小学館ビル:漫画家25人が落書き…建て替え、別れ惜しみ
毎日新聞 2013年08月13日 11時15分(最終更新 08月13日 14時22分)
9月からの取り壊しが決まっている小学館ビル(東京都千代田区一ツ橋)の社屋に今月初旬、「YAWARA!」や「20世紀少年」の浦沢直樹さんら同社ゆかりの人気漫画家たちが描いた豪華な落書きが出現。大勢の漫画ファンらが窓越しに一目見ようと連日訪れ、別れを惜しんでいる。【山崎明子】
◇人気キャラ集結
同ビルは1967年1月に完成した。地上9階、地下3階建て。当時は、64年2月から「少年サンデー」で連載がスタートした藤子不二雄の「オバケのQ太郎」が大ヒット。このため、ビルは「オバQビル」とも呼ばれた。
東日本大震災を機に耐震強度を見直し、建て替えが決まり、すでに業務は近隣ビルに移している。
9月2日からの取り壊しを前に、漫画雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」の編集部を中心に「歴史あるビルの最後に楽しい企画を」と落書き大会を計画。
今月9日、呼びかけに応じた浦沢さんや藤子不二雄(A)さんら漫画家約25人が集まり、道路に面した1階応接ロビーの壁面や窓ガラスに「ドラえもん」や「怪物くん」「ピカチュウ」などの人気主人公を描いた。
落書きに参加した「機動警察パトレイバー」の作者、ゆうきまさみさんは「初めて小学館ビルに足を運んだのは31年前。緊張して、新人が持ち込み原稿を編集者に見てもらう打ち合わせブースの印象以外、どこに何があったかも全然記憶にないが、取り壊しは寂しい。尊敬する先輩作家や若い漫画家の皆さんと一緒に、お別れするチャンスが与えられたのは、とてもありがたかった」と話した。
インターネットの書き込みで知り、山梨県からお盆休みを利用して見に来たという30代の男性会社員は「今しか見られないと思って駆けつけた。小学館の漫画は子どもの頃から親しんできた。このビルでいろいろな作品が生まれたんですね」と話し、落書きをカメラに収めていた。
週刊ビッグコミックスピリッツ編集部の山内菜緒子さんは「落書き大会は軽い気持ちで計画したが、多くの漫画家に集まってもらい驚いた。同業でも知り合い程度だった先生たちが、落書きを描くうちに一体感が生まれ、腕を競い合っていた。漫画家魂に触れた気がして感慨深くなりました」と話した。
16日までは漫画を見やすいように午前8時半から午後8時まで照明をつけているが、17日以降は格子状のブラインドを下ろすため見えにくくなる。新社屋は2016年春に完成の予定だ。【山崎明子】