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どうなる大阪都構想 大阪市民に不安と期待

 9日発表された「大阪都構想」の知事・市長案で、政令市の権限を都に移管され、5か7の特別区に分割されることになる人口268万人の巨大都市・大阪市。暮らしはどう変わるのか。市民の間で不安と期待が交錯する。

 案では、子育て支援は特別区に引き継がれる。現在、西成区で先行実施されている塾代助成(教育バウチャー)は、都制移行時の2015年度には中学生の7割に対象を広げる計画だが、現在の市域全体で年約40億円の予算が必要だ。

 同区で長女の塾代にバウチャーを利用している団体職員の女性(40)は「特別区の予算不足で助成が打ち切られたら、塾に通わせられない。財政に余裕のある区との教育格差はさらに広がるのではないか」と不安だ。

 府・市の経済戦略は、都に一本化される。

 大阪商工会議所の会員で、部品メーカー社長(61)は「府市が一体的に思い切った投資をすれば、東京のような活気が生まれるのでは」と期待するものの、「都構想は無駄を省く話ばかり。組織を一つにしても、大阪の経済をどうするという計画が見えないのは残念」と話した。

 今回示された案をもとに今後、都構想の是非について本格的な議論が始まる府議会・市議会の各派からは、厳しい声が上がった。

 都構想の効果額に、都制移行とは別に進められた市政改革の財政効果も含まれている点について、自民党府議団の花谷充愉幹事長は「効果額はまやかし、粉飾だ」と指摘。その上で、「本当に大阪市を消滅させないと改革はできないのか。今回の案で大阪経済と市民生活が良くなるのか、しっかり見極めたい」と述べた。

 都構想への賛否を保留している公明党市議団の小笹正博団長は「都構想が本当に地元住民のため、大阪の経済成長のためになるのか、具体的な議論をしたい」と述べた。

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 大阪の歴史、文化を見つめてきた人々はどう受け止めたか。

 船場で生まれ育った作家、三島佑一さん(85)は「大阪は、幕府や政府によって天下の台所として栄えたり、商人らが財産を奪われたりと、盛衰を繰り返してきた。中央権力に左右されずに大阪が自立しようという動き自体には賛成だ」と話す。

 上方文化評論家福井栄一さん(46)は「政治力があっても、文化や芸能のたしなみがない都市は長続きしない。無駄を省いて成長を目指すのはいいが、精神的な豊かさにも目配りしないと、『都』の看板倒れになる」と指摘した。

職員削減効果 0円→30億円

 知事・市長案づくりで、橋下徹市長は、都構想の「効果額」にこだわった。

 「数字は何とでもなる。見せ方(次第)だ。もっと何か乗せられないか」。法定協を控えた2日に大阪府庁であった打ち合わせで、橋下市長は府市大都市局に効果額の積み上げを求めた。

 同局は当初、職員削減による効果額を「最小で0円」と試算していた。

 これに対し、橋下市長は、都制に移行する時点で不足する事務系職員の補充に、新規採用ではなく、余剰の現業職員を配置転換させるよう指示した。「0円」だった効果額は、最終的に「30億円」になった。

 大都市局幹部は「都構想効果をなるべく大きくしたい、という市長からのプレッシャーがあった」と明かした。

2013年8月10日  読売新聞)
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