一流の学者が教鞭を執り、聡明な学生が学ぶ、最高学府・東京大学。その中にあって、彼らの話す「言葉」に不気味さを覚えた一人の教授がいた。「東大話法」と名付けられた、危険な話術の正体とは。
うわべを取り繕う天才
私は今、東京大学に籍を置いていますが、身の周りでおかしなことがたくさん起きていることに気付きます。
たとえば、ある教授が地位を維持するために、あるいは自分の研究費を稼ぐために、自分の研究室にいる研究員の論文や、学生のアイデアを取り上げる。
ある助手は、直属の教授のパワーハラスメントを受けて苦しみ、学内の委員会に訴えました。でも、証拠がないと取り合ってもらえなかった。彼は、結局大学を辞めました。
その助手はその前に、自分のやらされている仕事の理不尽さに疑問を抱き、仲間の助手と共に、仕事の意味を主任教授に尋ねました。するとその意味をきちんと説明せずに、代わりに「2人に研究費として10万円ずつ出そう」とこっそり条件提示をしてきたそうです。
東大には、悪事や自分の本性を一切表に出さないようにうわべを繕うのに長けた人間がたくさんいます。調べても、確たる証拠を掴むまでには至らない。それは彼らの計算しつくされたバランス感覚で、これ以上ちょっとでも前に出たら悪事がバレる、という一歩手前で止めるのです。
彼らはものすごく優秀な頭脳を持っていて、自分がおかしく見えないように振る舞うという技術のプロ。そんな人々に、私は常々気持ち悪さを感じていました。そこで、彼らの言動を注意深く解析してみました。すると、話し方、議論の仕方や態度に共通性があることに気が付いたんです。
私は、この論争の技法、そしてそれを支える思考を「東大話法」と名付けることにしました。東大話法は、東大教授や卒業生だけが使う技術というわけではありません。ただ、使いこなすには、クルクル良く回転する頭脳が必要で、上手に、バレないように使える人間は、やはり東大に多く集まっているのも事実です。
学生の中にも、東大話法的思考を持っている人は大勢います。
私が担当した経済学部の授業のテストで経験したことです。私は経済学の思考方法そのものを考える授業をしました。すると、きちんと出席して授業を受けていた学生より、出席しなかった学生のほうが成績はよかった。なかには、ほぼ満点という学生もいました。
なぜかというと、出席していた学生は、経済学の思考方法が飲み込めないから授業に出ていたし、自分の頭で理解しようとした。だから、試験ではできるところもあれば、できないところもあるのが当然なんです。
ところが出席しなかった学生には、自分の考えというものがない。試験に出るものは、互いに矛盾した思想であろうが、かまわず頭に入れておいて、模範解答を書く。だから、点が取れる。彼らがやっているのは、上手な処理というだけのことで、考えるという行為ではありません。
- 感動読み物 有名人が語った苦難こそ、人を作る 第1回 (2013.08.12)
- 警告レポート 8月殺人豪雨で「東京のココが水没する(水深1m超)」 (2013.08.05)
- 大人気映画のヒロイン声優とプロデューサーが明かした『風立ちぬ』と「宮崎駿(監督)」のいい話 瀧本美織×鈴木敏夫 (2013.08.03)
- 全社員必読 みんなが感じているその疑問、理由がわかった! なぜ上司はバカに見えて、部下はやる気がないように見えるのか (2013.07.30)
- 小泉今日子は3.11で死んじゃう… じぇじぇじぇ!朝ドラ『あまちゃん』本誌だけが知っている「裏ストーリー」 (2013.07.30)
- 「立場主義者」にはどう立ち向かうべきか ~『もう「東大話法」にはだまされない』著者:安冨歩(東京大学東洋文化研究所教授) (2012.09.26)
- 週現スペシャル あなたの職場にもいるでしょ?「勉強はできるのに、仕事はできない人」の研究 (2013.03.08)
- 日本の「高学歴エリート」が、がんばればがんばるほど成功できない理由 (2013.07.16)
- 世界最先端のリーダー教育プログラムを修了して「たかが東大されど東大」の底力と課題を知る (2013.03.22)
- 「東大までの人」と「東大からの人」 (2010.02.03)
-
-
田崎史郎「ニュースの深層」みんなの党幹事長更迭劇は野党再編のプレリュード!江田らは民主、維新と合流も (2013.08.12)
-
HONZ現代ビジネス『パラサイト』 世界は寄生虫であふれてる! (2013.08.12)
-
HONZ現代ビジネス『ラッセンとは何だったのか? ─消費とアートを越えた「先」』 (2013.08.12)
-