左翼線を破る二塁打を放った関本は、ヘッドスライディングで滑り込んだ【拡大】
ベンチに焦りの色はあった。ナインの声も枯れていた。自力Vが消えた翌日。4時間55分の死闘。拙攻続きで、このままどん底に沈みかねない虎を浮上させたのは生え抜き戦士だ。鳥谷&関本だ。3-3の延長十二回一死三塁。背番号「1」が二遊間を割った。是が非でもほしかった勝利をつかみとった。
「投手が何度も抑えてくれていたんですけど、なかなか点が取れなかった。点が取れてよかったです」
リーダーはヒーローインタビューでクールに振り返った。左腕・高橋聡の真ん中149キロ直球をジャストミート。鋭いゴロは中前へ。阪神は三回以降、無得点。勝負強い一打が均衡を破った。そして、絶好機は関本の気迫が生んだ。
「気合やね。気合ってことにしといて」
途中出場し、この回の先頭で打席に入ると、4球目を一閃。痛烈な打球が左翼線で弾む。ベテランは果敢に二塁を狙う。「やばかった。アウトになったら、どうしようかと思った」。代名詞通り、“必死のパッチ”で頭から滑り込み、セーフをもぎとった。
和田監督も「先頭で長打を打ってくれて、本当に大きかった」と最敬礼。それだけの価値があった。前日9日に、ひとつのターニングポイントを迎えた。自力優勝の消滅。負ければ、チーム状況が急降下しかねないゲーム。采配も裏目に出た。不穏な空気が流れ、白星が遠く感じた。そんな窮地でタテジマ10年目、17年目の男たちが気を吐いた。