■1つの軸に2つの花 粒はもともと雌花
トウモロコシは1つの茎(専門用語では稈=かん、木の幹に相当する)に雄花(おばな)と雌花ができる。茎のてっぺんにあるのが雄花、途中にできるのが雌花だ。
雄花から出た花粉は風に乗って飛び、雌花のめしべであるひげ(専門用語では絹糸=けんし)に付くことによって受粉する。
雄花の固まりのことを雄穂(ゆうすい)、雌花の固まりを雌穂(しすい)と呼ぶ。店で売っている1本のトウモロコシが雌穂だ。
トウモロコシは、言ってみれば数百もの雌花が成長してできたものなのだ。
トウモロコシの雄花と雌花には、法則がある。
茎の途中の節1つに、2つの花が1組となって付くという。トウモロコシを輪切りにしてよく見てみると、1つの軸に2つの粒が付いていることが分かる。トウモロコシの粒が必ず偶数になるのは、粒の元になる雌花が2つ1組で軸に付くからなのだ。
■トウキビ・セータカキビ・ナンバン… 地方によって多様な呼び方
夏が旬のトウモロコシ。生産量の半分以上を占めるのが北海道だ。北海道ではトウキビと呼ぶ人も多い。
トウモロコシは全国で様々な名前で呼ばれている。津幡道夫著「トウモロコシ」(大日本図書)によると、「セータカキビ」(新潟、和歌山)、「マルキビ」(岐阜)、「トウマメ」(長野)、「タカキビ」(鹿児島)などと地方によっていろいろだ。
関西では「ナンバン」「ナンバ」などと呼ぶこともあるらしい。「コウライ」と呼ぶ地方もある。いずれも外国からやってきたことが強く意識されている。
そもそも、トウモロコシという名前自体が変わっている。「トウ」も「モロコシ」もどちらも中国を指す言葉だからだ。「新明解国語辞典」(三省堂)によると、「モロコシ」とは(1)中国(2)中国から渡来したものの意――となっている。
トウモロコシは16世紀にポルトガルから長崎に伝わった。津幡氏によると、それ以前に中国から伝わっていた「モロコシ」という食べ物によく似ていたことから、「唐(=中国)」のモロコシという意味でトウモロコシ、と呼ぶようになったという。
トウモロコシは漢字では玉蜀黍と書く。トウモロコシが日本に入ってきた当時、モロコシは漢字で「蜀黍」と表していた。これに宝石を意味する「玉」を組み合わせた。「玉」はモロコシの呼称の一つだった「タマキビ」からくるとの説もある。
ちなみに作物としてのモロコシは「ソルガム」と呼ばれることもある。イネ科の植物だ。秋田銘菓の「諸越(もろこし)」は落雁(らくがん)の一種で、江戸時代、秋田藩主が「もろもろの菓子に越して風味よし」と称賛したことに由来しているらしい。
トウモロコシ
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