(朝鮮日報日本語版) 【コラム】日本の外交官から届いた手紙
朝鮮日報日本語版 8月12日(月)11時45分配信
李記者へ。
今月10日、李明博(イ・ミョンバク)前大統領が竹島(独島)を訪問してから1年がたちました。昨年、韓国の現職の大統領が竹島を訪問したことは、多くの日本人を驚かせました。2010年、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領(当時)が、同じように領有権争いのある北方4島を訪問したときよりも、さらに大きなショックを受けました。
多くの日本人は、日韓両国の間で最近緊張が高まるようになった出発点が、李前大統領の竹島訪問だと考えています。この事件以来、最も注視すべきことは、日本人たちの竹島に対する関心が高まったということです。
日本の内閣府が今月初めに発表した世論調査の結果をご存知ですか。日本政府が3000人の国民を対象に、初めて行った竹島についての世論調査の結果は、韓国にとって大きなショックだと思います。回答者の63.1%が「韓国が竹島を不法占拠している」と答えました。また、私がさらに驚いたことは、回答者の94.5%が「竹島を知っている」と回答したことです。2005年、島根県が「竹島の日」条例を制定したときと比べると、驚くべき変化です。
日本では、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が前任者の対日政策を継承すると考えられています。昨年の大統領選挙当時に巻き起こった「高木正雄(故・朴正煕〈パク・チョンヒ〉元大統領の日本名)論争」を考慮し、反日政策を繰り広げている、と理解している人も少なくありません。韓中関係が良好なため、あえて日韓関係の改善に力を入れなくてもよい(と考えている)といううわさも伝わってきています。そのためでしょうか。先日、安倍晋三首相が朴大統領との首脳会談を行う意向を示したにもかかわらず、冷たい反応しか返ってきませんでした。
私は、安倍首相が就任後に引き起こした歴史認識をめぐる論争にはくみしません。安倍内閣の閣僚や自民党の議員たちが、元従軍慰安婦の女性たちをけなす発言をしたことも残念に思います。アジア諸国に対する侵略について謝罪した「村山談話」や、従軍慰安婦問題への日本政府の関与を認めた「河野談話」は、必ずや守るべきものだと思います。
しかし韓国が、問題を引き起こす政治家たちと日本国民を同一視するのは問題があると思います。また、安倍内閣のあらゆる動きを「軍国主義の復活」と関連付けて解釈するのも、首をかしげざるを得ません。
韓国人たちが知るべきことは、安倍首相に対する日本国民の支持が、韓国で考えられているよりもはるかに高まっているということです。「アベノミクス」によって経済が回復していることはもとより、失墜した日本の自尊心を取り戻している、と考えている人が多いのです。好むと好まざるとにかかわらず、韓国は今後数年間、先の参議院議員選挙で圧勝した安倍首相と向き合っていかなければなりません。
私の経験からいえば、日韓関係が悪化の一途をたどることによって、在日韓国人が被害を受ける可能性が高まります。一部の過激な人たちが主導する反韓デモの矛先が、100万人の在日韓国人に向けられた場合、予想し得ない問題が発生する恐れもあります。
朴大統領が東京を訪問したり、安倍首相を韓国に招くのを負担に感じるのであれば、各国の首脳が出席する国際会議の場を活用するという手もあります。来月ロシアで行われる主要20カ国・地域(G20)首脳会議をきっかけに、日韓両国の首脳が会って話せば、負担を最小限に抑えることもできるでしょう。
韓国人でありながら、日本語で短歌を詠んだ女流歌人ソン・ホヨンさんは、このような歌を残しています。「切実な願いが吾(わ)れに一つあり 争いのなき国と国なれ」。ソンさんの願いが実現する日がそう遠くないうちに来ることを願っています。
東京・霞ヶ関の外務省で、外交官Kより
最終更新:8月12日(月)12時46分