【ＢＯＸ】山中「神の左」一撃１６０秒ＫＯ！和毅の前でＶ４「統一戦」公開オファー

１回、ニエベス（右）を攻める山中

　◆報知新聞社後援　ワールドプレミアムボクシング　ダブル世界戦　▽ＷＢＣ世界バンタム級タイトルマッチ　○王者・山中慎介（１回２分４０秒　ＫＯ）同級８位・ホセ・ニエベス●（１２日、東京・大田区総合体育館）　バンタム級王者の山中慎介（３０）＝帝拳＝が、世界戦自身最速の１回ＫＯで４度目の防衛に成功した。同級８位ホセ・ニエベス（３２）＝プエルトリコ＝を「神の左」と恐れられる強烈な左ストレート一撃で倒す１６０秒の圧勝劇。世界戦３戦連続ＫＯ勝利で真夏の大一番を制した。観戦に訪れたＷＢＯ同級王者の亀田和毅（２２）＝亀田＝に王座統一戦での対戦を呼びかけた。山中の戦績は１９勝（１４ＫＯ）２分け、ニエベスは２２勝（１１ＫＯ）３敗３分け。（観衆４０００）

　「神の左」が初回からうなりをあげた。１回残り３０秒に差し掛かった時だ。山中のノーモーションの左ストレートが挑戦者の顔面にのめり込む。不意打ちを食らったニエベスはコーナーポストまで吹っ飛びダウン。あまりに簡単につかんだ勝利に思わず首をかしげた王者だが、４０００人の観客を前に堂々と言った。「早く終わってすいません。これもボクシングです」。文句なしのＶ４は、圧巻の１６０秒ＫＯ劇だ。

１回２分４０秒、山中（右）はニエベスをノックアウト

　世界戦自己最速の１回ＫＯも「もう少しやりたかった。ニエベスに『立ってくれ』と思った」と言うのだから大したものだ。距離をつかむために「１回は顔面にストレートを入れない」作戦だったが、左ボディーを入れると「距離も分かり、相手が弱気な顔をした」とスキを見逃さず、一気にたたみかけた。足を使ったアウトボクシングを得意とする挑戦者にパンチが当たらないと想定。少ないチャンスをものにするため普段より２割ほど薄いバンデージでパンチの威力を増す工夫も施した。

　「派手な勝利でアピールする」公約を果たしても「不完全燃焼」と渋い顔を作る。準備は周到だった。８月の試合は実に６年ぶり。「不安要素は季節」と夏場の試合は苦手という。減量は厳しくないが、大の汗かき。７月中旬には普段は使わないクーラーを利かせ、ジム内を冷却した。冷たい飲み物や好物のかき氷を断って体調管理を徹底。ここ数日の猛暑にも屈せず、「夏を乗り越えられたのは自信になった」と経験値を上乗せした。

リングサイドで観戦した亀田和毅

　バンタム級最強へ、目指すはビッグマッチだ。１日に亀田３兄弟の三男・和毅がＷＢＯ王者となり、ＷＢＡ王者の長兄の興毅（２６）＝亀田＝と合わせ、バンタム級には日本人王者が３人になった。この日、観戦に訪れた和毅にリング上から「バンタム級で自分が一番強いことを証明したい。亀田君、統一戦をしましょう」と対戦オファーを出した。

　ＩＢＦ王者ジェイミー・マクドネル（２７）＝英国＝からのオファーもあり、帝拳ジムの本田明彦会長（６５）は「和毅も対戦したがっているようだけど、マクドネルの方が実現性がある」と語った。次戦Ｖ５戦は１１月末に大阪で行う方向で調整に入る。

　３試合連続ＫＯ防衛で、日本人の世界戦連続ＫＯ記録は歴代５位タイに。リング上で長男・豪祐（ごうすけ）君（１０か月）を抱き上げ、喜びに浸ったが、「まだこんなもんじゃない」とすぐに表情を引き締めた。「ゴッドレフト」があれば、日本人初の４団体統一王者も夢ではない。

　◆日本人の世界戦１回ＫＯ勝利　９例あり、最短は１９９２年４月１０日に平仲明信（沖縄）がＷＢＡ世界スーパーライト級王者だったエドウィン・ロサリオ（プエルトリコ）を１分３２秒ＴＫＯで破った試合。２位は２０１１年１２月３１日にＷＢＣ世界ミニマム級王者だった井岡一翔（井岡）がヨードグン・トーチャルンチャイ（タイ）を下した１分３８秒ＴＫＯ。山中の２分４０秒ＫＯは歴代８位に当たる。

　◆山中　慎介（やまなか・しんすけ）１９８２年１０月１１日、滋賀・湖南市生まれ。３０歳。南京都高１年でボクシングを始める。専修大ボクシング部で主将を務めた。０６年１月にプロデビュー。１０年６月、日本バンタム級王者・安田幹男（六島）を７回ＴＫＯで下し、王座を奪取（防衛１回）。昨年１１月のＷＢＣ世界バンタム級王座決定戦でエスキベル（メキシコ）に１１回ＴＫＯ勝ちで、世界王座獲得に成功。身長１７０・５センチの左ボクサーファイター。家族は沙也乃夫人（２８）と１０か月の長男・豪祐君。