TPP:国益確保に時間の壁 交渉官に緊張感
毎日新聞 2013年07月23日 22時52分(最終更新 07月24日 01時03分)
【コタキナバル(マレーシア)大久保陽一】日本は23日午後、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉会合に初めて合流、日本経済の活性化につながる貿易自由化を求めながら、国内農業も守る厳しい交渉をスタートさせた。現地には自民党の農林族や農協(JA)グループ、経済団体なども幹部を派遣。交渉に関する情報収集活動を本格化させた。米国など他の参加国が年内の交渉妥結を目指す中、大幅に出遅れた日本は時間の制約というハンディを抱えるだけに、鶴岡公二首席交渉官らには緊張感が漂った。
◇「外交交渉は油断大敵」
鶴岡首席交渉官ら50人ほどの日本チームが交渉会場に入ったのは23日午後2時ごろ。参加手続きに手間取り、当初予定より2時間遅れだった。交渉官の一人は「外交交渉は何があるか分からない。油断大敵だ」と気を引き締めた。
鶴岡首席交渉官は23日午前の結団式で「政府全体が一致して国益を最大限実現するために全力を尽くしたい」と表明。重要農産物5品目(コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、サトウキビなど甘味資源作物)の関税撤廃の例外化を求めながら、経済再生につながる貿易自由化を勝ち取る難交渉に臨む決意を示した。
現地には、自民党TPP対策委員会の西川公也委員長ら農林族の有力国会議員や、JA関係者、経団連幹部も詰めかけている。日本のTPP交渉参加に反対姿勢を示してきたJAグループ幹部は、ニュージーランドからの酪農品などの輸出攻勢を警戒するカナダの酪農団体などと意見交換。自民党TPP対策委の西川氏は「国益を守るためにしっかりした交渉をお願いしたい」と、日本が農業自由化で安易な妥協をしないようににらみを利かせる考えを示した。一方、TPP推進の立場の経団連代表は米商工会議所幹部らと会談、貿易自由化に向けた協力を確認した。
TPP交渉会合は参加国による全体会議と並行し、主要分野の利害をめぐり2国間や複数国間の会議も行う。「各国とも主要品目の関税率をどうするか具体的な提案はしておらず、次回会合から協議が本格化する」(西川氏)という中、日本の交渉団には国益を最大限反映させるにはどの国とどの分野で連携するのが有利か、目利き力が問われる。