明と思われます。

国別のインデックス投資

「第2の柱」は、インデックス投資ですが、インデックスにもいろいろあるので、選択が大変です。時価総額加重インデックスが「ほぼ最適解」と考えるなら、VT (Vanguard Total World Stock Index ETF) 一本でもいいのですが、暇な個人投資家は、個別銘柄の選択はできないとしても、せめて国別やセクター別のウエイトを変えたいと思ってしまいます。

先進国間においては、バリュー効果ははっきりしていて、PERなどのバリュー指標が低い国の株価のパフォーマンスがいいことは確認されています。

一方、新興国間においてはどうでしょうか?新興国間においては、株価リターンがGDP成長率との相関がないことは当然として、さらに、バリュー指標とも相関していません。つまり、PERなどが低い国へ重点的に投資しても、得られる果実は少ない可能性が高いということです。さらに、為替との相関もありません。

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インデックスとサル(2)-等金額加重ポートフォリオ

相変わらず、サルでも儲かる相場です。と書くと、 ファンド・マネージャーよりいい成績を上げているサルに失礼です。

サルがランダムに銘柄を選んで組んだポートフォリオのリターンの平均値は、等金額加重ポートフォリオのリターンにほぼ一致します。その等金額加重ポートフォリオのリターンが、時価総額加重ポートフォリオのリターンよりいい理由は、Playkhaの論文によると、小型株効果、バリュー株効果に加えて、リバランス効果によります。リバランス効果は、1か月ごとのリバランスでは効果が大きいですが、6か月ごとのリバランスでは、効果はほぼ0になります。

前々回に書いた、MotsonとClareの論文の、サルがランダムに銘柄を選ぶ方法は、時価総額加重インデックスに対しては、ほぼ全勝でしたが、これは1年ごとにリバランスしているので、リバランス効果はほとんどなく、サルの勝因は、主として、小型株効果、バリュー株効果によるものと思われます。

S&P 500での等金額加重ポートフォリオに追随するように設計されたETFには、Guggenheim S&P 500 Equal Weight (RSP)があります。Russell 2000では、Guggenheim Russell 2000 Equal Weight (EWRS)です。これらの等金額加重ポートフォリオは3か月ごとにリバランスされので、リバランス効果は限定的と思われ、これらが時価総額加重ポートフォリオにアウトパフォームするとすれば、その源泉の大部分は、小型株効果、バリュー株効果によるのでしょうか?もっとも、EWRSのリターンは、現状ではIWMに劣後しています。

個人的には、これらを勘案すると、やはり、WisdomTree SmallCap Earnings (EES)が米国市場におけるベストETFと思います。私は、以前はこれを持っていましたが、今は持っていません。その理由は、EESより、CSP & CCWのほうが魅力的に思われ、IB証券では、専らそれに注力しているためです。

また、こういう相場なので、本にも書いた、「柱の補強」のLEAPSのコール買いで、27 call PFE が威力を炸裂させています。

インデックスとサル(1)-下手の長考、休むに似たり

投資信託のリターンは半数以上(7割ぐらい)が、時価総額加重インデックス以下ですが、総体として、投資信託は「プロ」が運用するファンドとほぼ同じであると見なせば、リターンの平均がプラスの時は、必ず「平均値>中央値」が成り立つので、これは当り前のことです。わかりやすく言えば、ファンドの平均値は、ごく少数の突出したリターンをもたらしたファンドによって、中央値よりは高くなります。

一方、時価総額加重インデックスより、PBRやPCFR
などで銘柄を機械的に選択した代替インデックス、あるいはArnottの "Fundamental Index" ほうがリターンがいいということは広く知られているところですが、最近のMotsonとClareの論文によると、サルがランダムに銘柄を選ぶ方法は、これらのインデックスと同等か、それ以上のリターンをあげました。

具体的には、大型株1000銘柄から
、サルがランダムに、1回あたり0.1%のウエイトで1銘柄を選ぶことを1000回繰り返します。銘柄が重複しても、そのまま継続します(同じ銘柄を2回選べば、ウエイトは0.2%、3回選べば、0.3%になる)。そして、1年ごとに銘柄を入れ替えます。この方法を1000万回シミュレーションした結果、時価総額加重インデックスはサルにほぼ全敗で、低PBRの代替インデックスでも10%以下しかサルに勝てませんでした。高配当利回りの代替インデックスでは30%以下しかサルに勝てず、低PCFRでは半々でした。つまり、サルは時価総額加重インデックスより、圧倒的に優れたリターンをたたき出し、低PCFR代替インデックスと同等のリターンです。ちなみに、低PSRのリターンが最もいいのは、O'Shaughnessyの結果と同じです。データ・ソースがほとんど同じなので、当然ですが。

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これから示唆されることは、ファンドマネージャーは、やはりサル以下の能力しかないということです。多くの論文でも同様の結果なので、極めて頑健な結論のようです。もちろん、ファンダメンタル分析をしている個人投資家の大部分もサル以下でしょう。

本の訂正・補遺 

皆様からの指摘で、間違いが見つかりました。
  • p51の3行目、「コール」→「プット」
  • p96の中段の囲みの中の「Raw RIE」→「Raw RU 」
  • p161の下段の表の2行目、左から4列目の「3%OTM」→「3%ITM」
  • p228の2行目、「シティ銀行」→「シティバンク銀行」
  • p229のIB証券への入金方法は、IB証券は非公認で不確実です。IB証券のWeb siteの方法に従ってください。
以上です。
 
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前著が72,000円で取引されているのには驚きました。記念に、キャプチャーしました。

2013-02-23_kappa











第2の柱-ETF(including BRK)

「猿でも儲かる相場」で、私としては面白くないですが、資産は増えているので、良しとしましょう。

下記は、「第2の柱」の中身です。(   )内は、「第2の柱」と「第3の柱」の合計に占める比率。 
  • KXI (22.6%)
  • VB (19.3%)
  • VSS (12.3%)
  • DVY (10.9%) 
  • VWO (8.8%)
  • BRK-B (6.8%)
  • PXF (4.7%)
  • EEMS (4.3%)
  • EWM (1.3%)
  • EPOL (1.2%)
  • EIDO (0.9%)
  • THD (0.8%)
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