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”All alive are fitting.” 「生きてりゃ適者です。」

2013-08-11

続・NATROM氏はどこで道をあやまったのか〜”allergists and other specialists”とはだれか〜

承前。http://d.hatena.ne.jp/sivad/20130809/p1

さて、先日のエントリにNATROM氏から、興味深いコメントをいただきました。

NATROM

"thorough workup"の訳は確かにまずかったけど、これが意味するのはアレルギー等の既知の疾患の検査のことです。だから臨床環境医ではな く"allergists and other specialists"にコンサルしろとあるのです。

http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/sivad/20130809/p1

おや、claimやsuspectやゴールドスタンダードの件はどうなりました?

ともかく、これは先日の

http://www.epa.gov/iaq/pubs/hpguide.html#faq1

The current consensus is that in cases of claimed or suspected MCS, complaints should not be dismissed as psychogenic, and a thorough workup is essential.

化学物質過敏症であるとの患者の訴えや、その疑いがある場合には、そういった訴えを精神的なものとして却下するのではなく、包括的検査をすることが不可欠である、というのが現在コンセンサスである。』

の後にあるセンテンスのことでしょう。訳してみましょうか。

Primary care givers should determine that the individual does not have an underlying physiological problem and should consider the value of consultation with allergists and other specialists.

プライマリケア*1にあたる者は、患者生理学的問題が潜んでいないことを確認し、そしてアレルギー医や他の専門家の診察を受けることの意義を考えるべきである。』

そしてこれには、Who are "clinical ecologists"?の項が続いています。

Who are "clinical ecologists"?

"Clinical ecology", while not a recognized conventional medical specialty, has drawn the attention of health care professionals as well as laypersons. The organization of clinical ecologists-physicians who treat individuals believed to be suffering from "total allergy" or "multiple chemical sensitivity" -- was founded as the Society for Clinical Ecology and is now known as the American Academy of Environmental Medicine. Its ranks have attracted allergists and physicians from other traditional medical specialties.

『臨床環境医とはだれか?

臨床環境医学は、主流*2伝統医学の専門領域とは認識されていないが、一般人と同様、医療専門家の注目を集めている。臨床環境医、つまりトータル・アレルギーあるいは多種類化学物質過敏症によって被害を受けていると考える患者治療する医師、の組織は、臨床環境医学会として設立され、アメリカ環境医学アカデミーとして知られている。その構成員は、他の伝統医学の専門領域からアレルギー医や内科医を集めてきた。』

さて、いかがでしょうか。

臨床環境医学はAMAで主流*3な枠組みとしては認識されていなかった、これがおそらくワンクッション置いて”allergists and other specialists”とした理由でしょう。

しかしながら、その後を読むと、排除どころか擁護的に書かれていることがわかります。

臨床環境医学一般人のみならず、医療専門家の注目を集めているということ。

clinical ecologistsをphysicians(正規の医師)と書いていること。

臨床環境医学会には、アレルギー医や内科医が集まっているということ。

つまり主流と認識されてはいないが、単なる素人の集まりではなく、専門性をもった集団であることが強調されているわけです。"allergists and physicians"〜のくだりも、”allergists and other specialists”に対応して書かれているのでしょう。排除したければother conventional specialistとでもすればいいことですが、そうせずに、直後にこのような擁護的記述を続けている。

つまり、非常に慎重な書き方ではありますが、これらは臨床環境医を排除するための記述ではなく、むしろ”allergists and other specialists”と”clinical ecologists”が重なり合っていることを認識してもらうための文章だといえるでしょう。conventionalと認識されていない、という点だけで判断するのは早計です。

ではAMA1994年勧告におけるこれまでの内容を、簡単にまとめてみましょう。

1.化学物質過敏症の訴えや疑いがあるなら心因性とせず、包括的検査を行うべきである

2.患者生理学的問題がないことを確認したら、アレルギー医やその他の専門家の診察を受けさせることも考えるべき

3.臨床環境医学は主流な専門領域としては認識されていないが、専門家にも注目され、臨床環境医学会にはアレルギー医や内科医が集まっている

このように、ここでは、臨床環境医は診察を受ける対象として排除などされていません。きちんと読めば、慎重にはあつかっていますが、しろその意義を擁護している文章だということがわかるでしょう。

ここでもやはり、NATROM氏はAMAの勧告を反対方向に受け取ってしまっているわけですね。

*1http://www.ninjal.ac.jp/byoin/teian/ruikeibetu/teiango/teiango-ruikei-c/primarycare.html

*2:conventionalはこちらhttp://www.cancer.gov/dictionary?cdrid=449752にしたがい、主流と訳します。以下、それに応じて修正しました。大変失礼しました。

*3:ただし、こういった枠組みは各国で異なっているようです。http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/cs_kaigai/mcs_Danish_EPA.html

tgmitgmi 2013/08/12 07:47 なんとなく、分子標的抗がん剤のような攻撃方法ですね。NATROMさんのブログがガン化しているとの判断を下し、象徴的な「全身」を生かすにはこれ以上放置しておくわけにいかない、というお考えですか?

sivadsivad 2013/08/12 11:16 おもしろい比喩ですが、ちょっとわかりにくいですね。まちがいは訂正すればいいと思いますよ。

counterfactualcounterfactual 2013/08/12 14:20 はてブコメントにもありましたが、"conventional" と"traditional"は違う意味で用いられています。
いわゆる近代西洋医学がconventionalな医学で、近代西洋医学以前から存在する伝統的な医学がtraditionalな医学です。
また、これもはてブコメントにありますが、"American Academy of Environmental Medicine"の設立は1965年で新興領域とはいえないでしょう。

sivadsivad 2013/08/12 15:55 情報ありがとうございます、参考になります。「近代西洋医学がconventional」、このあたりの用例がございましたら教えていただけると大変助かります。ただ、conventionalが近代西洋医学以降、ということですと、1965年に成立したものはやはり新興といえるのではないでしょうか。

counterfactualcounterfactual 2013/08/12 16:21 conventional medicineはNCIのページ

http://www.cancer.gov/dictionary?cdrid=449752

に、そっけない説明があります。なお、 新興かどうかはあくまで私の印象です。たとえば、喫煙と肺がんの関係が強く疑われて、最初のきっちりした論文が出たのが1950年代ですが、今では定説中の定説です(ただし、定説=絶対正しい ではないですが)。1965年から未だにconventional medicineの一領域として認知されていないのは、筋がよくない感じがします(あくまで感じです)。

sivadsivad 2013/08/12 19:35 ありがとうございます。慢性疲労症候群も1930年代から記述があったそうですが、やっと認知されはじめ、でもまだまだ不明な病気ですね。病気を取り巻く問題はいろいろでしょう。

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