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政治
【主張】原子力機構の改革 まず無責任体質の一掃だ
これで抜本的な改善ができるのか。またもや看板の掛け替えだけで終わるのではないか。
日本原子力研究開発機構の組織改革案についての危惧である。
原子力機構は4千人の職員を擁し、核燃料サイクルや核融合などの研究開発に当たるわが国の原子力の総本山だ。
今回の組織改革は、核燃料サイクルの中核施設である高速増殖原型炉「もんじゅ」で1万点を超す機器の点検漏れが発覚したことなどを機に、文部科学省の陣頭指揮で着手された。
改革の柱は、組織の分割だ。原子力機構から核融合などの部門を切り離し、別の研究機関に移管する。残ったもんじゅなど核燃料サイクル関連の部門が、原子力機構の主体となる。こうした措置で主要業務を、もんじゅとその関連分野に集約するという。
だが、これが実効ある改革なのか。原子力機構は、平成17年に核燃料サイクル開発機構と日本原子力研究所が統合された組織だ。それを以前の状態に戻すだけだ。
改革案では、組織変更に伴い原子力機構の名称も変える方針だが、安易な名称変更は目的を妨げることになる。なぜなら、核燃料サイクル開発機構の元の名前は、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)であるからだ。
動燃は、7年に運転中のもんじゅでナトリウム漏れ火災事故を起こした上に虚偽報告で国民を欺いた。2年後にも別の火災爆発事故で虚偽報告を重ね、10年にサイクル機構に改称している。同時に業務のスリム化も行ったが、改革効果は出ていない。
肝心のもんじゅは、ナトリウム漏れ以来、現在までの約18年間、ほとんど動いていない。すでに1兆円の税金が投入されているにもかかわらず、実用化に必要なデータは得られていない。
燃やした燃料よりも多くの燃料を生む高速増殖炉は、資源小国の日本にとって待望の原子炉だ。過敏な金属ナトリウムを使う難しさを克服し、もんじゅを完成させなければならない。
必要なのは、責任感の欠如など旧動燃体質の一掃だ。この体質が大量の点検漏れにもつながった。看板の変更で糊塗(こと)されてきた組織の病根こそ直視すべきだ。
原子力機構の名称を変えるのなら、使命の原点への回帰を目指して「どうねん」だ。
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