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<カネボウ自主回収>花王の業績痛撃…売上高100億円減

毎日新聞 7月30日(火)21時26分配信

 カネボウ化粧品の美白化粧品の自主回収問題は、利用者に大きな衝撃を与えた。同社と親会社の花王の業績にも影響が出始めた。花王は30日に開いた中間決算の記者会見で、通期の売上高が消費者離れで100億円減、営業利益も回収費用などで60億円減少する見込みを明らかにした。今後、慰謝料負担の発生など、損失は拡大しそうだ。被害者への補償と信頼回復に向けた今後の対応が焦点になる。【松倉佑輔、柳原美砂子】

 ◇慰謝料負担、損失拡大へ

 「ご迷惑をかけ大変申し訳なく思っている。原因究明と再発防止にグループ一丸で取り組んでいく」。カネボウ化粧品の親会社、花王の澤田道隆社長は2013年6月中間決算の記者会見の冒頭で頭を下げて謝罪した。

 花王は問題の化粧品の回収費用などで28億円、被害者の治療費や通院に要した交通費などで56億円と計84億円の損失を計上した。13年12月期決算では、カネボウ商品の買い控えなどで100億円の減収を見込む。

 ただ、被害者への慰謝料などは決算に反映しておらず、通期で損失が拡大するのは避けられそうにない。また、問題の商品はアジア10カ国・地域でも販売しており、台湾ではすでに120人以上が被害を訴えている。影響は長期化、拡大しそうだ。

 ブランドイメージの悪化で、大手百貨店やドラッグストアではカネボウ商品の7月の売上高が前年同月比で2割前後落ち込んだ。対応を誤れば消費者離れは加速しかねない。

 回収対象の商品は、カネボウが08年に独自開発した美白成分「ロドデノール」を含む54商品。同社の美白化粧品の年間売上高100億円のうち50億円を稼ぎ出す主力商品だった。カネボウは今後、独自開発について「一般的に使われている成分を中心に検討する」(三谷光正・研究技術担当役員)と慎重な姿勢だが、独自商品は「他社との差別化、高付加価値化に必要」(大手化粧品)とされ、商品力の低下につながる可能性もある。

 花王の澤田社長は「まずは発症された方への回復や治療への対応を最優先する」と述べ、信頼回復に努める考えを強調した。今後、顧客からの問い合わせを受け付けるコールセンターの機能や、化粧品の品質管理に関する組織をカネボウと一体化する方針だ。

 ◇6808人発症、相談16万件

 カネボウには今月19日までに、計16万件以上の相談が寄せられた。6808人が何らかの症状を訴え、うち2250人が重症と訴えており、発症した部位は首や手、顔など人によってまちまちだという。同社は、症状を訴えた利用者全員に、社員が直接訪れて対応する方針で、これまでに3000人以上を訪問した。必要な医療費を支払っているほか、慰謝料についても症状が完治した後に支払う予定といい、現在、算定基準を検討中だ。

 また、7月4日の自主回収の発表以来、19日までに対象製品約45万個のうち8割にあたる約36万個を回収。引き続き、使用しないように呼び掛けている。

 原因や治療方法などで不明な点が多く、医療現場は対応に苦慮している。日本皮膚科学会は17日に原因究明と治療方法の確立を目的とした特別委員会を設置するなど対策の検討に乗り出した。ホームページに記載した全国の大学病院など99の医療機関で相談や治療を受け付けており、症例を集約し対策の確立を急いでいる。

 ◇消えぬ白斑、募る不信

 「期待した効果と逆になった。信頼できるブランドだと思っていたのに、すごくショックです」。カネボウの商品を使い、顔に炎症が起きた関東地方の50代の女性はため息をついた。回収対象商品を塗っていた顔は、白い部分と黒ずんだ部分がまだらの状態で、きれいなままの首や胸元との違いが際立っていた。

 2年前、対面販売で「美白効果がより高い」と薦められ、問題の化粧水と乳液を使い始めた。

 今年5月中旬、突然顔が真っ赤になり、ひどいかゆみが出た。皮膚科に駆け込み、処方された軟膏(なんこう)を塗り、1カ月ほどで赤みやかゆみはひいたが、目の周りやほお全体の炎症のあとが黒いしみになり、ところどころ白い部分が残った。

 血液検査などを行っても原因は分からなかった。原因が化粧品とは夢にも思わなかったが今月4日、カネボウが問題商品の回収を発表したニュースを見て驚いた。カネボウに連絡し、自宅を訪れた社員から化粧品の代金弁済と治療費の補償の説明を受けた。しかし、「保険適用内の治療しか補償できないと言われた。一日も早く元の肌に戻りたいが十分な治療が受けられるだろうか」と不安は尽きない。カネボウに原因や治る見通しを尋ねても「分かりません」と言われるだけといい、女性は「どうしてこんなことになったのか、真実を早く発表してほしい」と訴える。

 今回の自主回収を受け、美白化粧品への不安が広がっている。よしき皮膚科クリニック銀座(東京)の吉木伸子院長は「すべての美白化粧品に問題があるわけではなく、必要以上に恐れる必要はない。ただ、化粧品で赤くなるなど異常が出たらすぐに使用をやめ、症状が治まらなければ医療機関を受診してほしい」と話す。

 ◇美白化粧品◇

 紫外線や加齢などで肌にできるシミを予防したり、改善したりする成分を配合した化粧品。美白有効成分の多くはシミの原因となるメラニンの生成を抑制する作用がある。塗れば肌が白くなるというものではなく、化粧水やクリームなど手入れを続けることで効果が出るタイプが多い。

 1988年に厚生省(現厚生労働省)が「コウジ酸」を美白成分に承認すると、メーカー各社が美白成分を独自開発して商品を相次いで投入し、美白ブームとなった。調査会社の富士経済によると、2011年の国内化粧品市場は2兆2729億円で、うち美白化粧品は1979億円。カネボウ化粧品のシェアは約5%で、同社は拡大を目指していた。

 ◇カネボウのお客様相談窓口◇0120・137・411

最終更新:7月30日(火)23時30分

毎日新聞

 
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