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(15時間7分前に更新) |
任期満了に伴う与那国町長選が11日投開票され、現職の外間守吉氏が47票の僅差で3選を果たした。
争点は、陸上自衛隊沿岸監視部隊配備の是非だった。
選挙戦は、自衛隊配備を推進する外間氏=自民公認、公明推薦=に対し、新人で元町福祉課長の崎原正吉氏=社民、共産、社大推薦=が挑む構図だった。
崎原氏が配備計画について「住民投票で決める」と主張したのに対し、外間氏は「自衛隊配備によるまちおこし」を掲げた。崎原氏が配備反対を前面に出さない戦術をとったため、活性化や過疎化対策の前に議論がかすんだ感があったのは否めない。
背景にあるのは「最盛期から人口は8分の1に減った」という島の窮状だ。終戦直後、台湾交易で一時は1万2千人に上った人口が、ことし7月末には1557人と過去最少に落ち込んだ。島の存続への危機感が、影響したといえよう。
与那国島への自衛隊配備は、艦船の動きなどを監視するレーダーを設置し、約100人の沿岸監視部隊を2015年度までに配備する計画。
町は6月に配備予定地の町有地約21・4ヘクタールを、年間約1500万円で賃貸借する仮契約を国と結んでいる。
選挙結果を受け、配備に向けた動きは加速するだろう。しかし、町を二分した批判票の存在は重い。しこりを解消しないまま強引に配備計画を進めるのは危うい。町民が融和し、一体となれるまちづくりをどう進めるか。外間氏に課せられた課題は大きい。
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与那国島は那覇から約510キロ、台湾とは110キロの距離にある。自立心が強く、自助努力の精神も旺盛な地域性を持つ。
与那国町は05年、町民の合意形成を積み上げた「自立ビジョン」を策定した。国境の島の特性を生かし、台湾との交流によって活性化を図るというものだ。
外間氏は、自立ビジョンの精神を評価しつつも「財源のない中で、具体的にどう人口減少を食い止めるか」と指摘し、自衛隊配備が過疎化対策だと主張する。
選挙戦では自衛隊の配備受け入れを前提にした、ごみ焼却炉の建設や陸上競技場の整備、光ファイバーの整備などを強調した。
だが住民の中には「過疎化を食い止める抜本的な解決策にはつながらない」という声もあり、「自衛隊頼み」の振興策が地域の総意とはいえないのが実情だろう。
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中国をにらんだ日米の軍事一体化や自衛隊の増強が急ピッチで進んでいる。防衛省は「新防衛大綱」で離島防衛重視の方向性を打ち出す方針だ。7月に発表した中間報告には自衛隊に「海兵隊的機能」を持たせることを明記した。
海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」に中国、韓国が警戒心をみせている。集団的自衛権の行使容認に向け、安倍首相の私的諮問機関である安保法制懇が9月にも議論を再開する。与那国島への自衛隊配備も合わせ、東アジア地域の緊張が高まることを懸念せざるを得ない。