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原巨人が「投手・坂本」という究極の危機管理を用意していたことが12日、判明した。原辰徳監督(55)は、投手を使い切った10日の広島戦(マツダ)で、最後に投げた西村にアクシデントがあった場合、「勇人は周りを見る余裕があるから」と坂本の登板を準備していたと明かした。優勝マジックは37。まさに全員野球で、ゴールへ突き進んでいく。
絵空事―ではない。原監督の目は、真剣だった。羽田へ向かう飛行機を待つ広島空港で、報道陣に囲まれた。延長12回引き分けとなった10日の広島戦(マツダ)が話題となった。ベンチ入り投手8人を使い切っていた。万が一、最後に登板した西村が負傷降板でもしていたら…。「そりゃ、しっかり考えていたよ。ちょっとじゃなく、だいぶね」と腕を組み、居住まいを正した。
高校時代に甲子園での投手経験がある村田か、亀井か。「勇人だな」と即答した。「修一は今、調子がいいから、そのリズムを崩したくない。勇人は周りを見る余裕があるからね」と説明した。緊急時でも冷静に対処できる強心臓ぶりを評価しての抜てきだという。「そのために大累をベンチに残していた」と、遊撃手の交代要員も準備していたと明かした。
坂本は小学時代、兵庫県伊丹市の少年野球チーム「昆陽里タイガース」に在籍し、主に投手を務めた。当時のチームメートだった楽天・田中を捕手に従えるほどの剛腕だった。今でも全体練習では、遊び半分ながらマウンドに上がり、スライダーなどを投げている。「登板の可能性は限りなく少ないと思いますが、チームに貢献できるよう頑張ります」と前向きに語った。
川口投手総合コーチは「もちろん、準備は常にしているよ」とし「一番手は勇人だね。他に村田、亀井、ロペスも90マイル(約145キロ)は投げるよ」と候補者の名前を挙げた。村田は11日の試合前練習で、三塁ファウルグラウンドで勝呂内野守備走塁コーチを座らせ、数十球の“予行演習”をしていた。「さすがに投げたくないよ。野手の僕に抑えられたら相手もたまらない」と言いながらも、役割は把握しているようだ。
13日からは乱打戦の多いDeNAとの3連戦(東京D)だ。今季は飛ばないとされた統一球が「飛ぶボール」に変わり、本塁打が激増。先週の6連戦では4時間超ゲームが3試合で、10日のような投手総動員となるケースが、今後もあるかもしれない。指揮官は「あごをしめて、地に足をつけて戦う」と改めて気を引き締めた。優勝マジック37。油断も隙もない。鉄壁の危機管理を誇る原巨人は、V2へまっしぐらだ。
◆10日の広島戦VTR 6回まで1安打投球だった先発・杉内が4点リードの7回に5点を失って逆転を許したが、土壇場の9回1死からロペスの14号ソロで追いついた。最終的にベンチ入り8投手を全員使い切り、延長12回の末に引き分けた。優勝マジックを38とした。
◆野手が登板したケース 二刀流の大谷(日)、97、00年の嘉勢敏弘(オ)、99年ペルドモ(広)を除けば、最近では90~92年に3年連続本塁打王のデストラーデ(西)が、95年5月9日のオリックス戦で、敗色濃厚の0―9の8回2死から登板。打者3人に三塁打→四球→四球と1死もとれず降板している。78年7月11日の日本ハム戦は、同点の9回2死一、三塁から外野手の長谷川一夫(クラウン)が起用されたが、初球をサヨナラ安打された。ほかに野手登録の選手では、74年9月29日対南海戦の1試合で全ポジションを守った高橋博士(日)、00年6月3日の近鉄戦で初登板し、プロ野球2人目の全ポジション出場を記録した五十嵐章人(オ)らの例がある。
◆野手が2人が責任投手 メジャーでは延長戦が無制限のため、野手の登板は昨年だけで12度もあった。ほとんどが敗戦処理だが、昨年5月6日のRソックス・オリオールズ戦は延長17回に及び、リリーフ陣を使い果たし、ともに9番手に野手を起用。オ軍がC・デービス、レ軍がD・マクドナルドとそろってDHに入っていた。結果は後者が3失点で負け、前者が勝利した。野手がともに責任投手という110年ぶりの珍事だった。
◆原巨人の危機管理
▽捕手・キムタク 09年9月4日のヤクルト戦(東京D)の延長11回、3人目の捕手・加藤が頭部に死球を受け退場したため、捕手経験のある木村拓が12回、10年ぶりにマスクをかぶり、3投手を無難にリード。引き分けに持ち込んだ。
▽寺内を第3捕手に 10年の秋季キャンプ。内野手の寺内に捕手の練習を厳命した。寺内の捕手起用が可能になれば、捕手の1軍登録が2人となり、控えが充実し、作戦面でも幅が出るという考えだ。
▽外国人2ポジション制 12年に入団した外野手のボウカーをオープン戦で一塁手として起用。今年は一塁のロペスに、メジャーでも経験のある二塁のポジションも練習させた。
(2013年8月13日06時01分 スポーツ報知)
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