中部電力が東京電力の管内で企業向けに電力を販売する。三菱商事傘下のダイヤモンドパワー(東京都)を買収し、今秋にも首都圏市場に参入する。企業など大口向けの電力販売は200[記事全文]
一国のリーダーの愚かな行動や発言が隣国との関係をめちゃくちゃにし、草の根交流や経済活動まで滞らせてしまう。1年前、韓国の李明博(イミョンバク)・前大統領が強行した竹島訪[記事全文]
中部電力が東京電力の管内で企業向けに電力を販売する。三菱商事傘下のダイヤモンドパワー(東京都)を買収し、今秋にも首都圏市場に参入する。
企業など大口向けの電力販売は2000年に自由化されている。電力会社は地域に関係なく販売することが可能になっていたのに、相互乗り入れはまったく進まなかった。
どの大手電力も、他の地域に攻め込むよりは自分の地盤を守り、業界秩序を維持したほうが得策と考えてきたからだ。
その一角を占めてきた中部電力が、みずから殻を破る。震災後の大きな環境変化や今後の電力改革をにらんだ経営判断を、歓迎する。同様の動きが広がることを期待したい。
ただ、今回は特殊な事情がある。東電は原発事故を抱えて経営難に陥り、いまや自前では電力供給すらおぼつかない状況にある。
そうしたなかでの中部電の参入は、「助け合い」の側面がないとはいえない。
料金体系やサービスなど、本当に消費者の選択肢が増えるような競争になっているか。注視が必要だ。既存の大手電力同士が手を組んで、新電力を締め出すようなことがあっては本末転倒である。
電力改革の成否は、なにより新興勢力を育てられるかどうかにかかっている。
原発の停止に伴って大手の値上げが相次ぐなか、新電力との契約を希望する企業は増えているが、新電力側は必要な電力量を調達できていない。
大きな発電所や自治体が所有する水力発電は大手電力が抱え込んでいるからだ。電力需給が逼迫(ひっぱく)ぎみなこともあって、卸売市場もなかなか活性化しない。
こうした課題を克服し、競争を促していくためには、必要な措置を命じる権限をもった規制機関が必要だ。
先の通常国会に提出された電力システム改革法案にも、発送電の分離とともに、そうした新機関を15年をめどに設立することが盛り込まれていた。
政局の混乱に巻き込まれて廃案になってしまったが、もともと民主党政権時に骨格をつくった法案でもある。与野党で協力し、次の国会で成立させることが不可欠だ。
新機関発足までの間、同様の役割を担うワーキンググループが今月、初会合を開いた。
電力事業者らからデータを提出させたりして公正な競争市場の育成を監視する。現行法の枠組みでできる最大限の競争促進を担ってほしい。
一国のリーダーの愚かな行動や発言が隣国との関係をめちゃくちゃにし、草の根交流や経済活動まで滞らせてしまう。
1年前、韓国の李明博(イミョンバク)・前大統領が強行した竹島訪問と、それに続く天皇への謝罪要求は、まさにそんな言動だった。
その後、日本では安倍首相が、韓国では朴槿恵(パククネ)大統領が誕生したが、関係改善の兆しは見えない。
首脳同士が会えず、閣僚間の接触もほとんどないような状態がこれほど長期に及ぶのは、1965年の国交正常化以降、極めて異例のことである。
政治がナショナリズムをあおれば、どんな結果を招くか。そのことを両首脳は肝に銘じるとともに、関係修復に向けた取り組みを急がねばならない。
ソウル中心部の明洞。繁華街を埋めていた日本人の姿は昨秋以降、めっきり減った。
実際、日本から韓国への観光客は昨年、過去最高を更新したものの竹島騒動後は前年比2割減の状態が続く。このところの円安や不安定な北朝鮮情勢も加わり、日本企業の対韓投資も減っている。
これが、浅はかな行動がもたらした代償である。韓国では、李氏の言動がいかに国益を害したかという指摘も聞かれる。
李氏は竹島訪問後、従軍慰安婦問題で日本政府が誠意をみせないから行った、と説明した。それが行動を正当化する理由には到底ならないが、日韓に歴史認識問題が重く横たわっていることは事実だ。
にもかかわらず、日本側では最近も橋下徹大阪市長の慰安婦発言や閣僚らの靖国参拝、首相の「侵略の定義」発言などが相次いだ。これらは韓国や中国との関係をさらに冷え込ませただけではない。
欧米からもその人権感覚や歴史認識を疑う声が出るなど、国際社会での日本のイメージをいたく傷つけた。
韓国の司法が、戦時中の元徴用工らの訴えを認め、日本企業に損害賠償を命じるなど新たな火種も持ち上がっている。
こんな時こそ、みずから挑発的な言動を控え、国民に冷静な対応を呼びかける。それが政治家の仕事だろう。
まずは8月15日の終戦記念日に、首相や主要閣僚は靖国参拝を控える。韓国の政治指導者らも、国民の対日感情を刺激するような言動を慎む。
ともにアジアのリーダーとして責任を負う隣国同士が、自分たちの問題さえ解決できない。こんな醜態をいつまで世界にさらすつもりなのか。